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3-2.ド変態の生きやすい社会

スキル鑑定


ステータスではなく、個人が持つ技術や体質がどんなもので、どの程度のレベルに達しているのかを知るためのものだ。

証明書のステータスを、より詳細に見てくれるものだと言えば分かりやすいだろう。


例えば魔法に関して言えば、


火炎魔法Lv.5


と言ったように、どの様な魔法を使えて、その魔法がどのレベルなのか、どう変化して使えるようになったのか、強度も1〜10段階で示されるらしい。


これはステータスを測る時とは違い、機械ではなく人によって行われるもので、それを測定できる者が非常に少ないことから、スキル鑑定には相応の金額と待ち時間が必要だと言われている。


ただその待ち時間はコネを使えばなんとでもなるし、金額に関しても現状ではどうにでもなるだろう。

ここで使わずいつ使う。

アイルのコネと有り余る金。


取り敢えず現状の問題は場所だ。


この付近でスキル鑑定を行なっている場所は一つしかないらしく、そのためには多少の遠出が必要になるらしい。


別に護衛を雇う程度は問題無いのだが、ふとこの世界にやってきて直ぐの出来事を思い出す。


犬の魔獣に森の奥へと引きずられていく冒険者の姿を……


「ということで、今回道中を任されたシリウス・スクローネだ。片道で金貨5枚に食事付きという破格の条件、感謝したい。是非帰り道も任せて貰えるよう努力するので、何卒宜しく願いたい」


まあそんな過去はさておき!

ついつい美人の女性を雇ってしまった!


実力は折り紙つき、傭兵仕事にも慣れていて、その上で美人となれば雇う他あるまい!


褐色の肌に紫がかった短髪、

如何にも戦士という顔付きに鍛えられた肉体、

ニッと笑うその顔はそれだけで女性を落としてしまいそう。

可愛い系のフィーナや儚美し系の優とはまた違ったワイルド系の美人だ。

というかこの3人と共に旅をするとなると、完全に私のハーレムなのでは?

いいんですか神さま?

遠慮しませんよ?


ただ、よくよく考えなくとも女4人(+大獅子の子供1匹)の旅。

物凄く盗賊に狙われそうだ。

まあ男を入れたくなんか無かったので仕方ないのだが、フィーナも魔法使いとしては普通に戦えるそうだし、なんとかなるだろう。

最悪の場合は優の炎を使っている間に私が粉々にすればいい話だし。


「ふぃ、フィーナ・リルアです!今日からよろしくお願いします!」


「雪見 優、こっちはミルク、よろしく」


「田原 杏子だ、道中よろしく頼む」


各々の自己紹介に1人ずつしっかり握手をして言葉を交わすシリウス。

だがそんなしっかりした彼女は、一度私達の顔を見渡すと何かを考え込み始めてしまった。

どうやら心配事があるらしい。


「ふむ、こうも美人揃いだと盗賊が心配になるな。私としては役得だが、警戒は多少強めるべきだろうか」


やはり彼女も同じことを思っていたらしい。

美人パーティだし、もう最高だよな。

なんだったらもう1人くらい雇っても良かったのだが、この3人(+1匹)に見合うだけの美人が居なかったのだ。

準備のための数日で私自身も大獅子の包丁に(フィーナの作ったドーピングで)魔力を込める方法くらいは学べたので戦力にはなれるし、まあそんなに問題は無いだろう。


……というか、優の筋力ステータスがつい昨日2まで上がったので、護衛すらも要らないのではとか思う自分もいる。

まさか本当に筋トレを始めるなんて思いもしなかった。

最初は腹筋1回すらできずにダウンしていたけれど。

可愛い。

動画に収めた。

今では2回まで出来るようになった。

流石は私の優。

愛してる。


「そ、それじゃあ皆さん!馬車に乗って下さい!目的地までは私が手綱を取ります!」


そう言ってフィーナは慣れた手つきで御車台に乗り込む。

一緒に着いてくると言った時には何事かと思ったが、物資の運搬などで慣れているらしく、こうして見ているだけならば非常に頼りになっている。

あとはどこかで天然ポンコツをやらかさないかが不安だが、その時はシリウスがどうにかしてくれるだろう。


そう思って乗り込んだ座席には、片付け忘れたであろう雑巾と、落としたであろう道具入れがそのまま残っていた。

ちょっと不安になった。

本当に大丈夫なんだろうな、このポンコツ。


「盗賊です!!」


「早っ!?まだ出発して2分も経ってないんだが!?」


町を出て直ぐ、早速3人組の盗賊に襲われた。

まだ気を抜く事すら出来ていなかったのに。

……いや、どこかで襲われると思ってはいたけれどね?

この早さはおかしくない?

まだ町の門が見える距離なんだが!?

門番がバッチリこちらを見ているんだが!?

バカかこいつら!!

場所くらい考えろや!

