最終話 僕は君に恋をする
最終話です。これまでお付き合いいただいた方々、本当にありがとうございます。
「どうかな? こんなどうしようもない僕だけど、君の側に置いてはくれないだろうか」
「・・・・・・まあ、あんたがそこまで言うなら、私もやぶさかではないっていうか? あんたみたいな男には、私くらいの女じゃないと相手が務まらないっていうか?」
「つまり?」
「・・・・・・・いわ」
「え? なに聞こえない」
「・・・・・・いわよ」
「もう一声」
「だから! いいわよって言ったの! 私に恋をさせてあげる! 光栄に思いなさい!」
「やったーっ!」
僕は天に両拳を突き上げ叫んだ。
さすがに山野辺先輩ほどではなかったけれど、それでも声は裏生徒会室に響き渡り廊下を突き抜け、職員室まで届いた(らしい)。
「な、なによ。そんなに喜んじゃってさ。バカ・・・・・・・」
「これが喜ばずにいられるか! 僕は今日、初めて恋の糸口を掴んだのだ! これからよろしくね、姫宮さん!」
「・・・・・・名前」
「ん? なんだい?」
「名前で・・・・・呼んで欲しい・・・・・・・です」
「なんだそんなことか。君といい雫といい、女の子は名前で呼ばれるのが好きだね」
「いいから、呼んでよ」
「燈火」
「あう・・・・・・」
「燈火?」
「はい・・・・・・・」
「燈火!」
「うん・・・・・・」
「燈火ぁあああああッ!」
「うるっさいわよしつこいわね!」
怒られてしまったが、僕は上機嫌だった。
産まれてこの方、こんなに嬉しかったのは誕生日プレゼントに乙女の肩たたき券をもらって以来だ。
「えっと、じゃあ、どうしよっか」
「どうって?」
「そりゃ、その、ほら。恋人としてやることあるでしょ・・・・・・いろいろと」
「あー。らしいね」
「しないの?」
「え。しないよ」
「うん。じゃあまずは手を繋ぐことから――ってしないんかい!」
「ノリツッコミとは恐れ入ったなあ。どうしたんだい一体。関西人が乗り移った?」
「あんた、私が好きなのよね⁉」
「好きだよ」
「私に告ったわよね⁉」
「告る? 惚れてもいないのに告ったりしないよ。あれ? もしかして勘違いしちゃった? 君に恋させてくれって言ったから? ダメだなー姫宮さん。いや、燈火。人の話はきちんと聞かなきゃ。僕は君に恋をさせてくれ。惚れさせてくれと言っただけで、まだどちらもしちゃいないよ。どうして椅子を持っているんだい?」
「お前らうるさいぞ。さっきの叫び声はなんだ。職員室まで聞こえて待て姫宮早まるな!」
「うっきゃー! コロス! お願い殺させてえ!」
「落ち着け! 学校で殺人は本当にまずいんだ!」
なんだか前にも見た光景だ。椅子を振り上げる燈火を川村先生が羽交い絞めにしている。
「これはどういうことなんだ! 風間、説明しろ!」
「ああはい。実は姫宮さん――燈火に、恋をさせてくれとお願いしたんです」
「は? 恋? 誰が? 誰に?」
「僕が。彼女に」
「マジで?」
「マジで」
「ちくしょう青春しやがって羨ましい! それがどうしてこんなことになったんだ!」
「さあ? 彼女くらいの年頃は情緒不安ですから・・・・・・おっと、定時だ。じゃあ、僕はこれで。先生さようなら」
「ああ、さようなら――じゃない! なんとかしろ! せめて手伝え!」
「燈火も。また明日」
「ふざけんにゃー! 私の純情を返せーっ!」
言っている意味がわからなかったので、とりあえず笑顔で手を振っておいた。
裏生徒会室を出ると、騒ぎを聞きつけた生徒が集まっていた。
「今なら姫宮さんのレアな顔が見られるよ」
と言って、室内の覗き見を薦めておいた。
これできっと、彼女の人気は不動のものになる。とても面白い顔をしていたのだから間違いない。
「明日が楽しみだ!」
茜色に染まる廊下を競歩で歩く。
――そう。明日が楽しみだ。
だって、僕の恋はようやく始まろうとしているのだから。
待っていてね、姫宮燈火さん。僕は必ず君に惚れてみせる。
そうなれば、絶対楽しい。
なぜなら、恋とはきっと、素敵なものに違いないのだから。
了
終わった!予定では五十話でぴったり終わるはずが、なぜか一話はみ出ました。
そんな話はともかく、『優等生は誰がために』完結です。要望があれば続編を書きますが、PV数もポイントも芳しくないので望み薄です。
最後に、お礼を。初めて感想をくださった方、これまで駄文を読んでくれた方、本当にありがとうございます。次はなにを書こうか決まってませんが、ブクマ・感想・レビュー・評価をしていただけると元気が出ます。
なので、よければ全部ください。
欲張りなお願いで申し訳ありませんが、ネットに公開してるのは、自分の書いた小説が、読者の方にどう評価されるか知るためなので。
では、機会があれば、またどこかでお会いしましょう。




