表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

142/345

142 ダンジョンマスターたちの邂逅


 ロザリーがアルジャルスに会いたいと言った理由は――


『光の神の化身と同じ名前を騙るダンジョンマスターですって……生意気ですわね。このロザリーちゃんが支配してあげるから、覚悟しておきない!』


 などという邪なもので。『ギャロウグラスの三重地下迷宮(トリプルダンジョン)』という実質的には最難関級(トップクラス)のダンジョンマスターである自分の方が強い筈だと、余裕綽々だった訳だが――


「……うむ? そやつはダンジョンマスターの端くれには違いないようだが?」


 アルペリオ大迷宮を三度訪れたカイエたちを、アルジャルスは人の姿となって、地下迷宮(ダンジョン)の外まで出て来て出迎えた。

 また最下層への入口を探し回ることを覚悟していたカイエは、拍子抜けする。


「おまえなあ……これまでと、態度が違い過ぎないか?」


「何を言っておるのだカイエ……我は相手に相応しい出迎え方を、選択したのだ」


「久しぶりね、アルジャルス……会いたかったわ!」


「本当に……私だって、そう思っているんだ」


 ローズとエストの心からの言葉に――白い髪の女の姿で、アルジャルスはデレる。


「そんな恥ずかしい台詞を……勇者と賢者が言うものではない!」


「あら? 私だってアルジャルスに……ずっと会いたいって、思っていたんだから」


「うん、そうだよね……なんか、ただいまって感じだよ」


 アリスとエマにトドメを刺されて――神聖竜の威厳も形無しだった。


「……まあ、良いけどさ。今日はとりあえず……人外の情報網(ネットワーク)に新しく加わったロザリーが、おまえに直接会いたいって言うから連れて来た」


 ロザリーの思惑を見透かしているカイエは、意地悪く笑うが――当人には、そんな言葉など、もはや聞こえていない。


「……う、嘘なのよ……光の神の化身が……ダンジョンマスターだなんて……」


 ロザリーの呟きに――ああ、そんなことかと、アルジャルスは詰まらなそうな顔をする。


「我はかつてダンジョンマスターを喰らった……それだけの話だ。それよりも、貴様は何を驚いておるのだ? 真に驚愕すべきは……我の地下迷宮(ダンジョン)を見てからであろう?」


 そしてアルジャルスは、彼女の住処である隔離された真の最下層へと、カイエたちを招き入れる。

 そこに現れたたのは――数ヶ月前、ローズたちが戦ったラスボスクラスの怪物(モンスター)を、さらに強化した凶悪な面子だった。


「おまえたちも……それなりに強くなったからな。次に来たときに退屈せぬように、少し頑張ったのだ!」


 照れ臭そうにアルジャルスは言うが――現れた怪物(モンスター)の全てがラスボスどころか、他の最難関級(トップクラス)なら、攻略後の隠し階層の裏ボスクラスで……魔王を倒した時点ならローズたち全員で掛かっても、瞬殺されるレベルだった。


「おまえなあ……さすがに、やり過ぎなんだよ。俺たち以外の誰が、こんな地下迷宮(ダンジョン)を攻略できるって言うんだ?」


「どうせ、他に辿り着ける者などおらぬわ。だから、全く問題などない!」


 豪語するアルジャルスにカイエは呆れる傍らで――ロザリーは完全に怯えていた。


 ギャロウグラスの三重地下迷宮(トリプルダンジョン)で、カイエに逆襲するために用意していたラスボス究極の(アルティメット)創造と破壊の化身(クリエイター)すら……ここの怪物モンスターに比べられてしまえばザコというレベルなのだ。


「あの、その……大変失礼致しましたわ、光の神の化身アルジャルス様……いえ、最強のダンジョンマスター閣下! あたしも、一応ダンジョンマスターですが……主な仕事は、カイエ様の下僕ですの。だから、ロザリーちゃんに手を出せばカイエ様が……」


 ロザリーは邪悪な目を隠して――カイエの背中に隠れる。

 強者に対して虚勢を張るほど、ロザリーは愚かではなく……その代わりにカイエを盾にして、虎の威を借りるつもりなのだ。


「おい、ロザリー……おまえ、アルジャルスに喧嘩を売るとか、良い度胸をしてるよな?」


 カイエは意地の悪く笑うと、瞬間移動でロザリーから離れる。


「な、何を言ってるんですの、カイエ様? あたしは喧嘩なんて……そうですわ! カイエ様のためなら、たとえ、この身が滅びようとも……」


「おい、黙れ……そんな台詞、俺が信じると思うか?」


 ロザリーの茶番に、カイエはうんざりした顔をするが――


「ロザリー、頑張って! カイエなら、きっと助けてくれるよ!」


「まあ……カイエだからね。最終的には、どうにかするんじゃない?」


 エマが熱く、アリスが面倒臭そうに応援する中、


「カイエ……こやつは、いったい何を考えておるのだ? 何と言うべきか……ある意味では、興味深くはあるがな!」


 アルジャルスまで、こんなことを言い始めたものだから。カイエは頬を引きつらせて、ロザリーを見据える。


「な……なんですの? カ、カイエ様。私は何も……」


 目を逸らすロザリーに、


「……あのさあ、ロザリー? してやったとか、おまえは思ってるだろうけど……そんなに俺は甘くないって、解ってるよな?」


 冷徹な光を放つ漆黒の瞳に見据えられて――まるで自分が小動物になったかのように、ロザリーは人生最大の危機感を懐いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