ここでの暮らし
俺たちは今、ここに来て10分そこいらで、もう労働をしている。
2人で大きな岩を運んでいる。なんだこの状況。
「なんできてそうそう仕事をしているんだ。完全にここ地下労働施設じゃねえか、
なんだよ、俺たちは借金まみれのギャンブラーか」
「文句は言いたい。もう少しここの説明が欲しい。人権なんてないのかよ」
そんな時に、後ろから声がした。
「なんだい、新しい新人かい」
そういって振り向いたら、60歳くらいの爺さんがいた。
「どうもこんにちは、それともこんばんは?」
「まあ、ここは地下、時間なんてわからんだろう。どちらでも構わんよ」
そんな感じで、見た目はよれよれだが、体つきは鍛えてある。
ここでの生活がここまで体を鍛えるのが分かる。
「何か質問があるんだろ?わしにわかることなら教えよう」
この爺さんは一体何者なんだ。ここならこんな感じに親切な人が多いのか?
まあでも、聞きたいことはあるから聞いといていいだろう。
「「ここは食事は出るんですか?」」
え・・・、みたいな顔をしている。そんなこと質問してくると思っていなかったようだ。
「もちろん出るぞ、1日3食必ずある」
「それは良かった」
ああ、本当に良かった。なぜなら、よくわかんないこの世界に来てからもう数日たっているのに
まともな加工食品を食べていない。フルーツと水と酒。それだけでよく生きていたと思う。
そこで疑問が1つ生じた。
((この人、一体何をしたんだ))
こんな良い人っぽい人が、いったい何をしてこんなとこにいるんだ。
だけど、それは聞いていいのかどうか。目でアイコンタクトして、聞いて欲しい
というアピールをジンにした。
「なあ、じいさん。あんたは何をしてここにいるんだ?」
じいさんの顔が笑顔から真剣な顔に変わった。人は見かけで判断できないものだが、
こんな優しそうな人が、大犯罪者だったなんて言われても納得は出来る。
こんな年齢でも外にいけないなら、一体どれくらいここにいればいいのか。
脱獄が出来ない以上は、模範生になって早くここから出ないとならない。
そして仕方なく、といった風に口を開いた。
「あれは少し前のことだった。少し、ほんの少しだけだった、・・・痴漢をしただけだった」
・・・・は
そんな言葉が出そうになった。あの真剣な顔は、犯罪は犯罪でもただただ恥ずかしい
から言いたくなかっただけか。
((クソとしか言えない))
そんな感想しかなかった。だけど、今の状況、痴漢をしたクソなじいさんに
ここでの生活を聞く。俺たちはクソ以下の存在か。
溜息しか出なかった。
そんな落ち込んでいる俺たちに、ここでの生活のことで溜息をしたのかと思われ。
励まそうとじいさんが口を開いた。
「まあ、就寝時間まではいろんなものが買えるから、娯楽には困んないぞ、ここはまるで
楽園だぞ」
「そうなんですか、ここでは買い物ができるんですね」
ますますあの設定と同じ施設だなとは思った。
「まあ、ここは時給250円、労働12時間だから体はきついぞ」
おいじじい
地獄じゃねえか、あんたさっきなんて言った。楽園、そんなものどこにあんだよ。
周りを見ても、むさいおっさんしかいない。時給は低くて労働時間の完全なオーバー。
犯罪者に人権はないのかもしれないが、もう少しなんかあるだろ。
なに、ここはそんな残酷な世界なのか。
「娯楽って何があるんですか?」
「おう、そんなことか、いまブームなのは手押し相撲だぞ」
((幼稚園かよ))
そんな感想しかなかった。何をして遊んでんだよ。
いい大人が手押し相撲ではしゃぐ姿なんて見たくないし、そこまで人間は
追い込まれているのか。ここやばいな。
「いやいや、もっとなんかあるでしょ」
「そうですよ、それ以外に何かないんですか?」
何かを考えている。そして
「そうだな、少し前なら人生ゲームかね」
((小学生かよ))
なんだよここは、人生終わっている奴らの人生ゲームって、何が楽しいんだよ。
今更、プロスポーツ選手のマスにあたって、大人がはしゃぐのかよ。
それに、ブームがなんでどんどん幼稚になっていくんだよ。
ここはそんなとこなのかよ。
「まあ、そろそろ自分たちがどんな労働をするか知りたいだろ、よくわかんない
石を運んでいる。その正体は何だと思う?
まあ、この石の大きさ。手で持てる大きさなことから多分鉱石関係だと思う。
推理でもなんでもない。
なぜなら、さっきから、一定時間で、バラバラな大きさの石を地面に落とした。
そしたら後ろのじいさんは、小さいのは無視しているが、少し大きいのは拾っていた。
そのことから、これは空洞の拡張をしながら、メインは鉱石採取。
だからここはまだ、
「いや、まだ検討もつかないですね」
「なーに、簡単だよ、この空洞を大きくするために掘っているのさ」
嘘をついてはいない。だけど、真実ではない。この爺さんが
今回初めて回答を濁した。