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277 危険な晩餐(2)


 食事が粗方終わると――ようやく場も落ち着いて、まったりとした時間になる。


 勿論、二人の魔神と一緒にいるのだから、アランたちの緊張が完全に解けた訳ではないが……カイエと一緒にいると、魔神たちも普通の魔族のように見えた。


「ところで、カイエ……『ラウクレナの禁書庫』は、何処まで攻略したのよ?」


 レイナは赤い顔でワインのグラスを空ける――『あーん合戦』に参戦したレイナは、ローズのサポートもあって、それなりの戦果に満足していた。


「何処までって……全部攻略したけど」


 しれっと応えた言葉の意味が、レイナは一瞬解らなかったが――


「……えー! 全部攻略しちゃったの? 地下迷宮の主(ダンジョンマスター)まで?」


「そうだけど。まあ、そこまで難易度(レベル)が高い地下迷宮(ダンジョン)じゃなかったからな」


 レイナたちと別れた後――カイエとローズは加速(ブースト)飛行魔法(フライ)を多重発動して『ラウクレナの禁書庫』を一気に駆け抜けた。レイナたちが苦戦した怪物モンスターたちも、二人にとっては当然のように、障害物にすらなり得なかった。


「『ラウクレナの禁書庫』は表が三十階層で、裏が十階層だったよ。特に裏の方は、期待してたほど面白く無かったな。難易度(レベル)的には……上位ハイレベルだけど、最上位トップレベルと呼ぶのは無理があるくらいかな」


 地下迷宮の主(ダンジョンマスター)の部屋以外は、ロザリーの地下迷宮(ダンジョン)に近い難易度(レベル)というところだ。


「カイエとローズなら当然」


「まあ、そうだろうな……こいつらに掛かっちゃ、並みの地下迷宮の主(ダンジョンマスター)程度じゃ相手にもならねえだろう」


 ディスティとヴェロニカが当然という顔をするのは、何となく解るが。


「そうだよね……カイエは初めから『攻略する』って言ってたしね」


 トールが全然驚いていないのには、レイナは納得出来なかった。


「トール……あんたは、また『カイエだから仕方がない』の一言で終わらせるつもり? そういうのは、思考停止って言うのよ」


「うーん……でも、僕が考えたって解る筈がないし。僕は僕に出来る事を一生懸命やるだけかな」


 トールには解っているのだ――まずは自分の足元を固めるのが先だと。カイエのやる事なんて理解出来る筈がないから、そんな事よりも出来る範囲の事を考える。


「まあ……トールのそういうところ、俺は嫌いじゃないけどな」


「うん。僕もカイエの適当なところも嫌いじゃないよ」


 トールは男にしては、珍しくカイエとの距離が近い。それに嫉妬している事に、レイナは気づいていなかったが……


(僕まで巻き込まないで欲しいけど……まあ、レイナのためだから。ちょっとは協力するけどね)


 トールの方はしっかり気づいていて。さりげなくレイナの肩を押している――カイエにはバレバレだが。


「まあ、ロザリー……俺の愛人の一人が、こっちに来るときの布石にはなったから。俺としては構わないんだけどな」


 今のロザリーなら――物足りないかも知れないが。ロザリーの下僕となる怪物モンスターたちは、これで用意が出来た。


「そうね。ロザリーが来たら……ディスティとヴェロニカに、どんな反応をするかな?」


 まあ、只事では済まないと思うが――


「それよりも……エストたちの方が先に来るだろう?」


 エスト、アリス、エマ……あの三人なら、自分たちのやり方でディスティとヴェロニカを納得させると思う。


「ふーん……そのロザリーって子も、カイエにとっては私よりも大切なんでしょ?」


 酔っぱらったレイナが執拗に絡んで来る。


「もう……地下迷宮(ダンジョン)を攻略しちゃったら。一緒に潜れないじゃないの……」


 自分たちだけで『ラウクレナの禁書庫』を攻略してしまったカイエに、レイナはふまんをいうが。


「レイナ……おまえ、何言ってんだよ? 一度攻略したからって、一緒に潜らないとは言ってないだろ?」


 勝手に勘違いしているレイナに、カイエは揶揄からかうような笑みを浮かべる。


「え……そうなの?」


 レイナの顔は驚きから……歓喜の色に一瞬で変わる。


「もう、レイナったら……」


 そんなレイナを眺めながら、ローズが優しく微笑む。


「ねえ、レイナ。もし良かったら……私とカイエと『暁の光』のみんなで、『ラウクレナの禁書庫』に行かない?」


「え……良いの、ローズ? だって、ローズは……カイエと二人きりになりたいでしょ?」


 レイナは遠慮がちに言うが。


「うん、そうだけど……カイエと二人きりの地下迷宮(ダンジョン)は、もう楽しんだし。今度は、レイナたちと一緒に潜りたいな」


 ローズは思う……一生懸命なレイナの事も応援したいと。


「まあ、良いんじゃないか……もう暫くは、時間があると思うし」


 ローズが優しげに笑うから――カイエも文句など言う筈がなかった。


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