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メイド来訪


 ディーアいなくなってから、はや三日。

午前10時ちょうど、3回のノックをしても反応がないという理由でドアを思いっきり蹴飛ばされた。

そのドアだった物を見つめる。


 ドアは10メートル程吹っ飛び、横に真っ二つに割れていた。

この家のドアはそれなりの一般的なドアだとは言え、強度はあるはずだ。


 中に蹴った本人が入ってきた。。赤髪カーマインが目に入ってきた。ロングストレートでしっかり手入れがされている。


 そんな人が何も考えず(本当は何か考えがあるのかもしれないが)蹴っ飛ばす。


 はっきり言ってやばいだろこいつ。


 「あ・・・あの、どちら様でしょうか?まったくこれっぽっちも面識も来訪の予定もないと思うのですが・・・」

 「あら、では改めて。クラリス・ウィルフォードと申します。今後はクラリスとでも呼んでください。」

 

 そう笑顔でメイド服を着た女性に言われた。メイドがいきなりドアを蹴っ飛ばす理由も、うちに雇われに来た理由もわからない(実際そうなのかは不明だが)


 まさか飲みに行った時のお店の人で、酔った時に勢い余って雇います~みたいなことを適当に言ったのかもしれない。きっとそうだ、そうに違いない、そうであってくれ。


 神頼みかもしれないが、そうであって欲しいと心の底から思っている。

それは、見たくないもの、見たくなかった物を見てしまったから。


 だから、喉の唾を飲み込んで、慌てず落ち着いた素振りを精一杯見せながら質問した。

はたから見ればただのやせ我慢かもしれない。


 その時,運が良いのかもしれないジンが起きてきた。

今までの騒動は結構大きいはずなのに、何事もなかったか如く元気のいい挨拶をしてきた。


 「おうおう、朝から随分物騒な来客だな。メイド?よくわかんね~な。しかもなんで玄関ぶっ壊れてるんだ、ホントに状況がわかんねー」

 「いや、俺だって何が何だか。朝ピンポンがなったから出ようとしたら思いっきり玄関壊されて・・・てかあんた何が狙いだ。この家には盗むものなんて何もないぞ・・・まさか俺たちの体を狙ってきたのか」

 「そんなわけないでしょ。あと、あなたではなくクラリスです。二度はいませんよ」


 ジンも状況をなんとなく察した感じがする。わかることがメイドが訪問してきて玄関を壊したことだけだ。何にも話が前進していない。


 俺たちが顔を見合わせて困惑していると、目の前のメイドが話しかけてきた。


 「私はここに使用人としてきました。言ってしまえば就活です。雇いませんか?」


 一気に汗がだらっと流れてきた。背中が一気に凍った感じだ。


 物騒すぎる。いきなり知らない人に玄関ぶっ壊されて挙句の果てには就活だ~無理無理無理、やばいってこの人。しかも何がやばいって断ったら俺たち首が飛ぶ気がする。


 それ以上に、この人には苦手意識がある。会ったことないはずなのに、何か敗北というか純粋な負けを味わった気がする。


 やりにくいな。だけど就活ということは合否は言わないとならないのか。さっきから返事を待っている。

 ジンが先に口を開いた。


 「就活ねえ、家の玄関の扉をこんなに吹っ飛ばしておいて雇って下さいなんて虫が良すぎませんかねえ。誠意ってものがあるでしょ。雇ってもらうにしても」

 「それはそうですね、いきなりの来訪をしておいて無礼でした。では一番最初は有期雇用でどうでしょうか。それなら文句はありませんね」


 笑顔でとんでもないこと言ってますよ。あれ?雇うのって俺たちでは?なんでこの人がすべて決めているんだ。


 次は俺が話した。

 「なんでここなんだ。働くにしてももっといい所があるはずだ。それなのになんで初対面の家に?」

 

 使用人といえば働き口には困らないはずだ。しかも就活ってことはこの人は()()()()()であることになる。


 雇うにしてもお金が凄くかかる。それはもう家計が火の海になるくらいに。


 「いえいえ、先に雇うって言ったのはあなた方じゃないですか。今更取り消しなんてさせませんよ」

 「「え」」


 衝撃の事実が明らかになった。俺たちが雇用した?これが嘘の可能性も十分にある。

だけど、仮に嘘だとした時の狙いが分からない。


 だって俺たちはどこぞの勇者でもなく、大富豪でも、特別な何かがあるわけでもない。言ってしまえばモブAモブBみたいな存在だぞ。

 

 ていうことは、どこかのタイミングで雇いますって言った可能性の方が高いのか。過去の俺、

なんで雇用するなんて言っちまったんだ。


 「いやですね、もしかしたらそんなことを口走った可能性はありますけど、もしかしたらそれは酔っていた時の戯言なんですよ。ですので今回はご縁がなかった。そう思ってお帰り願えますか」

 「あの時は酔ってはいないはずですよ。まあ、その辺は思い出したくないだけかもしれません。トラウマは記憶から消えるなんてよくあることです」

 「そうかもしれませんが、今回は・・・」

  

 お帰りください。そう言いかけた。言葉にしようとした時に、ほんの一瞬で喉元にダガーを突き立ててきた。目を疑った。明らかに予備動作すらなかった。純粋に反応が出来なかった。


 ダガー自体どこに所持しているかわからなかった。これがさっきまであったいやな感じの正体か。

ジンも驚いているな、そりゃそうだよな。ここまでの強者は出会ったことがなかった。


 クラリスは喉元に突きつける一瞬だけ目が本気だった。だけど俺たちが小心しているとさっきまでの笑顔に戻っていた。


 合否の否を言おうとしたら武力でそれをもみ消そうとするとか、何でもありかよ。


 時間にして3秒もないくらい静寂が流れた。そしてクラリスは武器をしまってくれた。

驚いたことに武器をしまったとこも()()()()()()


 今の動作、攻撃で点と点が繋がった。出会っ事があると言ったがあの時か


 「お気づきですか?私はあの時買われた()()ですよ・・・ね」


 今日一の飛び切り良い笑顔を見せてきた。明らかな作り笑顔だっただけに緊張が走った。


 そしてわかりやすく右手を見せて来た。それは治ってはいるが確かにケガがしていた。

俺たちがつけた右肘の怪我が確かにあった。


 

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