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316 一方、女湯では……


 一方、『黒鉄くろがねの塔』本来の大浴場では――レイナとノーラを含めた女性八人が一緒に入浴していた。


 可愛らしくも落ち着いた感じの装飾が施された白い石造りの浴場で。いつもならカイエが一緒だから、甘い争奪戦が繰り広げられるが。今日は女子ばかりなので、ローズたちも純粋にお風呂を満喫している。


(ロザリー以外は……みんな私よりも年下なのよね?)


 レイナは湯船に浸かりながら、一人だけ落ち着かなかった。ハーフエルフのレイナはスレンダーな体形で、色々なところが控えめだが……


 一切隠す事なく、堂々と肢体を晒らすローズたちは――ボディも規格外だった。


 普段は知的美人のエストは『脱いだら凄い』隠れ巨乳で、ローズは身体まで完璧な美少女。エマも胸がローズと同じくらいあって、小麦色の肌が眩しい健康美少女だ。


 アリスは比較的スレンダーだが、それでもレイナと比較すれば胸があって……その上、十代とはとても思えない妖艶な色香を放っている。


 そして、メリッサは鍛え上げられた筋肉質な体つきながら、胸はローズやエマにも負けておらず。ウエストが細い上に、ヒップだってキュット上向きで形が良い。


(駄目……私じゃ、全然勝負にならないわ)


 女としても絶対的強者であるローズたちに――レイナは格の違いを見せつけられた気分だ。


(みんなはカイエの奥さんと愛人だから、その身体でカイエとあんな事やそんな事や……え、でも。だったら……ロザリーも、カイエはそんな事をしてるの?)


 澄まし顔で身体を洗っているロザリーを、レイナはチラ見する。


 ロザリーの身体は十代前半(ローティーン)の少女のそれで……少なくとも胸とヒップは、さすがにレイナの方が勝っている。


(だったら、私だって……って、私は何を考えてるのよ!)


 赤面するレイナは、ロザリーと目が合う。


「レイナが考えている事くらい……ロザリーちゃんはお見通しですの!」


「え……な、何の事? 私は何も……」


 慌てまくるレイナに、ロザリーは呆れた顔をする。


「惚けても無駄かしら。ロザリーちゃんに喧嘩を売るなんて、百年早いのよ……それに何を勘違いしてるのかしら。ロザリーちゃんはこの姿(・・・)が気に入っているだけで……」


 その瞬間、ロザリーの身体に変化が起きる。身長が一気に伸びて、胸もヒップも大きくなって――


 翠色のポニーテールと、淡いピンクの唇の美少女は、あどけなさが残る顔に我がままボディで。ローズたちにも決して負けないくらい魅力的だった。


「カイエ様が望むなら……こういう(・・・・)姿にだって、ロザリーちゃんはいつでもなれるのよ!」


「う、嘘……」


 打ちひしがれるレイナに、ロザリーが勝ち誇っていると。


「もう……二人とも何をやってるのよ」


 ローズが割って入る。


「ねえ、ロザリー……貴方の本当の気持ち(・・・・・・・・・)は解るけど。そのやり方じゃ、上手く伝わらないわよ」


 頭を撫でられて、ロザリーは恥ずかしそうに頬を染めながら元の姿に戻る。


「ローズさん……ごめんなさいですの。ロザリーちゃんも調子に乗りましたわ」


 反省するロザリーを、ローズは優しく抱きしめる。


「レイナも……解るわよね? カイエはそんな(・・・)事を気にしないって」


 レイナの事も、カイエはありのまま受け入れているから。胸の大きさなんて気にする必要なんてないわよと、ローズは微笑む。


「レイナ……僕もそう思うよ」


 今度はメリッサが、レイナと隣り合うように湯船に入って来る。


「僕だって、カイエのために魅力的になりたいとは思うけど。結局、カイエは見た目で選んだりしないから」


 レイナは形だけの笑みを浮かべる。今のレイナの気持ちを正直に言えば――


 物凄く魅力的な身体を、カイエに可愛がって貰っている奥さんや愛人に言われても……全然説得力がない。


「あのね、レイナは誤解してるみたいだけど……僕とロザリーは、カイエとそういう関係(・・・・・・)じゃないよ」


 レイナの想いに応えるように――メリッサは赤裸々な告白を続ける。


「勿論、僕だってカイエと一つになりたい(・・・・・・・)けど……カイエにとって僕は、まだそういう対象(・・・・・・)じゃないんだ」


 カイエと一つになれるのは――どんな事があっても絶対に一緒にいると、カイエが決めた相手だけだ。


「今でも、カイエは僕の事を大切にしてくれるけど……最後の一線を越えるだけのモノが、僕には足りないんだ」


 こんな事をレイナに話しても、メリッサには何の得もない。それどころか、普通に考えて他人に話したくない内容だろう。


(そんな事を……どうして、私に?)


