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ギルドからの帰り


 ギルドから出てすぐの壁に寄りかかっている人がいた。

今日から働き始めているクラリスが買い物を終えていた。


 大きな袋を二つある。食材や調味料、飲み物でいっぱいだ。


 「なんでここにいんだよ。ここにいるって話して無かったろ」

 「短期間でドアの修理のお金を稼ぐにはギルドでの依頼が効率が良い、なら必然といるのはここになるかなと」

 「そこまでは良い。でもその手になんで冒険者試験過去問集を持ってるんだよ。意味わかんねえよ。」

 「だって冒険者じゃないでしょ。なら、こちらも必要になると思い先ほど買っておきました」

 「怖えよ。何でそこまでこっちの行動が読めんだよ」

 「メイドですから」


 その一言で締めるのかよ。

よくわからんが、取り合えず本屋に行く手間は省けた。


 「荷物持ってください。はいどうぞ」


 無言でその荷物を受け取った。


 ちなみに、ジンが飲み物が入っているのを持っているので、そっちの方が重い。その袋をこっちに向けてきた。


 「お前がこっちてよ。筋トレだ筋トレ。筋肉無いんだから」

 「そりゃジンよりは無いけど、だから筋肉がある方が重いのを持てよ」

 「ていうか、こっち何が入ってんだ?見かけの割に重いぞ。どれどれ。これは・・・かぼちゃだな・・・おいまて、丸々一個買う必要はないだろ」

 「まて、かぼちゃを買ったのか。しかも一個。金の無駄遣いだろ。いらないいらない。返品するぞ」

 「値段は安いです。物にもよりますが1000円です。それに栄養が豊富で健康にいいです。ちゃんと食べてください」


 この大きさで1000円は確かに安いけど、大きさ的には両手で持つのがやっとな感じだ。

でも、こんなに食べれるか?絶対に余れせるぞこんな大きさ。


 「他に何を買った。袋の中身見るぞ」


 袋の中を二人してみた。


 「調味料?確かにそうだけど、なんでこんなにスパイス(香辛料)を買った。かぼちゃはまだわかる。この際はまだいいや。これは何だ。カレーを作るにもルーだけでいいだろ」

 「こっちには高いお菓子が入ってるぞ。しかも1つや2つじゃない、明らかにこれは無駄遣いじゃねえか」


 袋の中を見て驚いた。結構買い込んでいるなと思っていたが、これ程とは。


 「違います。けして無駄遣いではありません。香辛料も必要な物ですし、そのお菓子は来客があった時のためのやつです。確かに家庭で考えればルーだけでいいかもしれませんが、そこはメイド、妥協はしません」

 「開き直ってんじゃねえよ。一体いくら金を使った。俺の財布から金抜いたろ。結構金額があったと思うが・・・」

 「殆ど全額使いました。本当ならもっと買うつもりでしたが、予算の関係上この額に収まりました」


 他にも、カップやお皿、何ならキッチン用品も買っていた。ていうかそんなに買っておいて袋2つってどんだけ入れるのが上手なんだ。


 こんなに無駄遣いしても、力関係では俺たちは何も言えない。これが暴力による権力の乱用ですか。

そんな愚痴は決して口にはしない。思うだけにする。

 

 そんなよくありそうな言い合いをしながら帰路についた。ありそうかこんな会話・・・


 家に着いたが、依然としてドアは無い。仕方ないのでシートで塞ぐことにした。

出入りはしやすいように上だけ止める。下の方も金具で固定しているので塞ぐことは出来るし、何枚も重ねるので光は遮断できる。ただ、声だけはどうしても漏れてしまうのはしょうがない。


 早いとこ依頼をこなさないといけない。こんなんじゃプライベートなんてない。


 なんやかんや家に帰ったのが3時過ぎだった。そこからシートで覆う作業をして時刻は4時前になる。

夕飯までは時間があるし、帰ってからキッチンでクラリスが色々と作業をしていてる。


 買って来たものを入れてつつ、自分好みに軽くリノベーションしている。まあ、置き場を変えたりとかしていて、もう俺たちが知っているキッチンとは変わって見えた。実際はそんなことないのに。


