森、脱出②
エイジと別れてから30分くらいたった。だけど目的の草は見つからないでいる。
(どうしよっかな、ここで挽回しないとな)
気合を入れて辺りを見ている、先ほど怒られたばかりなので、何かしら持って帰らないと
いけないと思っていて焦っている。なので足元にある条件を満たしている草にすら気が付いていない。
それもそのはずで、ジンは草を探していない。
(エイジなら草を探してくれるはずだ、ならば今の俺に出来る事をすすればいい)
そう思って辺りを見ていたら食べ物があった。そこにあるのはイチゴや枇杷といった3月や4月フルーツがたくさんあった。そういったフルーツには少しだけど水分も含まれているので1日くらいなら何とかなる。
(よかった、これであいつが草を持っていたら今日はなんとかなる。)
他の物がないか探してもこれと言って使えるものも何もない。精々乾燥した木や葉っぱといったものしかないのでっ持っていくにも限界がある。
(この辺だともう必要なものはないな、別れたとこに戻るかな)
そう思いながら来た道を戻り始めた。
・・・・・・・・ 合流地点 ・・・・・・・・
先についていたのは瓔弐だった。赤いキノコを片手に、もう片方の手で草を持ちジンの帰りを待っていた。
昨日の夜から何も食べてないので早く食べたくて仕方がないのである。胃の中は空腹の先で腹の音ももうしない。
だからか自然と食欲もだんだんとなくなっていくのが分かる。だからこそ一刻も早く何か口にしないと駄目な状況だと感じている。
10分くらいしてジンが帰って来た。その手にはフルーツがたくさんあり感動して涙が出そうである。
「なんだ、食べ物を持ってきたのは俺だけじゃないんだ」
「今日1日は何とかなりそうだな、ただ、お前の持ってるそれなんだ?」
「キノコだよ、食べれるか見てもらいたくて、見た目は毒っぽいけど意外と毒キノコじゃなかったりするかもと思って持ってきた。」
「それは見た目どうりの毒キノコだ、残念だな」
そうキッパリと言ってそのキノコを踏んだ。
エイジが持ってきたキノコは、ハラタケ目テングダケ科テングダケ属のベニテングダケ
であった。毒素はそんなになく、毒の成分はイボテン酸、ムッシモールといったとこで、死ぬことはめったにない。精々腹痛や下痢といった症状になるだけ。また、意外と知らない人も多いが赤い帽子のおじさんに出てくる食べたら
大きくなるキノコの元ネタでもある。
ただ、ここでリスクを取る選択しをするはずもなく当然食べることは無い。
(また微妙な所を選んだな、完全に死ぬキノコなら食べないが、少し迷ったな)
そんな考えにいったったことを、残念そうに踏まれたキノコを見ているエイジは知らない。
(一から説明しなくても一言いえばわかるのがこいつのすごいとこだからな。)
「これは、ベニテングダケだから食べなかった」
「あーあ、そういうことね、確かに今の状況だと食べないほうがいいね」
ジンが考えていた通り、エイジはすぐに内容を理解してそれが最善だとわかった。
毒素は薄いにしろこんな森の中で下痢や腹痛ななったってどうしようもない。
なら、このキノコの毒素を抜けばいいと思う人もいるかもしれないが、それができない。キノコが水溶性なため水につけなくてはならないからだ。
今は水自体が無いし、あったとしても貴重な水を使う程の価値はない。
「残念だ、せっかく見つけたのにこれじゃ喜び損じゃないか」
「そういうなって、俺の持ってきたフルーツで何とかなるだろ、どのみち少しは休憩しないといけないしな」
「そうだな、その間にこっちで水筒は作っておく」
そう言って、2人は座って休憩した。