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ホームセンター

 

 取り合えず自宅を出て、近くのホームセンターに移動してきた。

実際問題、どうするか何も案がない。


 「中に入って考えるか。一緒になかに入るか?」

 「いや、俺は外の家庭菜園に行ってから中に入るから先に行っててくれ」

 「了解」


 そういってジンと別れた。ずっと前から庭で何か作りたいって言ってたからその下見でもしてくるのかな。時期的にはこれから夏野菜かな、植えるとしたら。


 何気にジンはこういった創作が昔っから好きだったな。そんなことを考えながら扉に歩いた。

 

 自動扉が開いて、中に入った。玄関扉が売っているとこまで行こう。

買い物あるあるだが、こういろんな商品が売っているのを見ると買いたくなるものだ。


 入口近くには、セールなのかいろんな安売り商品が戸棚にまとめてある。

それらの商品を見ると、様々なジャンルがランダムに置いてある。その中でも気になったのが時計だった。


 個人的に家のトイレにも時計があれば便利だなと最近思っていた。なのでこの際買おうか迷う。


 例えばこの変な形をした時計。形自体もなんか歪んでいて読みにくい上に書いてある文字が謎だ。

1時に1,2時に2、3時に4、12時が376となっている。読みにくいし邪魔だし、こんな時計買うくらいなら普通の時計を買った方がいいけど、なんと本日限り5600円が半額の2800円になっていやがる。


 俺の財布に余裕があれば買えたが、今日のところは無理だ。すまない時計君。

また機会があってその値段の時に買ってやる。


 セール品を抜けたら、少し進み、右に曲がって家庭リフォームのエリアに向かう。

上のとこに看板があるのでどこに何があるかわかるから楽である。


 家庭リフォームのエリアに向かう途中で、声を掛けられた。

 

 「珍しいね、こんなこんなとこで会うなんて」


 振り返ったら目の前に男の人が立っていた。


 「ケンさん、珍しいって昨日ぶりじゃないですか。今日は家族と買い物なんていいですね」

 「連休の日ぐらい買い物を手伝わないとね。奥さんにどやされるから」

 「家庭を持つのも大変ですね。そしたら向こうの奥にいるのが奥さんと娘さんですか?失礼ですけど余りにてないっすね娘さん」

 「本当に失礼だよ、そんなことない、俺とはどっちかといえば性格の方が似ているからな。顔は俺に似てないから美人だよ」


 ケンさんは俺たちが住んでいる家の家主である。普通あの家は一人暮らし用に貸し出されているものだが、俺たちが分けありなのと聖女の監視ということで同居を許可してくれた。


 まだこっちに来た時にいろいろと世話になった一人でもある。年齢は44歳だから、どっちかというと気のいいおじさんな感じ。


 「そうそう、今朝何かそっちの方で酷い音がしたけど、何か知っているかい?」

 「音ですか?なんの事かわかりませんね」


 首を横にふて、知らんぷりを決め込んだ。今ばれるのは面倒なのではぐらかしたが、


 「知ってんだよ、エイジ君の玄関が思い切り破壊されていたことは」

 「あらら、ばれてましたかこりゃまた一本取れられた」


 首に手を回されて、締め付けられた。痛くないのでただのじゃれあいだ。

貸している家の玄関破壊しておいて、なんてお人好しなんだ。


 などということは決してない。なぜなら、この人は家族に秘密にしていることがあり、それを俺が知っているからだ。


 それをばらさないなら、今回は大目に見てやるぞという意思表示でもある。

今回はその案に従った方が得なので、そうさせてもらう。


 その秘密は家族に内緒でギャンブルをしていることだ。

昨日ぶりっていうのは、昨日パチンコ屋で会っているから。


 昨日は5万負けたそうだ。


 奥さんがそういうのが嫌いな人で、家での権力は奥さんの方が強いから知られるとまずいらしい。

負けた額が額なので、本当にばれたくないんだろな。


 「今回だけは目をつぶるが、今後はこういうことは出来るだけやめてくれよ。何があったか知らないが」

 「俺だって今回のは不可抗力というか、事故にあった被害者みたいなもんなんですよ、これがホントに」

 

 実際に被害に遭っているが、被害者かどうかは難しい部分だ。きっかけはこちらが作ったし。


 「家主としては直すってんなら文句はない。修理を依頼するためにここに来たんだろ。同じドアは難しいだろうけど、出来るだけ他の部屋のドアと同じ色のやつにしてくれるなら文句はない」

 「そういってくれるならありがたい。何ならここで買い物が終わった後に一応知らせるために向かおうと思っていたからホームセンターで遭遇できたのはよかった」


 行く手間が省けたので良かった。流石にドアを破壊したし、家主に挨拶はしとかないと最悪追い出される可能性すらある。普通は追い出されるか。


 「そろそろ行くよ。今度職場顔出せよ。どうせ金がないだろ。いい仕事紹介してやるよ」

 「やけに親切なのはちょっと怖いですね。機会があれば行きますよ。ではまた」


 そういってケンさんに背を向けて歩き始めた。本来の目的の家庭リフォームは目の前だ。


 いざエリアに入ると、当たり前だがそこまで品揃えは良くない。専門店ではないので、仕方がないが、種類も6種類しかない。しかもいい値段をする。


 そりゃ家の入口だからそこそこいいねをするとは思っていたが、それでも悩む。

だって安くて29万から、いいものだったら50万程する。あのメイドこんな金が掛かる物を簡単に壊しやがった。


 さすがに買えない。でも買わないといけない。そんな八方塞がりみたいな状況でどうするか考えていたらジンが来た。


 「どうだい、何か良さそうな(財布的に)ドアはあったか・・・高っか。こんなにすんのかよ」

 「俺たちの財布って合わせていくら残っている?」

 「ざっと2万ちょと。殆どはメイドが持っていきやがった。店員さんに相談するか。いるな、あの~すいません」


 すぐそこで家具の掃除をしていた若い女性のアルバイトに声をジンがかけた。


 「はい~ただいま。何かお困りでしょうか?」

 

