刑務所での名前
ここでの暮らしがなんとなくだが始まった。
この爺さんは、レーンと言うらしい。親切心なのか、利用するためなのか分からないが
今のところ怪しいところもなく、良い人、というのが印象だ。
現在の自分たちの置かれている状況だが、犯罪者ではなく、難民という扱いらしい。
そこが今回で一番良かった点だった。
犯罪者ではなく、難民ならばそこまで刑期が長いことはない。
そして現在地、刑務所だが地下1階である、それなりに階段を下りた気がしたが、
そもそも大きな洞窟なので仕方がないことらしい。
やること、主な仕事はここで洞窟を掘る。それだけである。
大変ではあるが、8時間労働、休憩あり、それがここでのルールである。
どっちかというと、更正施設と言った方が近いのかもしれない。
ここではいくつか決まりがあるが、その一つが名前を呼んではいけないことだ。
過去の自分を忘れて、新しい自分として生まれ変わるのが狙いだそうだが。
ただ単に看守が名前だと面倒くさいだけだろうとは思う。
なので基本は番号で呼ばれる。
そして今から、俺たち2人はその番号をもらいに行く。
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
歩くこと約7~8分、1つの建物がある。
この監獄の総合案内所らしい。ここで番号をもらい、仕事に就く。
「ここまで長かったな、見た感じ肉体労働だし、まぁ何とかなるべ」
「どの期間ここにいるかが問題だろ」
そして、建物の中に入った。
ここでレーンじいさんとはお別れした。
「ここでの生活についてのセミナーを行う、静かに聞くように」
そういって俺たち2人しかいないところで、説明が始まった。
「まず、ここはオーランド刑務所と言う。主に刑期1か月から5年までの犯罪者が入る、
大型刑務所だ」
(大型刑務所って何、ここはどっかのショッピングモールですか)
「まず君たちには、番号が与えられる、今後はその番号で呼び合うように、
番号の決め方は、このサイコロで行う」
「そんな簡単に決めていいんですか、もっとこうなんかないんですか?」
「ない、創立120年を迎えるこの刑務所の伝統だ」
((そんなどうでもいい伝統作んなよ))
「そこの黒髪のお前から、自分でやれ」
そういってサイコロを四個渡された。正直番号なんてどうでもよかった。
「そこの茶碗に投げなさい」
いやいや、これ完全にチンチロリンじゃねえか、おかしいって、こんなんで決めんの。
だったらサイコロ三個でいいじゃねえか、そう思いながらエイジはサイコロを投げた。
そのサイコロは4,5,4,5となっていた。
「よし、君の番号はシコシコだな」
「ちょっと待って、流石にやり直しを要求します」
「なんだねシコシコ、内の伝統に文句でもあるのかね?」
「文句しかねえよ、なに、俺はここにいる間ずっとシコシコ呼ばれんの、最悪じゃん、
ていうか普通はヨン、ゴ、ヨン、ゴって言いませんか」
「数字であればなんだっていい。ここはそういう場所だ」
どんな場所だよ、どんな刑務所より一番おかしいよ。
そうやって落ち込んでいるところに、ジンがスーゲー笑顔で肩に手を置いた。
「まあ、そう落ちこむなよ、そんなこともあるさシコシコ」
どうしよう、こいつをグーで殴りたい。
「よし、次はそこの銀髪、サイコロを振れ」
コロン、カラン、1,9,1,9,
「え????」
「よし、お前は今日からイクイクだ」
「はーーーーー?」
頭がこんがらがっている、自分がやられたらムカつくけど、そばで見たらスーゲー面白い。
どっちも体力が限りなくゼロになった。俺たちの物語はこんな
名前でスタートすんの、最悪だよ。
しかもなんだよ、シコシコとイクイクって、完全にただの下ネタじゃねえかと。
そうして、ここでの生活の名前が決まった瞬間であった。