気まぐれな時間②
うちの高校には色々と決まりがある。
それはどこの学校でもそうであるが、このバスケットボール部にも決まりがある。
1on1をする場合、先輩が先にディフェンスをするというものだ。
いつからこの決まりがあるかは知らないが、私もその決まり通りディフェンスをするべく位置に着いた。
後輩から1度ボールを渡される。
そしてまた私がボールを後輩にワンバウンドさせて返す。
これが1on1開始の合図なのである。
私はバスケットシューズの裏を手で擦り、キュッと乾いた音を体育館に響かせて自信に気合を入れた。
相手はいきなりシュートモーションに移行する。
だが、これはフェイント。
目がゴールに行っていない。
牽制するため、私は左手でボールを刺しに行く。
それを嫌い、ドリブルで突破しようと後輩は目を見開く。
ハンドリングスキルは大した物で、ゴール下までやってきた。
また相手はシュートモーション。
これもポンプフェイクで、私のジャンプブロックを誘うもの。
フェイントを読まれて為す術もなくなり、そのままジャンプシュートを行うも、読み切っていた私がシュートを阻んだ。
「中尾先輩は、ほんと容赦ないですー」
後輩は笑いながらボールを拾いに行く。
そして先程とは逆、私がオフェンス。
フェイントは顔の向きや目の方向が重要であることを教えるため、後輩との1on1を続けるのだった。