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夕飯の時間

 

 夕食とはいっても、少し時間が経って午後6時にもうなる。


 「そういえば何作っていたんだ?」

 「ナンカレーです」


 まさかのナンカレーか。家では出ることは無いけど、結構意外な選択だな。


 ナンカレーって食ったことあったっけ?実際1回か2回しかない気がする。


 「ジン食ったことある?」

 「俺は数えるほどしかないぞ。珍しいっていうか食う機会もなかったしな」

 「俺も同じだ。そもそもナンが意外と売ってなくないか、適当なパンを代用するならまだしもナンは無い」


 出てきたのは本格的なナンカレーだった。カレーの種類も3つあるし、何よりこのナン・・・


 「手作りか・・・このナン」


 衝撃というかちょっとした驚きになる。家に帰ってから余り時間は経っていないと思っていたけど、たった3時間でこれを作ろうと普通思うか。


 「作りたかったのか?こんなにちょっと面倒な料理」

 「それはもう。作りたい料理を作ることが出来るなんて最高ですね。初めて作ってみましたがいい出来だと思います」

 「作りたい料理がナンカレーって、変な奴だな」


 作ってみたい料理を作ることが出来たことで上機嫌になったのが見てわかる。


 机の上に汚してもいいようにか一枚布を引いている。これも買ったのか。


 その上に各々の分に取り分けられた料理を置いていく。

3種類のカレーは小さな小皿に取り分けられて、チキンカレー、キーマカレー、ほうれん草カレーの3種類が作られている。ナンはナンだけど工夫が施されていて、ガーリックナン、チーズナン、バターナンが作られている。


 このラインナップを見て、俺とジンは絶句している。凄すぎないか。実際に特別な日ならまだしも、何もない夕食にこれが出されたら驚く。

 

 「今日って何かの記念日でしたっけ?もしかして俺の誕生日だったっけ?」

 「そんなことは知りません。何バカなこと言ってるんですか。他のも並べてください」


 他の料理はというと、サラダと飲み物が渡された。

 

 「サラダは普通というか新鮮な野菜をカットしてキレイに器に盛りつけてあるが、こっちの飲み物って・・・」

 「ラッシーです。そちらはデザートも兼ねていますので、飲みすぎには注意してください。こちらにお水も別で用意しておきますね」


 そういって冷たい水をキッチンから持って来た。準備が良いというかなんというか。

 

 「さあさあ、冷めない内に食べましょう」


 そう言われ、それぞれが椅子に座った。俺の座っている横にジンがいて、前にクラリスがいる。


 「「「ただきます」」」


 そう言ってナンに手を出した。最初に持ったのはガーリックナンだ。一口サイズに千切り、それをチキンカレーにつけて食べる。


 食べてみると旨かった。スパイスがじっくりしみ込んだルーに柔らかいチキンがたっぷり入っていて、コクとうまみが口を襲ってきた。そこにガーリックナンがニンニクの匂いを漂わせ、カレーとうまい具合にマッチしている。


 この出来をぱっと作ってしまうメイドに関心すると同時に、なんでこんなとこに雇われに来たんだとまた疑問に思ってしまった。


 でも、この話題を掘り出したらまた俺はケガをする。仕方がないがしばらくは考えないようにするしかない。


 「感想はないんですか?」


 そんなことをふと言ってきた。美味いとは思っていたが、口には出していなかった。


 食べたのに何も言わないから、機嫌が悪くなったのか、目が怖い。


 「旨い、旨い、あんまりナンカレーを食べたことは無いけど、それでも食った中では一番旨いぞ」

 「美味しいと言ってくれるのは良いですが褒め方が下手すぎませんか。もう少しましな言い方してください」

 

 ジンがとっさに思ったことを口にしたがために、余り褒めるには適していない文章をくちばしった。


 ここは、俺が上手いフォローするしかない。


 「旨かった。ただ俺は甘党だ。このカレーは辛かったから60点」

 

