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258 これからの事


 一通り料理のコースが終わるまで、ディスティニーとレイナの『あーん』合戦が繰り広げられて――結局カイエは、最後まで付き合うハメになった。


 最高の料理と酒をレイナ以外の『暁の光』のメンバーはすっかり堪能し、ログナも満足したようだが――


(もう……カイエはどこまで化け物なのよ……凄過ぎて◯れちゃったじゃない……)


 『暴風の魔神』ディスティニーに『あーん』とされながらも平然と振る舞うカイエに、アルメラはハアハアして料理など眼中になかった。


「それで、これから先の事なんだけどさ……」


 カイエの言葉に皆が視線を集める。


「俺はディスティニーとシュバルツア皇国――『鮮血の魔神』のところに行くつもりだけけど。おまえたちは、どうする?」


 シュバルツア皇国はビアレス魔道国と隣接しており、行き先としては妥当だが――


「なんで、この……暴風の魔神様が、カイエと一緒に行くのよ?」


 今度はディスティニーに睨まれるまえに、レイナは無難な呼び方をする。


「ディスティニーは『鮮血の魔神』と仲が良いから、仲介をして貰う事にしたんだよ。『鮮血の魔神』は……結構面倒臭い奴だからな」


 カイエは意味深な笑みを浮かべる。


「仲が良いのとは違う……『鮮血の魔神』は私の舎弟」


 ディスティニーはクスリと笑う。


 魔神同士は同盟を結んでいる訳ではなく、共闘しているとすら言い難い。互いに不可侵条約を結んでいるだけというのが、妥当なところが――そんな相手を、ディスティニーは『舎弟』呼ばわりりする。


「ああ、それはどっちでも良いけどさ……アランたちは一緒に来るのか?」


 カイエは『舎弟』の件を無視(スルー)して、話を進める。


 ログナとアルメラには訊くまでもないが、『暁の光』はこのままカイエに同行するつもりなのか――レイナではなくアランを指名したのには、当然意味があった。


「カイエ、俺も考えていたんだが……このままカイエと同行しても、俺たちじゃ何の役にも立たない。だったら、そろそろ潮時にして……『暁の光』本来の活動に戻るべきだろうって」


 アランの言葉にギル、トール、ノーラ、ガイナが頷く。


「ちょっと、待ってよ! そんな話、私は全然聞いてないから!」


 レイナは文句を言うが。


「レイナ……おまえだって、本当は解っているだろう?」


 アランに諭されて――レイナは俯く。自分じゃ、カイエの役に立てない……そんな事は初めから解っていた!


「レイナ……わ、私にも貴方の気持ちは解るわ……」


 普段は引っ込み思案のノーラがボソボソ言いながら、懸命にレイナを慰めようとする。


「その……何だ……レイナは頑張ったって俺も思うぞ」


 熱血魔術士のギルが眼鏡の位置を直しながら、自分でも柄じゃないと思う台詞を吐いた。


「僕もレイナの事を応援してるけど……僕たちにだってレイナは必要なんだよ。だから、ゴメン……今のところは、カイエに付いて行くのを諦めて貰えないかな?」


 気遣い上手なホビットの盗賊トールが、レイナのために言い訳を用意する(・・・・・・・・)


 ここまでされたら――レイナも認めざるを得なかった。


「もう……解ったわよ。私は『暁の光』のみんなと一緒に行くわ。だから、カイエ……ここからは、私はあんたと一緒に行けない」


 母親譲りの榛色はしばみいろの瞳が、決意を込めてカイエを見つめるが――


「おまえらさあ……大袈裟なんだよ? 確かに、俺は魔神や神の化身たちに用があるけどさ……それだけやるなんて言ってないだろ? 俺は地下迷宮ダンジョン好きだからさ……今度潜るときも、また一緒に付き合ってくれよな?」


 カイエはおもむろにレイナの右手を掴むと――その指に指輪を嵌める。


「え……」


 頬を赤く染めるレイナに。


「いや、勘違いするなって……この指輪は、おまえたちの居場所を知るためのマジックアイテムだ。対魔法障壁アンチマジックシールドを無効化する効果もあるから、こいつを嵌めれば大抵の場所から俺に『伝言(メッセージ)』も送れるよ」


 カイエとレイナは、互いを『伝言(メッセージ)』の相手先としてすでに登録していた。だから、レイナはこの指輪を嵌めていれば、いつでも何処でもカイエに言葉(想い)を伝える事が出来るのだ。


「カイエ……解ったわ。私は『暁の光』で頑張るから……」


 レイナは涙を堪えながら、ニッコリと笑う――こうして、とりあえず。『暁の光』とカイエの旅は、ひとまず幕を閉じた。


「カイエ、その指輪……私も欲しい」


 良い感じで終わった筈なのに――ディスティニーが空気を読まずに、ジト目を向けて来る。


「いや、おまえは自分で出来るから必要ないだろ?」


「でも……カイエが本気で隠れたら、私にも探せない」


 今度はディスティニーがシュンとするが――それは事実であり。カイエは少女のスカイブルーの髪をわしゃわしゃと撫でて、『止めて……』と抗議する彼女に意地の悪い笑みを浮かべる。


「指輪を嵌めてたって同じ事だろ……おまえが本気なら(・・・・)、そのうち俺を見つけられるくらいには鍛えてやるよ」


「うん……カイエ、お願い……」


 こうして、カイエ・ラクシエルと『暁の光』は――別々に行動する事になったが。再び彼らが一緒に行動するのは……レイナが想像していたよりも、ずっと早いタイミングだった。


※ ※ ※ ※


「へえー……ここがシュバルツア皇国の皇都か」


 ディスティニーの転移魔法で一瞬で移動して――彼女とカイエ、ログナとアルメラの四人は『鮮血の魔神』が支配する国の中心部に降り立つ。


 皇都ヴァルサレクに来てすぐに目につくのは、そこら中にいる闘士《グラジエータ―》たち……


 皇都ヴァルサレクには、十を超える闘技場コロシアムが存在する。その全てにおける不文律は――相手を殺す事が、唯一の勝利条件だという事だ。


 そして皇都の中心――『鮮血の魔神』の居城には、この国最高峰の闘技場コロシアムがあった。


 

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