第四十五話 誕生会①
ついに月島さんの誕生会が始まります。
中二の学習能力は凄まじい。
雫の家に着くまでの間に乙女は姫宮さんの語る理(設定)を理解し、独自に世界の構築(キャラ作り)をこなすまでになったのだから。
このままでは乙女の中学生活が漆黒に染まる。天使が堕天しちゃう。妹の更生を固く決意した。
雫の家は僕らが住むマンションとはご近所だ。駅からも近い優良物件である。呼び鈴を鳴らすとインターフォンからはーいと元気な声が聞こえて来た。
名前を告げると、ちょっと待っててとのこと。
姫宮さんは物珍しそうに月島家をしげしげと見つめている。気になったので聞いてみた。
「そんなに見つめてどうしたんだい? そう珍しくもない、普通のご家庭だと思うけれど」
「あんたたちにはそうでしょうけど、私からしたら初めてなのよ。こういう家に入るのも、同級生の家に招かれるのも」
「ああそうか。姫宮さんの家ってすごいお金持ちだものね。家に呼んでくれる友達はいなかったし。かわいそうに」
「うるさいわね。いつも一言余計なのよ」
「ごめんよ。妹が毒された復讐だ」
「わざとか! あんたってホントいい度胸してるわね」
「妹と二人暮らしだから気を強く持っていないとね。姫宮さんは一人暮らしだよね?」
「そうよ。家族からの干渉もなくなったわ」
そいつはめでたい。
「いらっしゃい! わー、乙女ちゃん久しぶり! 姫宮さんも来てくれて嬉しい! 誠二は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。とりあえず上がって」
なんだか僕の扱い雑じゃないか? 雫の目から一瞬にして生気が消えたぞ?
家に上がらせてもらうと、そこには既にたくさんの料理が並んでいた。
「友達が来るって言ったら、ママが張り切っちゃって」
と言って、恥ずかしそうに頭をかいた。
「それは悪いことをしたなあ。ご家族はどこに? せめてお礼を言いたい」
「それがね! 二人ともひどいんだよ! 娘の誕生日だって言うのにデートしてくるって言って、朝早く出かけちゃったの! 妹は友達の家にお泊りだし!」
「それはきっと、気を遣ってくれたのだろう」
「ううん、全然違うの! マジで二人だけで楽しむつもりなんだよ! ホテルでランチとディナーするんだって自慢された! マジありえない!」
憤慨する雫を見て僕らは笑ってしまった。
普通の家庭はこうなんだなと、改めて思った。
やはり人は、家族といる方が幸せになれるのだ。
とりあえず席に着き、全員にグラスが行き渡ったところで乾杯となった。
音頭をとるのは僕である。咳ばらいを一つ。
「えー、ごほん。本日はお日柄もよく、今日というよき日に我らが友人、月島雫さんの誕生日を迎えられたことをとても嬉しく思います。思えば僕らの出会いは一四年前。同じ幼稚園に入園したあの日」
「「「かんぱーい!」」」
「・・・・・・嘘だろ君たち」
一週間かけて準備した祝辞が、盛大に無視されてしまった。真に遺憾である。
僕の心中など察することなく(あるいは無視して)月島雫生誕祭が始まった。
適当に飲み食いし、プレゼントの贈呈となった。
まずは姫宮さんから。彼女が選んだUVハットは大いに気に入られ、雫はその場でかぶると全員と写真を撮った。
「では、次は僕の番だ」
はたして、風間くんのプレゼントは月島さんの心をうつのか。




