序章
今回で2作目です。
神の日記と同時進行で書いていくので2日に一本投稿くらいですかね?
ちなみに土日は出せないです。
―その光景は、まるで世界が燃えてしまったかのようだった―
耳に響くは鼓膜を破るような銃声の雄叫び、苦痛に呻く叫び声。
目に映るは中隊を組み小銃を向ける敵兵、敵兵、敵兵。後ろを振り向けど見えるのは敵によって放たれた劫火のみ。退却も不可能。
だがこの人数差では勝てる見込みもない。まさに地獄。手に持つ、幾度もの死線を共に潜り抜けてきた愛銃はもう既に鉄屑となってしまっている。
万事休す…か。敵兵は第一の塹壕を同士の屍で埋め尽くし、第二の塹壕を血の池にしている。私がいる第三の塹壕へと来るのにそう時間はかからないだろう。
"死"が刻々と近付いてくる。恐怖心が身体を蝕んでくる。ただ、自分ではどうする事もできない。塹壕の中に蹲る。願わくば死体だと思われ、見逃してもらえるように。
足音が近付いてくる。心音が今までに感じた事のないほど大きい。人に聞こえるのではないかと思うほどだ。
銃声がまた響く。先程とは違う乾いた銃声。人が呻き、倒れる音がする。幾度も続き、その度に次は自分ではないかと思う。
どれ程の時間が経ったのだろうか。一向に自分は殺されない。それどころか、少し前まで聞こえていた人の足音や呻き声は何時の間にか聞こえなくなっていた。
耳がやられたのか?だが、木々が燃える音は聞こえる。鼓膜は大丈夫だ。
何らかの理由で敵が撤退したのだろうか。ただ敵もこの要所ををどうにか突破しなければならないだろう。撤退するはずは無い。ならば何故だ?恐る恐る私は頭をあげた。
目に映ったのは、至るところに転がる敵の屍。状況が理解出来ない。圧倒的優勢だった敵が、今は唯の屍に。
懐中時計を見ると、第二の塹壕を血の池にされてからまだ十分も経っていなかったまるで弾が切れた機関銃のように急に静かになった。
地面には見慣れない弾丸が散らばっていた。大きさは.50in。分かりやすく言うと50口径弾だ。敵も味方もこのように大きい弾丸は使っていないはずだ。.50in弾が撃てる武器は対物ライフルぐらいしかないだろう。
ふと頭によぎったのは、自軍内で最近編成されたという小隊。噂でしか聞いたことはないが、その小隊は狙撃小隊という、本来なら支援部隊であるにも関わらず、凄まじい戦績を上げているそうだ。中隊を一小隊で壊滅させることは不可能であると幼子でも理解している筈だ。
更にその小隊は小隊最小規模である30人。それを私が蹲っている、ものの十分足らずで中隊を殲滅したのだ。やはりまさに化け物である。我々では足元にすら及ばない、圧倒的な力量の差を見せつけられた。
「小隊長殿!53小隊の生存確認が終了!死者18名でした!」
隊員の報告で我に返る。隊長として、戦場で集中出来ていないのは即刻処刑レベルである。気を引き締めなければならないな。
にしても部隊の3分の1がやられるとは…例の狙撃小隊が来なければ殲滅されていたのはこちらだろう。
彼らは自分達が目撃されていなくても目標であれば全て殲滅する。これが誰もこの狙撃部隊の詳しい情報を知らない理由であり、幻影隊と言う名前の由来である。
−これは後に伝説として語られる狙撃部隊、幻影隊と言われる隊の長を記した物語である―
これからもよろしくお願いします。
神の日記と作者は同一人物ですよね?
作風がかなり違いますけど…。
次回主人公が登場します。