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3-7.人間に対して躊躇なく毒魔法を使う癒しの錬金術師がいるらしい


「……私が馬車を留めている間に、よく店主を蹴るなんて問題を引き起こせるもんですね。びっくりですよほんと」


「いや待て淫乱、私は悪くない。セクハラは死んでもいいと思ったものしかしてはいけないんだ、つまり奴はあの時点で死を覚悟していたはず」


「その通りだなアンズ。女の体について口にするなど打ち首拷問市中引き回し、その他諸々されても文句を言えない大罪だ」


「誰が淫乱ですか!……気持ちは分かりますけど過剰が過ぎます、少しは自分達の能力を考えて行動してください」


「そうだそうだ、こんなジジイに蹴り食らわすなんて言語道断だ。ところで錬金術師の嬢ちゃんは2人に比べて成長に乏しいな、これからに期待ってところ……」


「"ポイズン"」


「ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」


「「うわぁ……」」


死にかけの爺さんに笑顔でポイズンをかけるピンキーにドン引きしながら足を引く。


そういえば優が静かだなぁと思っていたら彼女はこれだけの騒ぎを前にしても、まだ私の腕の中で眠っていた。

凄く可愛くて守ってあげたくなるのだけど、最近はこうして眠っていることが多いのが少し気になる。

苦しんでいないので病気という訳ではないのだろうけど、ここは前の世界とは全く違う世界。

私の知らない何かがあってもおかしくないので、そろそろ少し心配になってきていた。


「優、優?起きれるか?もう着いてるぞ?」


「……ん、また寝てた……?」


「ああ、大丈夫か?最近よく寝ているが……」


「大丈夫、ちょっと眠いだけだから。降ろしていいよ……?」


そう言って彼女を降ろすと、まだ少しフラフラとしながら目を擦っていたので手を握って支えてあげる。

同時に彼女の頭で眠っていたミルクもあくびをしながら起きたようだった。

似たもの親子とはこう言うことを言うのか、愛らしい。


「……なあ、そっちの嬢ちゃん。もしかしてMP切れてんじゃねぇか?ほら、こっち来てみな」


「……MP?」


そう言ってフラフラとジジイの元へ向かう優を支えて歩く。

確かこの世界はマナやオドと言ったものが魔法の素となっていて、MPなんて概念は無かったと思うが……


「MPってのはワシが昔定義した、魔法を使うための要素を数値化したもんのことだ。魔法はマナやオドを使うが、もちろん唱える過程で術者の体力や精神力だって使ってる。それらを総合して出した値がMPだ。つまりこの嬢ちゃんは……ああ、やっぱ切れてやがる。限界まで魔法を使い切った状態になってんじゃねぇか」


「魔法を……?でも優くんはここに来るまで一回も魔法使ってないと思うんですけど……」


それはピンクの言う通りだ、優はここに来るまで魔法なんて一度も使っていない。

だからそのMPを切らす理由が無い。


「だがMP切れの兆候が出てんのは事実だしなぁ……仕方ねぇ、もう少しお前等で遊んどきたかったが仕事するか。ほら、鑑定してやっから金出せ、金。後の奴等はその辺の椅子に適当に座ってろ」


色々と殴りたくなる要素が一気に飛来して来たが、怒りを抑えて金を出す。

MP切れが命に関わるのかどうかは分からないが、良くないことに変わりはないだろうし……というか私の名誉などより優の健康の方が大事なのだ。

それを考えれば、ぶん殴る時間を遅らすことくらい造作もない。


「……で、これだけの金を積むってこたぁ、スキルだけじゃなく全部を鑑定するってことでいいんだな?それでもかなり大目に見えるが」


「優のためなら金は惜しまない。生憎突然の身に合わない大金にこっちも困っていたのでな、その分サービスしてくれればいい」


「ほう、金払いの良い客は大切にするのがモットーだ。そんならまぁ、少しは真面目に仕事してやろうかねぇ」


そう言ってジジイは積み上げられた書類から紙を数枚引き抜き、引き出しからペンを一本取り出し、いくつかの水晶玉を目の前に並べ始めた。

証明書の時は紙に文字が浮き出したりと凄く機械的なものだったが、それより進んだ技術であるはずのこの鑑定はなんだが前世代的だ。

なんとなく不安に感じるのは私だけなのだろうか?

