マリオネット飛翔②
実際に如月は、あの廃ビルに行って調べてきたらしい。
変な暗示にもかけられたと。
「飛びたくなる、だ?よく分からないが催眠の類いか?」
私はオカルトだなと思いながらも耳を傾ける。
「あの時は私も必死だったからな、あまりハッキリとは覚えていないが。なんだか飛ばなければいけない感じに襲われたんだ。飛んでもいいんだ、みたいな安心感もあった」
しかしよく飛ばなかったものだ。
余程、精神力に長けているのか。
はたまた、何か特殊な能力で防御でもしたか。
とりあえず、まだ人間の犠牲は出ていない。
小動物程度に留まっている。
今の内に解決出来たらいいのだが、まだ手掛かりが少なすぎる。
だが待てない、犠牲の少ない内に解き明かす。
「すまないなフユコ。肝心なところがまるで解っていない。突き止めれたのは場所位なものだ。なんで場所は分かったのかって?それは企業秘密だ」
如月はタバコに火を付けて、ゆっくりと吸った。
後は私の仕事だ。
おかしいかな、何だかワクワクしている自分がいた。
クローゼットからキャメルの革ジャンを無造作に掴み取り、夜の街に繰り出す準備をする。
如月に気を付けてなと言われ、努力すると答えて扉を閉めた。
外に出て1度、大きく深呼吸。
気持ちを切り替えて、廃ビルに向かう。
近付くにつれて空気が変わっていくのが分かる。
そして廃ビルに着き、ビルの1番上を睨んでいた。
今から行くから待ってろ、と心の中で呟いたのだった。