 ソファーに腰を掛け、買ってきてもらった参考書が机の上にあるので読んでみることにした。


 今から暗記するにしても時間が無いので、ざっとどんな内容なのかを知ること、過去問で多く出ている問題の傾向を把握することに専念しよう。


 問題の内容は思っていたよりは難しくなかった。中等部で習う内容までで、高等部で習う内容は問題に乗っていない感じだ。どっちかというと難しい問題ではなく、基礎をどこまで学習して来たかを確かめる問題だ。


 この国に来てそれなりに経つので文字もだいぶスラスラ読めるようになった。読み書きもこの分なら問題ない。


 試験問題は、数学、地理、生物学、という基礎の3教科と選択式で錬金術、トラップ工学、行動心理、オールジャンル、という4つから1つ選ぶ。


 面白い。純粋にそう思った。基礎の3教科はどれも冒険者にとって必要な内容だし、基礎だけでも出来るようになればいろんな選択肢の幅がぐっと広がる。


 選択式の4教科はどの分野でやっていきたいかを示唆する内容でもある。3つに関して基礎さえ知っていれば活躍できる場面もある。オールジャンルはちょっとよくわからない。


 横目でくつろぎながら参考書を見ているジンが頭を抱えた。


 「内容難しくない、冒険者になるのってこんなに大変なのか」


 そう独り言を言っている。


 「そう躍起にならないでください。1教科100点満点で、合格は例年4教科の合計240点です」


 そういいながらクラリスがお茶を持って来た。合格点が240ってことは1教科60点ということか。


 「キッチンはいいのか?」 

 「はい。一応ひと段落はしたので、こちらの様子を」

 「きつい~~。何かいいアドバイス求む」

 「では僭越ながら、全部でいい点を取ろうとするのは今からでは難しいかもしれません。エイジならともかくジンでは純粋な学力が足りません。ですのでここは正答率が高い大問のみ勉強して対応するのが一番かと」


 さらっとジンを馬鹿にした。俺の方がジンより頭が良いのは確かだけど、そんなこと話したか?

まあいいか、このメイドなら何でもありそうだし。


 「全体通して、一番暗記になるのは生物学です。地理や数学はどうしても応用が必要になります。ですのでここは地理、数学は出来そうな問題のみ、生物学、選択科目を優先するのが効率がです」


 やっぱり優秀だな。仮に俺に質問してきても俺は同じことをジンに言ったと思う。


 「選択科目は、エイジならどうする?」

 「俺は・・・まだ考え中だ。実際選択するならトラップ工学か行動心理の2択だな」


 この2つは、どっちかというと暗記科目に近い。ある程度の要点さえ知っていればトラップ工学はわかるし、行動心理は完全暗記科目。そういえば・・・


 「この、オールジャンルっていうの何なんだ?」

 「そのままです。何が出るかわからない。すべてが出題範囲の問題です。その代わり配点が違います。オールジャンルのみ満点は200点です」


 お茶を飲みながらそう答えてくれた。


 「どんな問題が出るかわからないから、200点満点か。賭けに近いな。自分の得意が出るか不得意が出るかで状況が変わるのか」

 「選択する人はあまりいません。いるとしたら基礎の3教科で余程いい点を取った自信のある人だけじゃないですかね」


 3教科で満点を取れば300点。その時点で合格点に到達しているので受けるだけ受けようとする人はいるか。逆に3教科で自信がない奴は受けないことをいう。


 「そもそも、なんでこんな選択しが存在するんだ?もっと他の教科にしてもいいだろうに」

 「そこは、冒険者のギャンブル要素を出しているのかもしれません」


 そういうことだろうか?俺はこれにも何か意味があると思ってしまう。他の教科が明らかに意味があって選択されているのに、これだけそんな不確定な要素で教科として選択されているはずがない。


 「俺は選択はトラップにするは。内容見たら結構面白そうだ。あとはどこまで詰め込めるかだな」

 「トラップに決めたか、同じにするか、違うのにするか悩むな」

 

 個人的にはオールジャンルが刺さっている。何が出てくるか面白そうな感じが俺好みだ。


 「そろそろ夕飯が出来ます。休憩にしましょう」


 そういってクラリスがキッチンに向かった。


 


 

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