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190/345

190 明日は……


 ガルナッシュ連邦国と聖王国に、それぞれ第一弾として入国させる者たちの人選も粗方終わって――その日の夜、カイエたちは黒鉄の塔最上階のダイニングキッチンで、夕食を取ることにした。


「今日は、俺が夕飯を作るからさ……おまえたちは、ゆっくりしてろよな?」


 久々のカイエの料理は、新鮮な魚介類とローストした牛肉を使ったコースで……最後の極上のスイーツまで堪能した六人の女子は、夢心地な感じだった。


「僕は……カイエの料理を、初めて食べたけど。もう、身も心も……トロけちゃう感じだよ!」


 幸せそうに両手を頬を押さえて、身体をクネクネと捩らせるメリッサに――ロザリーはフンと鼻を鳴らす。


「メリッサは、何を言っているのかしら……まだまだ甘いのよ。カイエ様のお料理が美味しいのは当然なのよ!」


「うん……そうだよね、僕も解ったよ!」


「ムッキー! メリッサのくせに解った口を利いて……生意気ですのよ!」


「おまえら、騒ぐのは構わないけどさ……もう少し落ち着けよ」


 じゃれ合う二人を横目に、カイエがキッチンから出て来ると――


「カイエ、今日の料理は……物凄く美味しくて、私幸せよ!」

「ああ、そうだな。カイエの……あ、愛情を……た、沢山感じる……」

「もう、エストは……途中から恥ずかしがるとか、そろそろ止めない?」

「そうだよね、もうエストは……でも、本当に美味しかったよ! カイエ、大好き!」


 当然のように抱きついて来る四人のメインヒロインに苦笑しながら。近頃暴走気味のメリッサと、澄まし顔のロザリーの頭を優しく撫でる。


「カ、カイエ様、何を……」


「カイエ、そういうのはズルいけど……僕としては、嬉しいかな……」


 彼女たちは恍惚の表情を浮かべるが――


「なあ、みんな……とりあえずガルナッシュの件も、聖王国の件も一応は段取りをつけたけど。本番はこれからだし、同時並行で進める訳だから、これからもっと忙しくなると思う。だからさ……そろそろ俺たちも、個別に行動した方が良いと思うんだ」


 唐突なカイエの発言に……空気が一瞬で凍り付く。


「それって……もしかして、カイエは……」

「私のことを、邪魔だと……」

「酷いよ、カイエ……」

「へえー……そうなの? カイエ、私を捨てるとか……許さないんだけど?」


 そして、ロザリーとメリッサまでも――


「カ、カイエ様は……ロザリーちゃんを……」

「僕は……みんなみたいに、カイエの役には立てないけど……」


 涙目で袖を掴むが……


「おまえらさ……わざと、やってるだろ? 俺にとって、おまえたちは特別なんだよ。だから……簡単に手放す筈なんて無いだろ」


 少し不機嫌な感じで、真顔で宣言されて――


「「「「「「ごめん(なさい)、カイエ(様)!!!」」」」」」


 キュンキュンという感じで……胸が高鳴っている彼女たちにカイエは告げる。


「話を戻すけどさ……話は最後まで聞けって。みんなが別々に行動しても、夜は一緒にいようって思ってるから。そのために――『転移の指輪』を改良したんだ」


 カイエがテーブルに置いたのは……六人分のアーティファクトだった。


「今度の『転移の指輪』には、登録マーキング機能も追加したから。世界中の何処にいたって、おまえたちなら余裕で黒鉄の塔に帰って来れるだろう?」


 転移魔法を自前で使えるのは、カイエ・エスト・ロザリーの三人だけだが。魔力量だけなら、他のメンバーも転移魔法を発動させる事など余裕だった。


「夜の時間だけは……一緒に過ごすつもりだけど。それじゃあ……おまえたちは不満なのかよ?」


 意地悪く笑うカイエに――つまり、これは……熱い夜を一緒に過ごすという宣言だと解釈して。彼女たちは……誰も文句を言えなかった。

 

「それにさ……このところ、おまえたちには頑張って貰ったし。ガルナッシュの件も聖王国の件も。入国する奴らは船を使うから、少なくとも一ヶ月以上は時間が掛かる訳だから……それまでの間に、俺たちが少しくらい遊んでも問題ないだろ? 例えばさ……常夏の島の地下迷宮ダンジョンに行くとか?」


 カイエの甘い囁きに、五人の美少女と美幼女が否定できる訳もなく――


「「「「「「うん(ああ)……解った(よ)(わよ)!!!」」」」」」」


 嬉々として応える彼女たちを……カイエは挑発するように笑う。


「それじゃあ……決まりだな。おまえらの可愛い格好とか、綺麗だとか……俺はメチャクチャ期待してるからな?」


「「「「「「うん(ああ)、カイエ……期待して(よ)(くれ)(欲しいのよ)!!!」」」」」」」


 という事で――物語は久々のリゾートと地下迷宮ダンジョン編に突入します。



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