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3-1.フィーナ・リルアはポンコツかわいい


「もう!もう!!どういうことですかアンズさん!私もう分かりませんよぉ!!」


「お、おお……とりあえず落ち着け、淫乱現金術師」


「淫乱じゃないです!あと錬金術師です!なんかそーゆーことしてるようなイメージ付けるのやめてください!!」


ある日の昼下がり。

いつものように求人情報を読み漁っていた私の元に、突然こうして尋ねて来た淫ピは、何故だがとっても発狂していた。


「優さんの魔法!あれもうどうなってるんですか!マナを欠片も使わない魔法なんて魔法じゃないですよ!にも関わらず効果は漏れなく意味分からない威力ですし!何があったらああなるんですか!」


「ちょ、待て、いいから落ち着け。そのバカみたいに跳ねたハネ毛切り落とすぞ」


「ひえっ!」


後ろに飛び退く様にして頭を抑える淫ピ。

凄くあざとい、以前から思っていたが容姿が良過ぎる。

それに加えて裏の無い天然のポンコツ

属性だけでもレベルが高過ぎるだろう。

こういう反応が見たいがためについつい虐めてしまうのも、仕方のない話だと言える。


「で?優の魔法が変って話は聞いたが、具体的にはどう変なんだ。魔法のまの字も知らない私にも分かるように、懇切丁寧に説明してくれ」


「わ、分かりました。えっと、魔法の基礎くらいは知っていますか?魔法を使用するための3段階のお話です」


「それは優から聞いた、あと魔法の適性の話も」


「まの字くらい知ってるじゃないですか……」


「あん?」


「な、なんでもありません!!生意気言いましたごめんなさい!!」


そう言って再び頭のハネ毛を抑える。

以前の事件で一緒に仕事をしたが、あれ以来こいつともこうして話すことが多くなった。

私も以前ほど嫌っているわけではなく、優を狙ってさえいなければむしろ可愛がっていたと自覚さえしている。

可愛い女の子は正義、これは真理だ。


「えっとですね、優くんが魔法を使うのにマナを使わないって話はしましたよね?」


「ああ、それはアイルも不思議に思っていたな。」


「それと優くんの使う火属性魔法がとんでもない魔法だということも知っていますよね?」


「ああ、あの白炎だな。……それで?それがどうかしたのか?」


「……先日、優くんが現状で使えるもう一つの魔法、身体強化魔法を見せてもらいました」


「あっ……」


なんとなく言いたいことが分かった。


「……どうだったんだ?」


「とりあえずこれが身体強化魔法を使った時に優くんの証明書が表してたステータスの数値です、ご確認下さい」


そう言って手渡して来たメモにはこんな数字が書かれていた。


雪見 優

筋力:1→10

体力:1→10

知力:10

精神力:--

器用さ:8

魔力:15


あれ?意外とそうでもない?


そんな心の内が漏れてしまっていたのか、フィーナはため息をついて懇切丁寧に解説してくれる。


「通常"身体強化魔法"というものは、自身の体を強化することに加え、消費する体力の代わりにもマナとオドを使うことで成り立っています。それはステータスの数値として分かりやすく示されるため、その魔法の効果が簡単に分かることで有名です」


「まあ確かに、火の魔法の強度とかはステータスの数値では分からないからな」


「そうです。そしてこういった強化系の魔法は基本的に本来の数値にプラスされるものではなく、乗算で処理されます。代わりに大抵の場合で重ね掛けすることは出来ず、支援魔法よりも自強化の方が強いとされているんです」


「なるほど、大体わかった。……故に聞こう。一般的な身体強化魔法、どれくらいステータスが変わるものなんだ?」


「……支援魔法で1.0〜1.5倍、自強化で1.0〜2.0倍。宮廷魔導師レベルでも3倍程度だと言われています。ですのでその、優くんの10倍という数字は……」


「分かった、うん分かった。少し待っていろ、この情報を処理するのに紅茶3杯分くらいの時間が欲しい」


「大丈夫です、私は昨日全く眠れませんでしたから」


無理もない、魔法に精通しているフィーナからすれば目を背けたい結果だろう。

私も現在進行形で紅茶が揺れている。


10倍ってなんだ?

何を言っているんだ?

界王拳か?

ステータスが1しかないからまだ見れる数字だが、これが2に上がっただけで人間の限界を軽く突破するということだぞ?

そう考えると優にも筋トレをさせるべきなんだろうが、怖過ぎてさせたくないまである。

もはやそれは魔法じゃない別物なのでは?そう思わずにはいられない。


「……フィーナの見解は?」


「……過去に個人で自身のステータスを5倍近くまで引き上げた事例があります。ですが彼は直後に極度のオド欠乏症に陥り、数秒しか保たず死亡したそうです。

そんな彼も幼い頃から魔導の天才と呼ばれていた人物で、身体強化魔法に強い適性があったと聞きます」


「……それでも5倍なのか」


「理論上、その直後に"全開"のポーションを使用すれば10倍という数字は可能です。

ですが私が昨日一晩考えて出したのは、"あれは魔法じゃ無いんじゃないか"というものです」


奇しくもそれは私の結論と同じだった。

ついでに恐ろしいことを聞いたのだけど。

え?全開のポーションつかえば更に2倍されるの?

20倍されるの?

何それ怖い。


「……まあ過程が違うならまだしも、効果が頭おかしいからな。魔術の上の魔法とか、魔法の上の魔導みたいな?なんかゲームとかであるだろ、一個上の段階のそういうの」


「魔法の一つ上の存在ですか……あり得そうですね。だったら何なのか、と言われても私には分かりませんが、取り敢えず一つ少し提案したいことがありまして」


「提案?」


「はい、スキル鑑定を受けてみてはどうでしょう?」


まさかこの一言であれほど面倒なことになるなんてこと、私はこの時全く分かっていなかった。


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