チンパンジーでもまだマシな襲撃するわ!


「ぐへへ、美人揃いのいいパーティじゃねぇか!どうだい嬢ちゃん達!オイラと一緒にダンスパーティーと洒落込もうぜぇ!?」


もはやどこから突っ込めばいいのか分からない。

知力3しかなさそうな顔をしていたが、実際には3あるかも怪しい。

チンパンジーと比べたらしたら、チンパンジーが可哀想になるくらいだ。

これだから男は……チ◯コ取って出直して来い。


「兄貴ィ!今時その誘い文句はちと古いですぜ!」


そうだそうだ言ってやれ、生きてる価値ないから土に埋もれて死ねくらい言ってやれ。


「こう言う時はダンスじゃなくてボーリングってやつに誘うんすよ、最近若い男女に人気らしいッスよ」


……ほう?ボウリングに誘うとはこの下っ端、良い趣味をしている(大のボウリング好き)。

しかしこの世界にもボウリングなんてスポーツがあるとは思わなかった。

私的には結構ハイテクなイメージだったのだが、魔法か何かで代用しているのだろうか?

それはそれで気になるのだが、もしユグドラシルの街にもあるならば是非一度お邪魔して……


「柱状図は土質の基本ッスからね!そこから水分特性曲線まで作れる男はモテるッスよ!」


「テメェそれマジのボーリングじゃねぇか!!」


"血浸透(けっしんとう)"


大袈裟なスライディングで足払いを行い、避けるためには跳んだ相手の足を掴み取る。

そしてそのままスライディングの勢いと共に頭部から地面へと叩きつける、即死を見込める先制技だ。

妙に土質の知識に溢れる下っ端Aは文字通り鼻血を含めた血飛沫を大地へ浸透させていく。


「ギャァァァァ!!顔がぁぁぁぁ!!」


こちとらボール投げてピンが倒してぇんだよ。

誰が土壌のサンプル取ってキャッキャうふふしたいつった!!

水分特性曲線作れる男がモテるとかこの世界の人間狂ってんのか!!

というかこの世界にボーリングマシンがある事実の方がビックリだよ!

技術レベルが全然分かんねぇよ!

手で掘ってんのか!?

まとめて埋めるぞ!!


「し、下っ端Aェェェェ!!」


「いや名前」


「 Aェェェェ!お前は!お前はこんなところでくたばるタマじゃねぇだろ!?こんなんじゃオイラ……お前の母ちゃんに顔向けできねぇよ!!」


いや、盗賊なんかやってる時点で顔向けできんだろ。


内心でそうツッコミながら下っ端B(仮)をシンプルに一本背負いする。


「一本」


と馬車の窓から顔を出した優が言葉にする。

直ぐ隣で同じ様に顔だけ出しているミルクの姿も相まって非常に愛らしい。

瞬間的に写真を撮った。


「せいやぁ!!」


「おぷてぃます!?」


シリウスの放った後ろ回し蹴りによって吹き飛ばされた盗賊の頭は、スウェーデンで創業した有名調理器具ブランドの名前を叫びながら吹き飛んでいった。

弱い、弱過ぎる。

盗賊にしてはあまりにも弱過ぎる。

というか抵抗の一つもせずにこの有様だ。

マジで何の為に出てきたのかが分からない。


「なんだったんだこいつら……」


日の光に弱い優の頭を撫でながら馬車の中に押し込んでそう呟いていると、走ってやってきた門番にシリウスは流れる様に盗賊達を引き渡す。

そのやり取りからはどこか慣れた作業の様に感じるのだが……


「ああ、こいつらはここらで有名なバカ共でな。出入りする馬車に絡んでは、特に何の危害も加える事なくボコボコにされて帰っていくんだ。私も街を出入りする度に相手をさせられている」


「……それに何の意味があるんだ?」


「分からん。捕まるたびに尋問されているが、『俺たちはこの仕事に命と誇りをかけている、やめるつもりはない』と言っているらしい。全く危害を加えずボコボコにされても抵抗しないことから、怪我をさせて入院させることを推奨されている」


「つまりド変態のクソマゾ野郎共ってことだな?」


「……まあ、男しか乗っていない馬車には声をかけないこと。加えて先の迷言が女性拳闘士にボコボコにされた時のものであることを考えると、間違いなくそうだろうな」


「きっしょ……」


そんな恐ろしい事実を聞いて男達を見ると、腰にかかっているのは剣では無く大根だし、盗賊っぽい見た目の服は冒険者用の安物を袖の部分だけ乱暴に引きちぎったノースリーブであることが分かった。

そして恍惚とした表情を浮かべている男達の中でも、私に血浸透を喰らった男はぐちゃぐちゃに血に染まった顔はあり得ないくらいニマニマとしていた。


ブルっと寒気のした身体を抑えて、何故毎回あんな変態どもが釈放されているのかアイルに問い詰めようと心に誓った。


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