物語のスタート
目が覚めたらそこは知らない場所だった。
あたり一帯が木で、ここが森なのか?
見るからに周りに明かりがないから、もしかしたら森にいるのか。
嫌なことに星空が良く見える。よく見えるってことはこの辺に町や建物が無いし、人がいないって事かもしれない。
なぜか結構落ち着いている自分が怖くなってくる。こんな目が覚めたら森にいるなんて経験したことないのに。
「どういうことだ、一体何がどうなっている」
ただ。どれだけ考えてもここが深い森の中にいることが現実であるという事だけが突きつけてくるだけで、何も解決しない。
どんなに考えても答えが見つからない。よし、考える方向を変えよう。ここからどうするか、どう行動するかの方にシフトチェンジ。
(どのみち朝になれば少しは謎が解ける。なら、今すべきことはここで生きることに変わりはない。)
夜の森はとても危険である。基本的に月のおかげで自分の周りは見える。
それでもせいぜい3~5メートルでしかない。その先がわからない以上危険でしかない。なので動くことができない。何かしないと死ぬ気がするのになにもできないのが辛い。今の自分に出来ることをする。
(まずは、自分に置かれた状況と記憶喪失になってないか確認、今後どうするか考えないとならない)
名前 潟口 瓔弐 (かたぐち えいじ) 性別 男
出身地 ?
身長 182㎝ 体重 73㎏
見た目 黒髪 黒目 年齢22歳
基本情報は大体こんなとこである。
次に置かれた状況は、遭難である。自分から森に入ったわけではないのに遭難とは、なかなか運がない男である。だからと言って、昨日何をしていたかは待ったく思い出せないでいる。
「昨日は・・・・う~ん、何してたっけな?夜飯にうどんを食ったことしか思い出せない」
昨日食った飯しか思い出せない。なんだ、あそこのうどんを食べたら森にワープするなんておとぎ話みたいなことが起きたのか。許さねえぞ店主め。
そんな責任転嫁をして何とか心を保とうとした。結果的に変わることは何もない。先に進もう。
今後どうするかだが、夜が明けたら森を抜けないとならない、森がどれくらい
広いか分からない以上食料は探さないとならないし、何より水を確保しなくてはならない。
近くに川があればいいのだが、川の音は近くからはしないので探さないとならない。
川を探しながら動物や人が要ればここがどこなのかも分かる。
仕方ない。朝日が出てくるまで何もできないからひとまず休息をとるか。
どっちみちここで襲われても俺には対処する術がない。だったら朝になった時に少しでも動けるように体力を温存するべきだ。
判断としてはだいぶ賭けになる行動だが、ここは賭けるか。
「こんな安全が確保できないとこで寝るとか緊張するぞ」
目を瞑ったらこれがびっくりするぐらい簡単に眠れた。疲れていたのか現実を忘れたかったのか、直ぐに眠ることが出来た。
時期はまだ冬なので実際は凍死するくらい寒い。だけどここには落ち葉とかの天然で暖かい素材は何もない。
凍死したら笑ってくれ。ここで物語はおしまいだ。
数時間が経過して太陽が顔を出した。無事に凍死することなく夜を迎えることが出来た。
太陽が上がってくるのがこんなに嬉しかったのはいつ以来だろう。
とても言葉では言い表せないくらい太陽がまぶしかった。
気持ちがいい。天気は雲一つない快晴。動くには絶好の天気。
「さて、動き出しますか」
そなことを言った時に、20mくらい先に木で誰かが寝ていた。
ここからだと靴しか見えないので性別もわからない。
「こんなとこで俺と同じ境遇のやつがいるなんて、そんな馬鹿な話あるか」
俺と同じ境遇の奴がどうやらいるらしい。こんなよくわかんねえ森で寝るなんて奴同じ境遇の奴しかいねえ。きっとそうだ。
殆ど決めつけになるけど、逆に好んでこんなとこで寝るなんてそれこそおかしいだろ。好き好んで森でキャンプするならもっと他の場所があるはずだ。
ここで合ったのも何かの縁だ。ここで会いに行くことで情報を得られる。行ったほうが得ではあるので
会いに行った。
一歩ずつ近づいた。わかりやすく足音を大きく立てながら。そしたら顔が見えたが、
「おいおい、まじかよ。そりゃないぜ」
うれしさと同時に安堵の声が漏れた。それは良く見慣れた人物がそこにいたからだ。