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優等生は誰がために  作者: うえりん
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第三十九話 風間くん、自慢をする

みなさん気づいていると思いますが、風間くんは人とお話しするのが大好きです。

 姫宮家には二〇分ほどで到着した。


 立派な門をくぐり、広い庭を抜けると純和風の家の前に到着した。乗り込むときと同様運転手さんがドアを開けてくれた。礼を言って降りると、改めて家の荘厳さと庭の広さに感嘆する。まるで神社かお寺の前にいるようだ。


「こっちよ」


 お姉さんがスタスタと玄関へと入っていく。着いていくと、そこにはお手伝いさんと思しき女性が立っていた。


「私は母を連れて行くから、先に部屋で待っていて。彼女が案内するわ」


 そう言うなり踵を返し、長い廊下を足早に去って行った。


 立派な和室に通され待っていると、姫宮灯さんと杏南さんがやって来た。


 二人とも雅な和服を着ている。


 灯さんはともかく、杏南さんは先ほどまで洋服だった。


 しかしそれ以上に気になるのが、肝心の姫宮さんの姿が見当たらないことだ。


「お待たせして申し訳ありません。本日はようこそおいでくださいました。改めまして、私はあの子と、ここにいる杏南の母。姫宮灯と申します」


 ・・・・・・あの子、か。

 この人は、一度も下の娘を名前で呼ぼうとしない。


「姉の杏南です」

「先日は娘が大変失礼をばしました」

「いいえ、こちらこそ言葉が過ぎた部分がございます。すみませんでした」

「お若いのにしっかりしてらっしゃる。さすがはあの子に勝っただけのことはありますわ」


 牽制か。僕について調べたと暗に言っている。

 だが、それを見越してこちらが動いていたとは思っていないし、なにより調べが甘い。


「本日はお招きいただいてありがとうございます。ところで、燈火さんはいらっしゃらないのでしょうか」

「ええ、急な病気で床に伏しています。本日は私どもがお相手させていただきます」

「そうでしたか。――して、ご用件とは」

「単刀直入に言います。あの子から手を引いて欲しいのです」

「手を引く、とは」

「そのままの意味です。今後一切、あの子と会うのはやめて欲しいのです」

「理由をお聞かせ願えますか?」

「あの子のことを、少しでもご存じなら理解していることでしょう。あの子はとても優秀です。学業はもちろん、運動においても同年代に敵うものは少ない。将来がとても楽しみ。――ですが、それがつまらないことで潰えようとしている。子を思う母の気持ちをご理解ください」

「すみません。理解できません」

「・・・・・・肝が据わっているのは認めます。ならば、失礼を承知で申します。あなたもとても優秀なようですが、あの子に見合う程とは思えない。あの子の優秀さは誰より母が存じています」

「離れて住んでいるのに、ですか?」

「離れていても、親と子です。それに、離れてこそ見えるものもある。あの子は高校生にして八カ国語を操り、複数の特許を取得。本も出版し、原書の翻訳も手掛け、かなりの収入も得ている。無論学業もおろそかにすることなくです」

「それだけですか?」

「それだけ・・・・・・って」


 さしものお母さんも、これには開いた口が塞がらないようだ。娘の功績を並べて反論されたことがないのだろう。


 二人の呆気にとられた顔を見ているのはとても愉快だ。もうちょっと眺めていたいが、話を進めなくてはならない。


「今あなたがおっしゃったようなことを僕もしていれば、交際相手として認めてくださいますか?」

「・・・・・・ずいぶん自信がおありのようね」

「いいえ、僕が燈火さんより優れているとは思いません。ですが、今おっしゃったくらいのことでしたら、まあ普通にやっていますし。そうなればあなた方が反対する理由もないのかと。どうなんですか?」

「・・・・・・それはあなたの功績によります」

「功績ですか。あなたの判断基準は身を飾る装飾に依ると」

「功績は当人の能力が認められた証です。客観的な判断材料として、これ以上のものはないでしょう」

「そうですか。自分で自分の功績を口にするのは、どうも気恥ずかしいですね。とりあえず、中学高校と全国模試一位を何度かとりました。姫宮さんとともに、満点で同率一位の経験もあったようです。検定試験でも満点をとり文科省に表彰してもらったのと、絵画で内閣総理大臣賞もいただきました。収入面では数学の未解決問題を解いた懸賞金があります。その他に特許をいくつかと、ウェブデザインとプログラミング、それとゲームアプリの開発の仕事も手掛けています。アルバイトのようなものですが、収入はまあ、それなりということで。このくらいでいいでしょうか?」


 二人とも呆然とこちらを見つめている。

 川村先生に協力してもらった甲斐がある。


「・・・・・・まさか、あの子以外にそんなことができる人がいるなんて」

「どうでしょうか? なにか不満はありますか? 一応ネットで検索すれば、多少裏はとれると思います」

「お母さん!」

「なにもないようでしたら、そろそろお暇させていただきますが」

「・・・・・・いいえ、まだ話は終わっていません」

「あなたもしつこいですね」

「口の利き方に注意なさい。一介の学生風情、どうとでもできるのですよ」

「お好きにどうぞ。僕は海外でも生きていけますから。お金もありますしね。ちなみに僕も八カ国語を使えます。というか、収入があるので、別に今さら学歴にこだわる必要ないですね。うん。ホント、お好きにどうぞって感じで」

「話をする気はないと?」

「それは燈火さんの話を聞いてからにしましょう」


 途端に襖が開かれ、不機嫌さマックスの姫宮さんが現れた。


「話が長い!」


こんなラノベの主人公みたいなやつ、いてたまるか! と思われるでしょうが、事実ラノベなので、ご勘弁ください。

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