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ギャンブル後


 パチンコ屋、入店から約6時間後。


 自動ドアが開いて、2人の男が出てきた。


 「おいジン、いくら残ってる」

 「最後の理性が残っていたから、1000円はある」

 「良かった、俺はなにもない、すっからかんだ」


 ダメな大人というべきか、持ち金を全部使い、軍資金20000円から

1000円までになった奴らがここにいる。


 もちろん、負けが続いていたのではなく、俺、ジンともに

有り金はプラスに最初はなった。


 勝ちが来たならそこでやめるべきだった。


 負けた人間は口々にそんな言葉を吐き捨てる。


 「やばいな、生活に必要な物を買って来いって言われた金を

ほぼ全部使ってしまった」

 「俺たち、殺されるんじゃないか」

 「やめろよ、そんな冗談言うの・・・いや、冗談じゃすまないな」


 俺たちの頭の中は、どんな言い訳をすれば許されるのか、それで

一杯だった。


 お腹は空いている。昼ごはんに使ってねって言われた分も、消えて行ってしまった。


 どうすれば俺たちは許される。


 人を騙すこと。嘘をつくこと。に掛けては自信がある。

なのに、あのディーアにはそれが直ぐにばれる。


 聖女なんて俺の国にはいなかったから、聖女なら嘘を見破れる?のかもしれない。


 「どうする、言い訳するにしても、あいつはなぜかわかるぞ?」

 「ディーアに関しては、灰色の嘘でも危ない」


 本来、人を騙したりするときは、嘘と本当のことを混ぜるといい。

本当のことが入っていると、その話の信憑性が増す。


 なのに、ディーアに関しては、灰色の会話ですら、嘘がどこなのか的確に

当ててくる。


 それが何かしらの()なのかもしれない。


 「嘘がばれるなら、もう本当のことを言うしかないのかもな」

 「それは、最後の手段だ。誠意を込めて謝るしかない」

 「だけどエイジさんよ、俺たちには手がない、あの辺にいる人の

財布を盗んでみろ。ディーアは今度こそ俺たちを殺すだろうな」

 「殺しはしないだろ、だけど、警察には突き出すだろうな」


 また、刑務所生活に逆戻りになってしまう。そんなことは嫌だ。


 信頼?があるとは思はないが、これ以上落としたくもない。

お世話になっていく上では大切なことだ。


 だけど、欲に負けてしまったのも事実だ。


 信頼を失いたくないとか言っておきながら、実際にやったことは

信頼を落とす行為だ。


 だからこそ、ここですべきことは何か。


 もうそろそろ俺たちの家についてしまう。


 考えなければ、この状況を打破する何かを。


 「嘘をつくしかない」

 「おい、あれだけダメってあきらめただろう」

 「だけど、この方法しか思いつかない。だから・・・」

 「だから?」

 「灰色でも、どっちかっていうと白に近い嘘をつくしかない」


 そんなことが可能なのか?、と同時に、白に近い嘘ってなんだ?。

そんな疑問をジンは思ってが、口には出さなかった。


 「ジン、話は俺がする。基本的には頷いてくれればそれでいい」

 「分かった、あとは頼む」

 「おうよ」

 

 多分ばれるかもしれない。だけど、ばれない、そして怒られないことに祈るしかなかった。


 お使いを頼まれた子供が、まったく違うことをしているのと同じだな。

あれの、大人バージョンだ。


 子供なら、ごめんなさいで済むが、俺たちはどうなってしまうんだ。


・・・・・・   ・・・・・・   ・・・・・・


 扉を開けて、ガチャっという音がした。


 ディーアは家に帰っているみたいだった。


 「「ただいま」」

 「お帰り」


 そんな会話で続きが無ければ、それで一番良かったが、

 

 「何を買ってきたの?」


 やはり、質問された。


 「そのことなんだけど、俺たちは何も買っていない」


 堂々と、自分たちが何も買っていないことをディーアに話した。


 「なんで何も買わなかったの?気にいるものがなかったとか?」

 「ああ、気にいるものはなかった」


 そもそも商品すら見てないから、気に入るも何もない。


 「そう、それならしょうがないわね。明日、ちょっと大きなデパートに

でも行こうかしら」

 

 何も言わない。いや、何も言えない。

ここで「そうしよう」みたいな意見を言ったら、明日デパートで

ディーアに見られながら買い物をしなければならない。


 お金持ってないのに買い物なんていけない。


 かと言って、否定すんのもおかしい。俺たちには明日、もっと言うと

それ以降の予定が何にもない。


 だから、ここは否定も肯定もしない。


 「まあ、いいわ」


 ディーアは、そんなことを言った。

俺たちが何も言わなかったことに関してなのか、デパートに行くという話

に関してなのかは、分からない。


 「もうおなかが空いたでしょ。ご飯にしましょ」

 「「ああ、助かる」」


 俺たちは、今日は勝ったのだ。晩飯に行くということは、これで

この話はおわりだ。


 良かった。これで怒られなくてすむ。


 「そういえば、昼は何を食べたの?」

 「「・・・え」」

 「まって、今の「え」ってなに、食べたんじゃないの?」


 予想していなかった質問がされてしまい、素で聞き返してしまった。

 

 ここで問題なのは、この質問には食べたか、食べてないかでしか

答えられないことだ。

 

 それは、困る。食べていないのが事実だけど、それを素直に話したら、

食べてこなかった理由を話さないといけない。


 昼飯を食べない理由なんて、ダイエットか金がないかしかない。


 そんなことを考えながら、なんて答えればいいかと考えていたら、

ジンが話やがった。


 「()()()()()()()()()()()()


 このジンの言葉で、すべての歯車が狂った。


 「どうして嘘をついたの」


 一瞬で嘘がばれた。だけどまだばれたのは昼飯だけだ。

それなら何とかなる気がする。


 「あなたたち、おつりは?あるわよね」


 その質問には沈黙を貫いた。それは、手元には何もありませんって言っているような

ことでしかない。


 「分かったは、あなたたちお金を全部使ったのね。なにに?」


 笑顔が怖かった。スーゲーいい笑顔してんですけど。


 「本当のことを言えば、募金したんだ」

 「募金?」

 「そう、募金だ。困っている人がいて、その人にどうしてもと

頼まれたんだ。だから仕方なく」

 「仕方なく、その人にお金を渡したと」

  

 頷く2人。

 

 「嘘、じゃないのね。ならば信じるは、だけど、確認だけは

させてね」

 「確認ってなんの?」

 「困っている人がいるって部分が嘘だったから。その募金って

まさかとは思うけど、ジャラジャラした機会に入れることを言わないわよね」


 終わった。


 「へーー、自分たちの生活よりも、ギャンブルにお金を使うと」


 ディーアが段々表情を変えて、最後は怒った。しかも

うるさく感情的になるのではなく、静かに怒った。


 「玄関に正座」

 「い、いや~それは足がきついっていうか」

 「そ、そうだよな、流石に冗談だよな」


 ディーアは玄関に指をさしながら


 「正座」

 「「はい」」


 悪いことをして怒られる。そんな大人がここにいた。



 




 


 


 


 


 



 


 


 

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