 そんなセリフを堂々と言った。どうだジンの失言を埋めるように俺も言ってやった。


 「人が作った飯を食べておいて甘党だ、もっと甘くしろだ、この馬鹿どもが。ここは美味しかったの一言でいいんです。それ以上は求めてないの。それに何点数つけてんの」


 どうも俺の言った60点の言葉が心に刺さって御乱心のようだ。

 

 「甘党なのは知りません。私の料理はいつだって100点です」


 そんな独り言を言っている。そんなに聞いたのか今の俺のセリフ。なんとなく初めて弱点?みたいなのが分かった気がした。


 料理の出来を非難したら怒った。小さいけどそれでも収穫ではある。

それほど料理に関しては自信があるのだろう。

 

 「まあ、いいです。料理の評価はそれほど期待していなかったので。私が満足すればそれでいいです。それよりも問題は3日後に迫った試験です」


 トーンが1つ下がり、まじめな話になった。でも食べながらでいいのか、特に手を止めるそぶりはみんなない。


 俺はガーリックナンが食べ終わり、次のキーマカレーとチーズナンを食べ始めた。


 「どうしようもないだろ。試験問題は勉強するにしても、あとは出たとこ勝負っていうか・・・3日後じゃ出来ることも少ないしな」

 「俺は何とか3日で形になるようにするしかないって話だろ、勉強は得意じゃないけどやるだけ・・・」

 「違います。勉強はそのまま続けてもらうとして、第二試験をどうするかって話です」

 「それこそ体力試験なんだろ。何が出るかわからないなら何も対策なんて取れないだろ」


 どんな試験なのかわからなければそうしようもない。時間がない以上ここは確実に出るのが分かっている第一試験に集中した方が無難だ。


 やった努力がそのまま報われる。体力という不確定な試験内容よりは幾分かましだろ。


 「ん?待ってくださいね。何か会話にちょっとしたズレがあるような気がします。2人とも第一、第二、第三がそのまま行われると思っていませんか?わかりやすく言えば第一試験の内容が悪くても第二試験は行われると」

 「その通りだけど、何か問題があるのか」


 俺たちに聞こえるように大きなため息をついた。


 「まずですね、第一試験で合格しないと第二試験には進めません。なら第二試験に合格しないと第三試験には進めないんです」


 マジですか。そんなことあの受付の人は言っていなかったぞ。いや、シンプルにその考えが無かった。

これは想定と大きくズレる。


 俺たちの想定では、第一、第三試験で点数を貯めて、第二試験は最悪0点でもいいかと考えていた。

言われれば気が付くことが、ずっとこうであればいいなという方向で考えていた。


 その考えがあだになった感じか。


 「どうすっかな、この試験。第二試験か・・・何かアドバイスは」


 ここは、俺たちよりも冒険者試験に詳しそうなクラリスに相談するしかない。

冒険者じゃなくても、それなりに情報くらいはあるだろ。この感じなら。


 「アドバイスですか・・・せめていうなら事前準備ですかね。第二試験は持ち込みがOKの試験です。

例年試験官が内容を決めます。そのため単独、複数、討伐、捕獲、何があるかわかりません。ですのでどんな内容でも使えるアイテムを持っていくことがおすすめです」


 どんな内容になるかわからないから、どの条件でも対応できるようにしとくか。確かに的を得ている気がするが、そういえば


 「この第二試験は一体どのくらい時間が掛かるんだ?」

 「第二試験自体は、最低12時間~最高120時間になります」

 「なっがいな~、そんなに試験すんのかよ」


 思ったよりずっと過酷だな。どんなに少なくても12時間もするんのか。

てっきり、体力試験なんていうから健康診断の延長くらいに考えちまってた。


 まずったなこいつは。


 「わかりました。ここはメイドにお任せください。道具は自分たちで用意して貰うとして、体力は何とかしましょう」

 

