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1-7.剣神!好みのタイプはダメ女!?

刺すような日光が照り付けるこの街は、それでも街の真ん中に聳え立つ巨大樹の恩恵によって非常に過ごしやすい気候を保っている。

透き通る様な水が街を流れ、心地良い風が絶えず吹き、巨大樹の根から生える枝によって適度な日陰が作られる。

"13連続 住みたい街グランプリ1位"を獲得しているのは伊達ではない。

それでも、そんなことを知ったのはついつい先日で、外部に住んでいる者達よりも知識の少ない杏子は、自身の払っている宿代が他の街より3倍は高いということにすら気付かない。


「ふふ、こうしてアンズ姉さんと休日を過ごせるなんて僕は幸せ者ですね」


そしてこの爽やかな顔をした街一番の人気者はそれを決して教えない。

お金が足りなくなれば自分の家へ招待できると考えているからだ。

もちろん彼の斡旋した職は全て彼の家の管理下にある。

やましい下心があるのではない、純粋に"特別扱い"しているだけである。

その執着心が妙に重い気がしないこともないが、恐らくそれも気のせいだ。


「やれやれ、何を言ってるんだ……私こそ、民に大人気の騎士様に街の案内を頼めるなんてとっても光栄なんだが?」


「は、はは、視線に関しては我慢してもらうしか……」


「冗談だ、夕食まで奢ってもらえるのだから文句などない」


「そ、そんなこと一言も言ってないのですが……もちろん、奢らせていただきますけど」


優と昼食を食べた後、私(田原 杏子)は予定通りアイルにユグドラシルの街を案内して貰っていた。

まだ新参者の私としてはこの街を起点に活動している彼の案内は非常に助かり、かつ変な男が寄って来ないという最高の環境である。

加えて、多少の意地悪を言っても困った顔をしながら実は嬉しさが滲み出ていたりと、会話をしていて楽しい男性というのは私にとっては非常に新鮮で珍しかった。

彼に性的な下心が見えないというのもあるだろう。


……どうしたことか、元の世界での悪運を帳消しにするかの様に今は人に恵まれている。

それを最近になって強く感じるようになってきた。


「そういえば、優さんはどうなさったのですか?」


ふと気付いた様にそう言った彼に、私は苦虫を噛み潰したような顔をして答える。


「今日も仲良しの錬金術師の所に本借りに行ってる。せっかく夕食も一緒に食べようと思ったのに……」


「もしかしてあの変わり者錬金術師一家の所ですか?確かに、彼等なら魔法に関する書物も豊富に持っているでしょうね。

そういえばご両親が揃って旅に出てしまい、今は娘さんしか居なかった様な……」


「そうだな、『実験の手伝いをしてくれるなら本を貸してあげる』なんて条件を出されて毎日の様に通っている。実際にはお茶して勉強して試作品を貰って来るだけなんだけどな……」


「"癒しの錬金術師"を自称する一家ですし、危険は無いと思いますよ。一応、新型ポーションなどを開発した実績もありますし」


そんなことは分かっている。

なぜなら優が毎日貰ってくるその試作品とやらは、ことごとく高級な正規品と変わらない性能を持ち、中にはそれ以上の効果を発揮するおかしなものまであるのだから。

もはや試作品という名の援助に近い。

それだけその錬金術師の彼女が優のことを大切にしてくれているのだとも分かってしまう。


……そう、分かってしまうのだ。


「違う!私が気になってるのは優が『あのお家は落ち着く、身体が楽になる』とか言ってなかなか帰ってこないことだ!どういうことだ!?このままじゃ優があの桃色錬金術師に取られてしまうのだが!?」


そう、それが問題なのだ!


優が出かける頻度は日に日に増えていく。

酷い日には朝早くから夕方くらいまでずっと戻ってこない!

別に優は私のものだなんて思って……思ってるけれど!

けれど優と触れ合える時間が目に見えて減っていくのを黙って見過ごせるはずがあろうか!いやない!!


「なあ!あの家になにがあるんだ!?何をしているんだ!?もしかして中毒性のある薬とか使われていないだろうな!?」


「い、いやいや、まさかそんな。多分彼女の家で焚かれているお香が原因じゃないでしょうか?回復効果があるお香もありますので、陽の光の強いこの季節には彼女を癒してくれるのかと……」


「本当か!?それ本当なんだな!?どこに売っている!?箱買いするから案内してくれ!!」


「え、ええ、帰りに寄りましょう。今買うと荷物になりますから」


「そんなお香があるなんて知らなかった……!そんなのがあるって知ってれば直ぐに買って焚いてたのに……はっ!もしかして媚薬的なそーゆーお香もあるのでは!?そんなのをあの桃色錬金術師が焚いた日には……!だめ!だめだ!お姉さん的にそーゆーのは許さない!直ぐに確認しなければ!今直ぐ在庫があるか確認しなければ!あの癒しのいやらしい錬金術師なんかに優は絶対渡さない、あの子は私が養うんだ……!」


「………お香から見に行きましょうか」


その日の晩、同僚の男性に"あの女、大丈夫か?"と聞かれ、"なんというか、駄目な姉を見ている感覚で嫌ではない"とアイルが答えたことで、『剣神!好みのタイプはダメ女!?』という見出しで街が一瞬賑わったのはまた別の話である。


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