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233 意外な組み合わせ


 その日の夕方、カイエたちは約束通りにアリウスたちがいる遺跡に戻って来た。


 予告はされていたが、魔法装置のある部屋へと直接転移で現れた彼らに、アリウスとルーシェは驚くが――驚いた理由は、魔法のせいだけではなかった。


「初めまして、エスト・ラクシエルです」


「アリス・ラクシエルよ」


「エマ・ラクシエルです……ローズのお父さん、お母さん、よろしくね」


 ここまでは予想していたが――人数が三人・・多い上に、一人は幼女で、一人はどう見ても魔族だった。


「初めまして、ローズさんのお父様・お母様……あたしはロザリー・シャルロット。ロザリーちゃんって、呼んで構わないのよ」


「僕はメリッサ・メルヴィン。ガルナッシュ連邦国の第一氏族長ジャスティン・メルヴィンの娘です」


「な、なあ、カイエ君……ま、まさか、この二人もカイエ君の……」


「いやいや、さすがにロザリーはないだろ? ロザリーとメリッサは仲間だよ。俺たちのパーティーの恒久的なメンバーってところかな」


 カイエは否定するが。


「ああ、今はそうだね……将来的には、僕もローズたちと同じようになりたいけど……」


「ロザリーちゃんは……その、カイエ様の……」


 恥ずかしそうに頬を染める頬を染める二人に――アリウスがジト目になる。


「カイエ君、お盛んなのは悪い事じゃないけど……ローズの事は幸せにしてあげてね。あと……幼女はちょっと……」


 色々と妄想して赤くなるルーシェに。


「いや、だから……」


 迷宮の主(ダンジョンマスター)のロザリーは、この見た目だが数百歳だと説明しようかと思ったが。話が余計にややこしくなりそうなので止めておく。


「ところで、カイエ君……そちらの女性は?」


 ジト目のままのアリウスが、まだ一人だけ挨拶をしていない者を促す。


 光沢のある白い髪と、磁器のように滑らかな肌――彼女はふむふむと頷きながら、さっそく魔法装置を調べていた。


「カイエ、貴様が言ったように、なかなか面白い装置だな……ああ、挨拶がまだだったな。我はアルジャルス・ヴェルドナギア。アリウス・リヒテンバーグに、ルーシェリット・リヒテンバーグよ。元使徒であるおまえたちの事は、我も存じておるぞ」


 不遜な態度で言い放つアルジャルスに――アリエスとルーシェは本能的に、彼女が本物の神聖竜であるである事に気づく。


「神聖竜様……大変失礼しました!」


「申し訳ございません、光の神の化身よ!」


 片膝を突いて頭を下げる二人に、アルジャルスは面白くない顔をする。


「なんだ、カイエ……我が来ることを、この者たちに伝えておらんのか?」


「ああ、ごめんね、アルジャルス……昨日の時点で、アルジャルスが来てくれるとは思わなかったから。お父さんとお母さんには伝えていなかったのよ」


 神聖竜にタメ口で話すローズに、アリウスとルーシェは顔を見合わせて、咎めようとするが。


「ローズは我が友(マブダチ)だ……一緒に来たカイエ以外(・・・・・)の者たちもな。だから、無粋な事を言うでない」


 アルジャルスに釘を刺される。


(いや、そんな事よりも……)


 自分は大きな勘違いをしていたのではないかと、アリウスは不安に思う。確かにローズは自分たちの娘だが、神聖竜が我が友(マブダチ)友と認める彼女たちは遥か高みに登った存在であり、気安く話し掛けて良い相手ではないのかと――


「そんなに難しく考えるなよ。アルジャルスは地下迷宮ダンジョンに引き籠もる寂しい奴だから、友達が欲しかっただけだ」

 

 『カイエ、聞こえておるぞ』と睨むアルジャルスの視線を受け流して、カイエはアリウスの肩を叩く。


「堅苦しい態度とか、そんなの似合わないだろ……アリウスさんは拳で語れば良い」


「カイエ君……ああ、そうだったな!」


 面倒なスイッチを入れてしまった気もするが、復活したアリウスにルーシェが嬉しそうな顔をしているので良しとする。

 本音を言えば、彼らのアルジャルスに対する態度が、自分に対するモノと余りにも違う事に何となく釈然としなかったが。態度を変えて欲しくはないので、そんな事は口にしなかった。


「なあ、セリカ……何も考えてないおまえって、実は凄い奴かもな」


 セリカだけは――アルジャルスの事もローズたちの事も、騒がしい連中がやって来たというくらいにしか思っていないようで。アルジャルスに恐縮するアリウスとルーシェの隣で欠伸をしていた。


「やっぱり……あんたは私の事馬鹿にしてるでしょ! 目障りだから、消えてくれる!」


 セリカは頬を膨らませて、プイと横を向くが……今回は天敵がいた。


「そこの出来損ない……カイエ様に、随分な口を利くじゃないの?」


 ゴスロリ幼女が極寒の視線を向ける――地下迷宮の主(ダンジョンマスター)である彼女は、セリカが魔法生物であることも、彼女の身体に魔神の魂の欠片が埋まっている事も一瞬で見抜いていた。


「このロザリーちゃんが、おまえのような愚かな出来損ないに鉄槌を――」


「うわあ、何この子……メチャメチャ可愛い!」


 台詞を言い終える前に、ロザリーはセリカの胸に抱きしめられていた。


(な……カイエ様……)


 ロザリーならセリカの襲撃を避ける事など簡単だったが、『ロザリーなら、こいつの面倒くらい見てくれるよな?』とカイエが視線で語っていたので、抵抗しなかったのだ。


「あ、あの……止めて貰えるかしら? ロザリーちゃんには、そんな趣味はないのよ!」


「え……何それ? 小さい子なのに大人ぶって……やっぱ、メチャクチャ可愛い!」


「なあ、セリカ……こいつはロザリーだ。まあ、可愛い奴だから……よろしく頼むよ」


 カイエの『可愛い』の一言に、ロザリーは一瞬で沸騰する。

 それを見たセリカが、キャーキャー言いながらギュッと抱きしめるので――本気で嫌そうなロザリーに、カイエは少しだけ罪悪感を覚えた。


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