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2-2.職人の才能

街の中心部に位置する広場にて、先程まで眠りこけていた剣神様が白炎の灯った松明を手に、騎士や冒険者達に向けて演説を行っている。


あの後、ようやく作戦が纏まり安心したのか、急激に眠気が襲って来たようで彼はそのまま椅子で眠ってしまった。


(流石に椅子で寝かせるのは……)


そう思い特別に私達のベッドに寝かせてあげたのだが、まあなんというかギャップが凄い。

剣神と呼ばれるほどの実力を持ち、どんな時にも紳士的で大人な印象を受ける彼も、眠っていると年相応の男の子であった。

そんな彼の寝顔を優と見ていれば「……杏子姉さん」などと言うものなのだから、私の母性はここぞとばかりにソーラン節を踊りだす。

……とは言っても男に興味は無いので、キュンとしたり謎の電撃が走ったりとかはしないのだが。


そうして結果的に数時間ほど彼に膝枕をして優とお喋りをしていたのだが、目を覚ました時の彼の反応と言えば……あれだけ良い反応をしてくれるのなら今後も偶にしてやらんこともないと思うくらいだった。


さて、そんな彼が今は騎士の顔に戻って演説を行なっている最中なのだが、なんとか優の出した白炎を彼の秘蔵の魔法物ということにして誤魔化してくれている。


作戦は単純明快。

松明に灯った白炎を大獅子の活動地域を中心にして広げ、弱っている所を街の腕自慢達が叩き、その隙にアイルが元凶を叩くというものだ。


この作戦の問題点は、

こちらも魔法を使えなくなること、

剣神アイルの支援が受けられないこと、

そして白炎自体が魔法を扱う者にとっては危険であるということだろう。


優が突然出したその白炎は、アイル曰くマナを燃料に燃えているらしく、マナやオドを扱う人間や生物に対して非常に凶悪な効果を発揮するらしい。

水によって消す事もできず、一度燃え移ってしまえばその部分を切り落とさなければ助からない。

魔法による攻撃や効果すら焼き喰らい、勢いを増していく。

しかし反面、マナやオドに関係のない物体や魔法を使わない生物にはその熱すらほぼ通らず、逆に魔法による毒や呪いだけを焼いてくれるという変わった一面も持っていた。


魔法を扱う者には毒より危険な害となり、魔法を扱えない者には何より手軽な益となる。

それは炎に感じる印象すら違うらしく、事実私はその白炎を非常に親しみのある温かなモノに感じたが、アイルにとっては冷たく悍ましい恐怖そのものと言える存在だったらしい。

実は今現在も、アイルはその松明を極力自分に近付けない様にしていたりもする。


そして、そんなこんなでこの炎、今回の作戦で非常に使える。

なにせ魔法の使えない純戦士達にとっては最高の武器となり、大獅子にとっては見ただけで逃げ出したくなるくらいの天敵となるからだ。

そしてこれがある限り、大獅子の咆哮の威力は激減する。


故に今回の作戦はアイル以外のほとんどの参加者が魔法を使わない純戦士であり、魔法使いは全くと言って良いほどに参加していない。


懸念すべきは白炎が想定以上に燃え広がらないことだが、この辺りは優自身がしっかり管理してくれるという。

マナ濃度を低く維持するための最低限の量の炎であれば4時間程度は保つことができるらしく、その辺りがタイムリミットになるだろう。


それではその4時間の間、私が何をしているのかと言うと……


「まさかこの淫ピの錬金術師の手伝いをさせられることになるとは」


「い、いんぴ……?よ、よく分かりませんが、今日はよろしくお願いします」


今回役目のない魔法使い達は、主に物資の支援を行う事になっている。

臨時で使うマナポーションと、不足が予想される回復ポーションを含めた支援物資を随時補給していく必要があるが、現状ではかなりの人手不足だという。

そこで器用さの高い私もこうして駆り出された訳だが、魔法の魔の字も知らない私なんかに務まるのか非常に心配である。


まあ手伝いとは言え、臨時で建てられたテントの下で白炎のコントロールに集中する優の側にいられるので文句は無いが、宿敵が居るとなれば話は別だ。

今この状況を利用して可能な限りこの錬金術師を観察する……!


「す、すごい……私のこと睨みつけながら調合を完璧にこなしてる……」


「バカにしてるのか?この程度のこと、慣れれば誰にだってできる」


「いや慣れてないですよね、今日が始めてですよね」


「社会人はな、時として人手不足とかなんとかで自分の管轄外の仕事を当然のように振られて、それでも並の成果を求められる理不尽に襲われることがある。それに比べればこの程度の単純作業、片手間で十分だ」


「いやあり得ないですから、片手間に本職の私と変わらない速度で調合する初心者とか意味分かりませんから」


「料理は得意だ」


「……あの、時間がもったいないので調合は全部任せちゃっていいですか?私はポーションにする方に回るので」


「構わない、おかしな真似はするなよ」


「私からすれば貴方の方が随分おかしな真似をしている様に見えるんですが……」


何を訳の分からないことを言っているのだろうか、やはりこの女には気をつけないといけないかもしれん。


(手元を見ないで調合なんて、かなり難しい事の筈なんだけどなぁ……)


恐ろしく張り詰めた空気の中、ポーションの作成は予定されていた2倍近い速度で進んでいった。


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