そんな私の気持ちを察したのか、シリウスが隣から話しかけてくる。


「アトラス爺を含めて鑑定師というのは"鑑定スキル"という稀少なスキルを持っている。これは魔法だったり魔眼だったりするんだが、実はその情報は決して数値としてその目に現れるものではないんだ」


「ほうほう」


「元々は『良』『普通』『悪』といった感じで大雑把に鑑定されていたものを、今の証明書の様に数値として定義したのは何を隠そうこのアトラス爺でな。例の証明書システムも、彼が偉大な魔導師と共に作り上げものなんだ」


「そんなに凄い爺さんだったのか……」


「まあな。目で見た鑑定情報を数値化するという技術は彼によってその弟子達や証明書システムにも採用されているが、万物全てのステータスを看破し、数値化できるのは未だ彼のみだ。彼の作成した鑑定師へ向けた数々の本は高額にもかかわらず需要は止まないし、彼に憧れて鑑定師を志す者も多い」


「そんなお爺さんをアンズさん達は蹴ったんですね……」


「「それについては反省も後悔もしていない」」


ジト目でこちらを見るピンクから目を逸らしてジジイを見る。

……非常に衝撃的な話だった。

あんなふざけたジジイが、あの便利な証明書システムを作り上げた人物だということが。

しかしこうして眠そうな優に目を向けて、ペンを動かし魔法を使っている真剣な表情を見ていると、なんとなく威厳というものも感じられる。


優のMP切れを直ぐに看破したのも、鑑定師としての実力故というものなのか……


そうして、そんな会話をしているうちに優の鑑定は終わったらしい。


ペンを置いて何かを考えているジジイ。

終わったのは目で見て分かるのだが、ジジイは優を見つめたままその場を動こうとしない。

居心地が悪いのかオロオロとしている優を見て意見をしようとしたのだが、どうにもジジイの様子がおかしい。

汗をダラダラと垂らし、瞳がどこか震えている様にも見えた。


不審に思った私はシリウスに声をかける。


「シリウス、あのジジイはどうしたんだ?どうしてあんなに優を見ている?」


「分からない、だがあんな表情のアトラス爺は私も初めて見た。それに、鑑定も普段よりもかなり時間がかかっていた。普段ならば鑑定の途中で手を止めたりしない」


「そうなのか?」


「というか、そもそも鑑定中は必ず余計なお喋りをするというのが彼の特徴なんだ、その人のステータスをネタにしたものをな。だから……」


「笑う事も出来ない程の何かがあった、ということか」


威厳のある真剣な表情をしていたのはそういう理由だったのかと思うと少し落胆するのだが、あの様子は明らかに異常だ。

仮にも鑑定のプロであるジジイがあの様子、見れば少しだけ体も震えているようにも思える。

老化か?


「あ、あの、アトラスさん?優くんがどうかしたんですか……?」


ここでピンクがジジイに話しかけた。

ナイスピンク、話が進まないから困っていたが良いところで声を掛けてくれた。

それに便乗して私も声をかける。


「優が困っている、そろそろ進めて欲しいのだが?」


「あ、ああ……もう大丈夫だ」


掠れた声でそう言うジジイ。

やっと解放されたからか優はジジイからの目線を切る様に私に抱き着いた。

鼻血が出そうになった。

突然抱き付いてくるのはやめてくれ優、その攻撃は私に効くどころか普通に死ぬ。


「ゆ、優?だ、だ、大丈夫だったか?」


「ん、大丈夫。でもちょっと怖かった」


「そ、そうか。す、少しの間なら私の膝の上に来てもいいんだぞ……?」


「ほんと……?」


咄嗟にハンカチを口元に当てて膝に乗るように促す。出血が微量で助かった。

まだもう少しだけ生きていられる。


「アトラス爺、貴方がそこまでの反応をするとは何かがあったのでしょう。そろそろお話しして頂けませんか?」


「あ、ああ、そうだな。だが、まあ……見てもらった方が早いか。とりあえずこっちからだ」


シリウスに促される様にしてやっと話を進めたジジイ。

私と優の元に提示された1枚目の紙、そこには証明書に書かれたものと似た内容のものが書かれていた。


雪見(ゆきみ) (ゆう)

-ステータス-

状態:普通

筋力:2

体力:1

知力:10

精神力:--

器用さ:8

魔力:--

幸運:1



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