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114 冗談でしょ?


「やあ、アイシャ! 来ちゃったよ!」


 シルベーヌ侯爵の居城に到着すると――中庭を駆けて来たのは金色のショートカットの少女。

 大きな青い目に歓喜の感情を溢れさせて、アイシャはエマの胸に飛び込んだ。


「……エミーお姉様! 会いたかったわ!」


 感動の再会……という感じを醸し出しているが、前回会ってから四ヶ月ほどしか経っていない。


「おまえらさあ……仲が良いのは解るけど。ちょっと大袈裟過ぎないか?」


 カイエの揶揄からかうような笑みに気づくと――アイシャは頬をピンクに染める。

「カ、カイエさんも……そのう、お久しぶりです……」


 ニヘッと恥ずかしそうに微笑むのは――揶揄からかわれた事だけが理由じゃない。

 その証拠に……アイシャはエマと抱き合いながらも、その視線はカイエに釘付けになっていた。


「いくらアイシャでも……駄目だからね!」


 不意の声に、アイシャが視線を戻すと――エマは悪戯っぽい笑みを浮かべていた。


「カイエの事は……絶対に譲らないからね。それでもアイシャが頑張るなら……受けて立つよ」


「え……あの……エミーお姉様?」


 顔を真っ赤にするアイシャに――


「そうそう。アイシャが一生懸命なら、応援はしてあげるけど……私がカイエを好きな気持ちは、絶対に誰にも負けないから」


「ああ、私だって……その……カイエの事が一番……」


 カイエに腕を絡めて堂々と言い放つローズと、逆の腕を取って恥ずかしさに耐え切れないエスト。

 そしてアリスはカイエの背中から抱きついて、勝ち誇るように言う。


「アイシャが私たちに勝負を挑むのは……三、四年は早いわよね? あ、でも……カイエの○リコン疑惑は晴れてないから。もしかしたら、最大のライバルかも知れないわね……ねえ?」


 意地の悪い笑みを浮かべて、アリスはカイエの耳元に囁く。


「おまえらなあ……」


「貴様……貴殿たちは、アイシャ様の前で、いったい何をやっているんだ!」


 カイエの抗議の声を遮って、現われたのは――アーウィン・フェンテス。アイシャのもう一人の世話役であり……アイシャを溺愛する困った奴二号だ。


「よう、アーウィン、聞いてくれよ……こいつらが俺のことを、おまえと同じロ○コンだって言うんだよ」


「誰がロリ○ンだ、失礼な! 私はアイシャ様の事を……大切に思っているだけだ」


 あ、こいつ堂々とゲロりやがった――カイエが、エマが、そしてローズたち三人とアイシャ本人までがドン引きして、ジト目でアーウィンを見るが……


「何を言っているんだ、アーウィン! アイシャお嬢様を一番大切に思っているのは、この私だあ!」


 対抗心をメラメラと燃したクリスが『お嬢様ー!』と、アイシャに突撃していく。しかし――


 まるで王子様のようにエマは、アイシャを片手で抱き抱えると、聖剣ヴェルサンドラの切っ先でクリスの動きを止めた。


「ごめんね、クリス。でも、アイシャが嫌がっているから。それでも、まだやるつもりなら……私が相手になるけど?」


 最強の聖騎士が相手では――クリスに勝ち目はなかった。


「お、お嬢様……私はただ……」


「だから、クリスもアーウィンも……大人しくしなさい。私の大切な人たちの前で馬鹿なことをすると……本当に嫌いになるわよ」


 アイシャの言葉がトドメになり――二人の騎士は灰になった。


(へ……いったい何なんですの、この連中は???)


 ロザリーは一人だけ蚊帳の外だったが……目の前で繰り広げられた冗談みたいな光景に、目が点になっていた。


(こいつら……本物の馬鹿なの??? それとも……ロザリーちゃんが知らないだけで、人間って、みんなこんななの???)


 ロザリーは一抹の不安を抱えながら――ふと顔を上げると、本当に偶然にアイシャと目が合った。


 ほとんど身長も変わらない、見た目だけなら同年代の二人の少女――まさに正統派美少女という感じのアイシャに対して、小悪魔的可愛さに溢れるロザリー。タイプ的には全く異なっているのだが……


((あれ……もしかして、この子……ロザリーちゃん(私)とポジション被ってない?))


 二人の少女(?)は本能から――それを感じ取った。



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