 肘で杭っと俺の横腹をつついてきた。何だよ、呼んでやったからここからは俺が話せってか

  

 「あのですね、最近家の玄関にガタが来まして、そろそろ買い替えたいなと思っているんですよ。ただ実際に実物を見ると結構いい値段するじゃないですか」

 「確かにそうですね。本店としては工賃込みの値段になっていまして、そうなると値引きしたいとのご相談でよろしいでしょうか?」


 あんまりホームセンターで値引き交渉なんて見たことが無いけど、ここは背に腹は代えられない。何とか少しでも値引きしないと。


 「少々お待ちください。直ぐに上の人に確認を取ります」

 「よろしくお願いします」

 

 そう言ってそそくさとバックヤードに行ってくれた。


 「実際いくらくらいならできそうだと思う」

 「工賃は外してもらって、それでも良くて2万くらいだろうな、ただでさえ安い商品を販売しているのに、更に安くするなんて無理な話だ」


 無理を承知でお願いしているからな。希望は薄い。 


 意外と帰ってくるのは時間が掛かった。


 「お待たせしてしまい申し訳ありません」

 「いえいえ、こちらこそ無理を承知でお願いしているので」

 「店長が詳しくお話をお聞きになりたいとのことで、申し訳ませんが裏の控え室に来ていただけませんか?」

 

 「「え」」


 二人とも本音が漏れた。それはそうだ。元々無理も承知でお願いしたのに、まさか話を聞いてくれるとは。何ということだ。


 ただ理由をどう説明したもんか。何とか感動する話でも話して値引きするか。


 まあ、取り合えず行くしかないか。


 「行くだけ行くか」

 「だな」


 そういって、従業員用の扉を開けて、裏にある控室に行った。


 中に入って、こちらにどうぞと案内してくれた若い女性はいなくなって、店長と三人の空間になった。


 「さあさあ、そちらに座ってください」

 「ありがとうございます」

 「失礼します」


 そういい、俺たちは椅子に腰かけた。


 今いる部屋は、従業員の休憩スペースと店長の事務スペースが合体している。

なので、普通の店よりも休憩スペースが大きい気がする。


 「それで、どうして自分たちを呼んだのかをお聞きになってもいいですか?」

 「いえ、値引きがしたいとのことでしたので、何かお力になればと思いまして」

 「いきなり見ず知らずの自分たちの力になってくれるということですか」


 少し怖いな。いきなり値引きしろといったこっちにも非はあるが、その話を聞くだけなのにこんな裏に呼ぶ必要はないだろ。


 「実はケンさんに先ほど相談されましてね、君たちがもしかしたらお金で困るかもしれないから、何とかしてやれないかって」

 「ケンさんがですか?」

 「ええ、何とかしろと言われましてもどうしたもんかと悩みますがね」

 「え、ケンさんいたんだ」

 「ケンさんがさっき買い物してたんだよ。会わなかったのか?

 「うわ~ちょうどすれ違いか。俺会ってないわ」


 ケンさんが何か根回ししてくれていたのか。何で値引きしてくれるのかの謎が解けたな。


 「そうなると、ケンさんとはお知り合いなんですか?」

 「ええ、昔お世話になりましてね、私の先輩にあたります。そんな話より値引きの話です」


 そうだった。意外とケンさん顔が広いんだなって関心している場合じゃない。値引きの話だ。


 「実はお願いがありまして。そのお願いを聞いてくれれば値引き、場合によっては差し上げることも視野に入れています」

 「本当ですか」


 それは願ってもいない話だ。値引きどころかもらえるなんて。


 「それはどのようなお願い何ですか?」

 「丁度、今の時期は家庭菜園が売れ始める時期なんですよ。始めてみたかった人や、学校の自由研究などもあってか毎年売れ始めるんですが、今年は思ったよりも種が店に落ちてこないんですよ」

 「種ですか」

 「ええ、売るにしても種が無いと店としては困ります。そこでこの種を採取していただくのがこの今回のお願いになります」

 

 意外だった。種の採取か。どんな無理難題を押し付けてくるのかと思っていたが、これなら俺たちにもできそうだった。


 「確かに、さっき家庭菜園のエリアに行ったら、人が多いのに対して売る商品が少なかったな」

 

 ジンがそういうってことは、店としても本当に困っているのだろう。


 「わかりました。こちらとしても状況が状況なので引き受けましょう」

 「ありがとうございます。個人間での依頼だと問題があるかもしれないので、こちらからギルドに依頼として申請しときます。そちらを引き受けてください」

 「わかりました。期限はどのくらいで?」

 「一週間くらいでお願いします」

 「では、仮ですけど契約成立ということで」

 「お願いします」


 そういって握手した。これは仮契約だが、正式な以来として受理するためにギルドに行かなければならない。


 握手が終わって部屋を出て、店を後にした。


 「とりあえず目的は決まった。依頼を達成して、ドアをもらう」

 「やっと希望が見えてきたな」


 そのまま俺たちは、ギルドに向かった。


 


 


 





 


 


 


 


 



 


 

ギルドに関しては軽く次回説明します。

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