少女は少女じゃなかった。
なぜか、一人にはばれてしまった。ここは素直に顔を出した方がいいのかもしれない。
「OK、OK、隠れていたつもりはないんだ、そう険しい顔をしないでくれ」
そう、誤魔化そうとした。俺たちは何もしていない。ここにいただけだ・・・と。
流石に無理はあるかもしれないがここはこうするしか、それ以外何やっても無駄だと
思えた。
「いや、無理があるだろ」
少女にそうツッコまれた。ですよね。
「そういう君こそここで何をしているんだい?、道に迷ったのかな?」
「道に迷うことは誰にだってある。あっちの教会に行ってなさい。なあエイジ」
「ああ、ここは君のような少女が来るところじゃない」
そういって、あそこには行っては行けません、という親のようだった。
見つかったのが、小さな少女でよかった。
見た目は、幼かった。身長で言えば150cmあるかないか分からない感じがして、
髪の色は金髪・・・みたいな色をしていた。厳密に言えば・・・何だったかな?
確かあの色は
「そうだ、ビーバーイエローだ」
「なんなんですか、いきなり?」
「いや、何って、君の髪の色、珍しいなと思ってさ、そんな色に染めてたら
将来禿るよ、もっと髪は気を付けないと。」
「はぁ?何かよくわかりませんが気を付けます。・・・って話をすり替えないで
下さい。ここにいる理由なんて教会に行きたくないからですよね」
あ、バレてたのね。そりゃそうだよな。
「ああ、行きたくないね、なんか文句あんのか」
ジンが大声で叫んだ。ここにいる少女をビビらせるためだろう。
俺たちにビビッてくれればこっちのもんだ。
こんな人気のないとこでも、大声を上げると教会にいる奴らに気づかれる
可能性があるが、もうそろそろ教会の中で祈り、懺悔が始まるはずだ。
なぜそう思ったのかは、教会だからという理由があるが、あくまで
ずっと仮定としていた。決定的な何かが無かったからだ。
色んな人に聞いてもみんな口を閉ざす。何も聞かなかったように。
そんな結果じゃ教会で祈りなんてありえないと考えてしまう。
きっとあの中じゃ拷問が起きてたに違いないと思っていた。
だからこそ、教会で祈りなんてのは俺が考えている中で一番の当たりだった。
何で祈りと決定づけたか。そんなの簡単。
この少女の着ている服が、白を全体的に多く使っていて、ここに囚人服を着て
いない人間がいるとすればそれは聖女の可能性が高かった。
この子はその聖女の見習いに来た人間だと思われる。
といいことはこの子に上司がいてそろそろ時間が迫っているため、
この少女も教会に向かわなければならないはずだ。
時間に追われれば必然的に教会に行く。
「少女よ、君も教会に早く行かないといけないんだろ。聖女見習いが
時間に遅れたらそれは大変だ。さあ、早く行かないと。」
「ああ聖女なのね、その格好からなら納得できるな、でもなんで見習いなんだ。エイジ?」
「そりゃこんなに幼かったら見習いに決まってんだろ、それ以外に理由があんのか」
「それもそうか」
聖女見習いの少女が下を向いた。もしかしたら悲しんでいるのかもしれない。
「済まない、済まない。悪気はなかったんだ、許してくれ、・・・な」
少しの間静かな時間が流れた。時間にして5秒くらいだろうが。
そして、聖女見習いの少女が口を開いた。
「あの・・・いくつか言いたいことがあるですけどいいですか?」
「「ああ、言ってみろ」」
少女は、イラついていた。
「まず1つ目、あたしは聖女見習いじゃなくて聖女です。ちゃんとした聖女の
資格を持っています」
「これは驚いた、見習いじゃなかったのか。」
これには驚いた、ずっと見習いだと思っていたからだ。
幼いからずっと見習いだと、年齢に関係ないのかもしれない。
「2つ目、時間に追われているのはそのとうりです。そろそろ教会に行かないと
いけないのは確かです」
そうだよな、そうだと思っていた。
少女が少しずつ距離を詰めてきた。
「最後に、なんであたしのことを幼い少女って、見習い聖女って思ったんですか。
身長が低いからですか、体が全体的に小さいからですか。それとも・・・胸がないからですか。」
その言葉と同時に少女は顔を上げて、2人を見た。睨み付けた。
胸がないからですかっていうときのトーンが凄い低かった。
あ・・・、これはキレてるなっと二人は実感した。
「あたしはこう見えても18歳なんですけど」
「うっそだ~、そんなわけないだろ」
馬鹿野郎、ジンが完全に余計な事を言った。
「へ~~、あたしが嘘をついていると、ここで嘘をつくメリットなんて一つも
ないのにですか」
「い、いや~。これはレディーに対して失礼なことを言った。」
「そ、そう俺たちもうすうすは君が少女じゃなくてレディーだと思っていたんだ」
何とか許しをもらはないと後々めんどくさそうだった。
「そう思っているんだ。自分たちが失礼なことをした、申し訳ないことを言ったって。」
「「ああ、そうそうそう」」
凄い早口になってしまった。それでもレディーはゆっくり歩いてくる。
「ならどうして、ごめんなさい、とか、すいませんでしたとかの言葉が一回もなかった
のかしら」
ズーン、と、何かが降ってきた気がした。これはもう許されない。
そう思うことしか出来なかった。
ここから全力で走って逃げたい。なのに今、体が一歩も動かなかった。
まるで強者に睨まれている時のように、弱者が何もできず、ただ死を待つことのように、
何もできない。
そして、俺たちの前に来てしまった。距離にして0距離。真ん前に、いる。
「そうそう、もう時間内から強制的に持っていくわね」
持っていく?・・・二人ともそこに疑問があった。
次の瞬間、少女(体だけ)は少しジャンプした。そして、拳を巣グーの形にして、
右手でエイジの頭、左手はジンに向けて狙いをつけて、頭の頂点から地面に向けて
殴った。
殴った時、衝撃波があった。ドーンと強い音がした。
一瞬でうつ伏せに2人はなった。地面に頭がついている。
一体、どれだけの力で殴ったのか。
そして当然2人とも、気絶している。