 普通逆じゃない。道具をメイドが何とかするんじゃないのか。


 「どうすんだ、何かこの試験を打開できるアイデアがあるのか」

 「ここでは言いません。その時、そうですね明日の朝には何とか用意しておきます」


 何かいい案があるらしい。今の俺よりは状況が見えているからここは期待するしかない。


 そこうしている内に、ほうれん草とバターナンまで完食していた。あっという間に食べれたな。


 後片づけはお願いします。作るのに使った道具はもう洗って有りますので、食べるのに使った食器だけ洗って下さい。


 各々の食べ終わったタイミングでごちそうさまと言って、食器を洗った。


 ちなみに一番早かったのがクラリスで、その次にジン、俺が一番最後だった。なので俺待ちだった感じ。


 「洗うか、作ってもらったしここは俺が洗うからジンが拭いてくれ」

 「了解」


 キッチンに2人で向かった。


 雑談をしながら洗い物をしていると、キッチンにクラリスが顔を出し、


 「本日はここで失礼します。採用頂きありがとうございました。明日は必要な物を持ってくるのでそのつもりで」

 「ああ、そうか。いろいろとありがとう。じゃあ明日」

 「料理旨かった。明日もよろしく」

 「はい。では」


 そういい、クラリスはこの家を去った。きっと自分の家に帰ったのだろう。

 

 「明日も来るのか。あのメイドが壊したドアを直すために冒険者になって金を稼ぐ。そのための手助けをすべての元凶がする。おかしいだろ」

 「それは俺も思うが、一つとして俺たちは従うしかない。なぜなら絶対的に勝てないからだ。もちろん物理的に。幸い、メイドとしての仕事は100点だったし、敵意は無いから、こういう運命だと思うしかない」

 「雇うにしても金が掛かるだろ。そこはどうすんだ?」

 「それが一番の問題だ。ただでさえ金が無いのにメイドの雇用はどうしても無理だ。そこはおいおい考える。今の問題はディーアが帰ってくるまでにあのドアを何とか直すことだけに集中しよう」


 複数の問題が起きてしまったら、最優先の問題から取り組まないとならない。


 今回の場合は、ドアの修理になる。


 そのあとは雑談をしながら洗い物を終え、各々のタイミングで風呂に入り、就寝までの時間は勉強に集中した。


 夜が1時に差し掛かったところで、寝ることにした。


 お互い疲れていたのか、瞼を閉じたら一瞬で眠ることが出来た。


・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ 


 翌朝 午前6時


 メイド ベルを鳴らすことなくシートをくぐり部屋に入って来た。


 窓を開け、新鮮な空気を部屋に入れた。今日は良く晴れたいい天気。朝日が眩しい。

窓のすぐそこで寝ている2人を見る。本来のメイドならここで優しく


 「起きてください。もう朝ですよ」


 と言って起こすのだろうが、私はそこまで優しくない。少なくともこの2人なら多少乱暴に扱ってもいいとさえ思っている。だから、私が取る行動は一つしかない。


 寝ている2人の胸元をつかむと・・・・思いっきり窓から投げ捨てた。


 「朝です。起きてください」


 2人はいきなり投げられ何が起きているか理解が追い付かなかった。でも、取り合えず宙に浮いていることはわかったので、何とか受け身を取って着地しようとしたが、盛大に失敗して、2人とも地面に頭を打った。


 「「はぁぁぁぁぁーーーーー」」


 2人して頭を抱えている。物凄く痛かった。それでも何とか何が起きたか理解して、上を見た。


 投げた張本人が仁王立ちで俺たちを見下ろしていた。


 「眠気はありませんね、それでは・・・稽古をつけます」


 そういって、俺たちの元に着地してきた。



もう少ししたらもっとキャラクターを登場させたいなと考えています。今のところ掛け合い以前にキャラクターがどうしても少ないのは申し訳ない。

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