 戸惑うレイナを、メリッサは真っ直ぐに見つめると。


「何が足りないのか、僕は上手く言葉に出来ないけど。でも、これだけは言える……カイエが求めているのは、姿とか形とかそんなものじゃないって」


 メリッサが何を言いたいのか――レイナにも解ったから。勝手にコンプレックスを抱いていた自分が急に恥ずかしくなった。


「メリッサ、その……ありがとう……私、これからも頑張るわ」


「そうだね……意地の悪い言い方だけど、まだまだレイナには頑張れる余地があると思うよ。だから、もっと頑張ってカイエに認めて貰わないとね」


「メリッサは……余計な事を言い過ぎですの!」


 ローズに頭を撫でられながら、ロザリーが頬を膨らませる。


 メリッサが暴露した事で、ロザリーまでカイエとそういう(・・・・)関係ではないとバレた。それがロザリーがむくれる理由の一つだが――


「ロザリー……そんなに拗ねなくても良いだろう?」


「そうだよね。ロザリーもレイナに意地悪したかった訳じゃないよね?」


「全く……素直じゃないわね。本当はロザリーも、レイナに頑張れって言いたかったんでしょ?」


 エストとアリスとエマが集まって来て、ロザリーを構う。


「み、みなさん……そんな筈ないですの! ロザリーちゃんは生意気なレイナと、余計な事を言ったメリッサに怒っただけですの!」


 ロザリーは全力で否定するが。


「あ……私にも解ったわ!」


「レイナまで……勝手に勘違いするんじゃないかしら! ロザリーちゃんは負け犬が嫌いなだけなのよ!」


 ロザリーに毒舌を吐かれても、レイナは嬉しかった。何故ならば、ロザリーの言葉を翻訳(・・)すれば……勝手に負けを認めて引き下がるなんて許さないという事だから。


「ロザリー……ありがとう。でも、さっきの身体を見せ付けるような真似は酷いんじゃない? ローズも言ってたけど、あれだと意図が解らないわよ」


「フン! 生意気な目でロザリーちゃんを見たレイナが悪いのよ……レイナが頑張るなら、好きにすれば良いかしら。ロザリーちゃんには全然関係ないのよ」


 そっぽを向くロザリーの隠し切れない優しさに……ローズたちが頭を撫でまくっていると。


「レイナ……私も応援してるから」


 一人だけ、蚊帳の外にいたノーラがボソリと呟く――清楚な感じのノーラは、身体付きは至って普通で。胸とかヒップもレイナが安心できるサイズだ。


 だから(・・・)、レイナも安心したせいか……思わず余計な事を言ってしまう。


「ノーラ、ありがとう! 私もノーラとギルとの事は応援してるから!」


「……え?」


 この瞬間、ノーラが沸騰する。


 ギルに対する淡い想いをノーラは抱いているが……今の今まで、自覚していなかったのだ。


「ご、ごめん、ノーラ! 今言った事は全部忘れて!」


 レイナは慌てて言うが――


「む、無理……えっと、アレ? (ブクブクブク……)」


「ノーラ!」


 湯船に沈むノーラを、レイナが抱き上げる。


「ノーラ……しっかりして!」


「まあ、身体の方は問題無いだろう……心の方は加害者のレイナが上手くフォローしてくれ」


 念の為に回復魔法を掛けながら、エストが可愛らしい生き物を見るような顔をする。


「ええ、勿論するわ……みんな、お願い! ノーラが気がついたら、ギルの話は知らないフリをしてくれないかしら?」


「それは構わないけれど……」


 ローズの言葉に、エストとエマも微妙な顔で頷く。


「でも、そんな事をしたって……今さらじゃない? ノーラが意識したら、周りにバレバレだと思うわよ」


 アリスが揶揄からかうように笑う――レイナは自分が引き起こした新たな問題に気づいて、頭を抱える事になった。


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