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231 遺跡の証拠


 こうなるとセリカの正体よりも、神の化身と魔神が異世界に消えた証拠の方が気になったが――『おまえのことは、もう後回しで良いや』なんて言うとまた不貞腐れそうだから、先にセリカが眠っていたという部屋に向かった。


 カイエとて遺跡の全てを鮮明に記憶している訳ではないが。アリウスが案内した区画そのものが、カイエが訪れた当時には存在しなかったことは明白だった。何しろその区画だけは金属ではなく、石で造られていたのだから。


 セリカが眠っていたという部屋は、壁も床も天井も白い石で造られており、イメージとしては地下迷宮ダンジョンの玄室という感じだ。

 部屋の中央に置かれた棺だけが、金属の土台とクリスタルのシェルで創られており――他のモノとは明らかに違和感があった。


(原始の遺物……いや、そうじゃないな。遺物を模して創ったってところか?)


 魔力を見る事が出来る目で、カイエは棺の構造を分析する。棺そのものは封印を目的としたマジックアイテムであり、結界や時間停止の魔法を発動させる魔法技術マナアート回路・・が組み込まれていた。


 カイエなら同じものを創れるが――少なくとも、今の時代の人族や魔族の技術レベルではない。


「棺の仕組みは解ったけど……セリカの正体に関係するようなものは何もないな」


「お、おい……カイエ君には、この棺がどういうモノか解るのか?」


「ああ、最上位魔法を複合的に発動できるマジックアイテムだ。時間さえあれば、俺でも同じものを創れるよ」


「……マジか?」


 別にそこまで説明する必要は無かったが、アリウスのドヤ顔がムカついていたので一発かましておく。


「じゃあ、次は……神の化身と魔神が消えた証拠だな。アリウスさん、早く案内してくれよ?」


「……ああ、そうだな。こっちの方は……きっとカイエ君も驚くぞ!」


 再びドヤ顔をするアリウスに苦笑すると、石造りの区画の奥へと向かう。

 距離的には五百メートルというところか。石造りの区画の一番奥に、その部屋はあった。


「なるほどね……確かに面白いな」


 その巨大な部屋には床一面に魔法陣――正確に言えば魔法回路が刻まれており。奥の壁には天井と同じ高さの金属の扉があった。カイエの目には、両開きの扉の内部にも複数の魔法回路が組み込まれているのが見える。


「なあ、カイエ君……さすがに君でも驚いただろう? こっちに来てくれ、石板に当時の記録が古代文字で刻まれているから」


 扉の横の壁の一部が石板になっており、確かに古代文字で何かが書かれている。


「ああ、ここに書かれているのは……」


「この扉の向こう側は別の世界があり、我らの神の化身と魔神がそこにいるか……でもこれだけじゃ、証拠とは言えないな?」


 古代文字を普通に読むカイエに、アリウスは唖然とするが。俺が眠る前の時代の文字だから読めるのは当たり前だろうと、カイエは気にも止めなかった。


「ちょっと待てよ……そういう事か」


 カイエが石板に触れると石板全体が輝いて――外れた石板の裏に、複数の金属板が隠されていた。


「え……カイエ君、今何をしたの?」


「ああ、魔力を加えると外れる仕組みになっていたから」


「でも……私たちだって、感知魔法で入念に調べたわよ?」


「いや、直接魔力を操作して鍵を開ける感じなんだよ……悪いなルーシェさん、今度ゆっくり説明するから」


 ルーシェに断って、カイエは金属板の方に集中する。内容的には扉と魔法回路に関する技術的な説明と、石板に書かれていた当時の状況を補足するものだった。


「わざわざ、こんなものを残したって事は……一番可能性が高いのは、自分たちが失敗した場合の保険か? だけど、この程度の情報で何が出来る訳でもないし……」


 完全に一人の世界に入ってしまったカイエに、案内役の筈だったアリウスとルーシェは呆然としている。


「お父さんも、お母さんも諦めた方が良いわよ……カイエは千年以上も生きてるし、魔法の事だってエストの先生をしてるくらいだから」


「ああ、そうか。カイエ君は魔神だからな……いや、俺たちは『カイエ君』だなんて気安く呼んで良かったのか?」


「何を今さら……カイエは気にしないから、全然問題ないわよ」


 ローズ親子が話をしている傍らで、カイエは一人で魔法陣と扉を調べて回る。途中で呆けた顔をしているセリカと目が合うが。その瞬間、彼女は頬を膨らませてプイと横を向いた。


「あのさあ、ルーシェさん……こいつの相手をしてやってくれよ? 邪魔……暇してるみたいだからさ」


「……今、完全に邪魔って言ったわよね?」


「そんな事ないって……セリカは良い子だから、向こうに行ってくれるよな?」


「……ホント、あんたムカつく!」


 一通り調べ終わると、カイエは金属の扉の前に立つ。


「仕組みは大体解ったけど……俺も異世界に行く魔法なんて試した事ないからな。発動させてみるのが手っ取り早いんだが……」


 実験したこともない魔法を発動させたら、何が起きるか解ったモノではないし。仮に普通に異世界に移動できたとしても、そこに神の化身と魔神がいるのかどうかは別の話なのだ――神の化身と魔神がこの世界から消えたという証拠は、結局どこにもない。


「まあ……試すにしても、もう少し研究してからだな。セリカの正体は大体解ったし《・・・・・・・・・・・・・》、今日のところはこれくらいで良いか」


「え……カイエ君、今なんて言ったの?」


 真っ先に反応したのはルーシェで、続いてアリウスが気づいて唖然としている。


「いや、だからセリカの正体に見当がついたって言ったんだよ」


「……マジか?」


「カイエ君……その話、詳しく教えて貰える?」


 アリウスとルーシェは喰いついて来るが、とうのセリカは――


「……へ?」


 呆けた顔で、全然状況を理解していなかった。



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