売れるもの
あの店に行った後、来た道を戻って家に帰った。
個人的には、ああいう店が存在することを知れてよかった。
買った物に関しては、トイレに飾った。やっぱり、買わなければよかったかもしれない。
雰囲気に全く合わなかった。
時間的には夜8時を回っている。
「もうすぐできるわよ」
ディーアが、夕飯の準備をしているので、それを見て、俺とジンを食器やらなんやらを準備する。
「この机で、夕飯を食べるのが段々様になってきたな」
「なんだかんだ、習慣になるもんさ、それに手伝わなかったら、怒られるし厚も凄い」
「そりゃな、まあ、今の生活に慣れてきたってことさ」
「全くだな、最初は知らない森でお前と2人で遭難。そのあとは刑務所に行って、それから
今に至る。物語の主人公としては、なんかおかしくないか?」
「おかしいな、普通は美人な主人公を好きになってくれるヒロインがいて、俺たちは秘められた
特別な力があるもんだ。でも実際は、何の力もなければ美人なヒロインもいない、俺たちは現実ではみたモブみたいなもんさ」
「美人なヒロインね・・・」
二人して、一斉にディーアの方を見た。今まさに俺たちの夕食を作ってくれているこの作品に
置けるヒロイン。
「「ないないないないない」」
二人して、顔を向きあいながら、手を左右に振りながら否定した。
ゴンと、二人して殴られた。ちょっと痛い。
「二人して何馬鹿な事言ってんの、全部聞こえてるのよ。そんなのいいから
早く出すの手伝って」
「「はい」」
そういって、夕飯の準備をして、席に着いた。
「「「いただきます」」」
夕飯を食べ始めた。
メニューとしては、なぜかピザだった。
なんでも、ディーア曰く、作ってみたかった。だそうだ。
自宅でピザを作るのって、あんまないだろと思ってしまった。
注文するなり、買って帰るのが当たり前だったから、まさか作るとは・・・。
「どお、おいしい?」
「うん、おいしいよ」
「ああ、うまいね」
「そう、ならよかったわ」
初めて作ったそうなので、味に自信がなかったのか、食べ始めるまで不安な顔をしていたから、
俺たちがおいしいって言って、機嫌がよくなったのが何となく伝わってくる。
それから、ちょっとした雑談を挟みながら夕飯が終わった。
それからは、各々好きな時間の使い方をして、眠りについた。
翌朝、朝9時に起きた。今日は仕事がなかったので、ちょっと遅い時間に起きた。
ジンんはもう目が覚めているらしく、テレビを見ている。
「おう、起きたか、朝飯なら、そこにあるぞ」
そういってジンに、机にあるサンドウィッチを指刺された。ディーアが作っていったのだろう。
「ディーアは?教会?」
「そうだと思う。俺が起きた時にはもういなかったからな」
「そうか」
そういって、用意されていた朝飯を食べた。
サンドウィッチを食べながらジンに話さなければならない。
「さて、借金返済において、この家にあるものを勝手に売る。そういう方向で
行くとして、今日しかチャンスがない」
「今日は絶好のタイミングだからな」
今日は、ディーアが買い物に行って帰ってくるので、いつもより帰りが遅い。
なので、このタイミングで売るものを決めて、売るに行き、借金返済という人として最低な
返し方をする。
借金した相手に対して、返すためにその人の物を勝手に売って返す。
我ながらクズだとは思う。だけど、これで乗り切るしかない。
だからこそ、俺たちは、金になり、そしてバレにくい物を売らなくてはならない。
「バレにくく、かつ高値になりそうな物、この家にそんなものあるのか?」
「そこが一番運頼みになる。それこそ、ディーアはただでさえ必要な物しか家に置いて
いないから、何か骨董品でもあればいいけど」
「取り合えず、探していくか」
そういって、食べ終わった皿を洗い場に置き、探し始めた。
ジンがリビング、俺がディーアの寝ている寝室を見ることにした。
とは言っても、リビングは直ぐにジンが諦めた。
いつも俺たちが寝ているところだったから、探すと言っても大体何があるかを
知っている。なので、売れそうなものがないと言われても、頷ける。
問題は、このディーアの部屋だ。入ったことは数回しかなく、基本的には勝手に
入るなって言われている。年頃の女の子なので、その辺は分かっている。
なので、俺たちも滅多なようがない限り入ることはない。
(まあ、一回試しに入ったら、バチクソに怒られた)
「とは行っても、年頃の部屋としか言えないな」
「見られたくない、やばいものでもあると思っていたけどな」
ディーアの部屋は、特に変わっていることはなく、18歳という年齢からみて、
ちょっと大人しいとまで言えるくらいの部屋だ。
ベットにぬいぐるみあるのを見て、あいつも女の子なんだなと思ってしまった。
だけど、その他に何か特別なものがあることもない。
写真が机の上に飾ってあった。10歳くらいの時のディーアが写っている。そしてもう一人
14~15くらいに女の人が写っている。
(お姉さんか?お母さんにしては若すぎるしな)
「家族写真か、楽しそうに写っているな」
「まあ、この辺に関しては特に変わった物でもないな」
「これはなんだ?」
もう一つ、写真があった。俺たちが写っていた。
俺たちがこの家で暮らして直ぐのこと。写真とかが嫌いだったので、
不貞腐れながら、教会の前で撮った写真だった。
右に俺、左にジン、真ん中にディーアが写っていた。
「まあ、俺たちのことを大切に思ってくれているってことなのかな」
「なんで俺たちみたいなやつを、ディーアは拾ったのか」
いい奴すぎるだろ。そう思った。
それから、タンスやらなんやらを開けて、何かいいものはないかと探した。
結果として、売れそうなものはあった。
「これ売れるのか?何とも言えないな」
「売れる売れる。これは高くつくぞ」
そういって俺たちは、家を出て、昨日言った店に行くことにした。




