小さな花③
明日は明日の風が吹く、という言葉がある。
まさに私に相応しいのではないだろうか。
気ままに生きてやりたい事をやる人生。
何の為に生きる訳でもなく……
なーんてな、と小さく言葉に出して歩き出した。
正午、町外れの廃ビルに居た。
ポケットからタバコを取り出し、煙を楽しむ。
たぶん10階建てくらいだろうか、正面の扉から入りロビーの椅子に座る。
私はこの場にフユコも誘ったのだが華麗に断られた。
廃ビルに一緒に行こう、なんて付いて来る者も付いて来ないし、このビルの1番上から俯瞰したところで感動も無いだろう。
エレベーターだって電気が通っていないから動かないし。
とりあえずタバコを咥えて階段を探した。
歩く度、ヒールの硬い音が響き渡る。
空でも飛べたら楽に上に行けるのに。
5階に着いた頃には、さらに飛行願望が出ていた。
体力の無さに情けなくなる。
近くにある窓から外を見てみた。
周りには似たような廃ビルが幾つかある。
大きく深呼吸を繰り返し、体に酸素を送った。
また歩きだし、次のタバコに火を着けた。
7階に着く。
嫌に変な空気だ。
静かすぎる。
先程、吸い始めたばかりのタバコの火が急に消えた。
全身に鳥肌も立つ。
すぐに階段を引き返して下に向かう。
5階に来て頭痛まで襲ってきた。
身の危険をヒリヒリ感じ、4階の窓から飛ぼうか考える程だ。
唇を噛み、意識を保ちながら確実に階段を下る。
2階に到着した途端、解放された。
息は乱れ、汗も吹き出していた。
そのまま正面の扉に向かい、ゆっくり外へ出た。
目の前に猫の死体。
数メートル先には犬の死体。
さらにはカラスの死体まであった。
それらの動物からは血が流れており、死んでからあまり時間は経っていない様だった。
待てよ、来た時には死体はなかった。
つまりは私がビルを往復している間か。
場所は間違いない、今回のステージはこの廃ビルか。
私は足早に廃ビルから去っていった。