表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
優等生は誰がために  作者: うえりん
32/51

第三十二話 初デートはなんの味?

初デートの思い出は・・・・・・思い出したくないですね。

「お母さん!」


 途端にお姉さんが駆け出した。


 みっともないと誰もが思うほどに、その姿は幼稚な子供そのままだった。


 母親に縋りつきながら喚く。


「あの男、ひどいのよ! 燈火ちゃんの彼氏かなにか知らないけど、私を警察に突き出すと言うの! 私を馬鹿にするのよ!」

「・・・・・・あなたは? 私は姫宮(ひめみや)(あかり)。二人の母親です」

「初めまして。風間誠二です。娘さんの友達です」

「そう。風間さん。娘がご迷惑をおかけしたようね。詳しくお話を聞きたいところだけど、この場では無理でしょう」


 視線が姫宮さんの頬を捉えた。

 とっさに顔を伏せたが、傷を見たはずだ。


「久しぶりね」

「・・・・・・ご無沙汰しております」

「この子になにかされたの?」

「お母さん!」


 お姉さんが叫ぶが取り合わない。


「いいえ。なにもありませんでした。挨拶をしただけです」

「そう、では問題ないわね。行きましょうか」

「そんな、お母さん! あの男を放っておくの⁉」


 パンッ。母の手が娘の頬を打った。


「初対面の方に失礼ですよ。それでも私の娘ですか」

「・・・・・・ごめんなさい」

「行きましょう。風間さん、その子をお願いします」


 と言って、歩き出す。しかしお姉さんがその場を動こうとしないので、その手をとって引きずるようにその場を離れた。


 途中、お姉さんが振り返り、にやりと厭らしい笑みを浮かべた。


「僕らも、行こう」


 平手打ちが飛んできた。

 

 そんなものを喰らってやる必要はない。片手で防いだ。


「傷の手当てをしなきゃ」

「・・・・・・いいえ、今日はもう帰るわ。デートも終わり。ここで別れましょう」

「・・・・・・明日、裏生徒会室で待ってる」

「・・・・・・」


 返事をすることなく、姫宮さんは母と姉とは逆方向に歩き出した。


 周囲の野次馬たちも、徐々に動き始める。流れ行く人ごみの中、僕は動かず姫宮さんの背を見つめていた。


 ピンと背筋を伸ばし、真っ直ぐ前を見て歩く女の子。


 小さな背中に背負うものを、僕は初めて垣間見た。


 優しすぎるがために自分を傷つけ他者を守る強者。


 松代さんの依頼のとき、なぜあそこまで必死になって彼女を守ろうとしたのか、わかった気がした。

 人がどん底まで落ちるとどうなるか。それを間近で見続けた彼女は恐れたのだ。


 松代さんがそうなることを。そうなった彼女を見て、僕が傷つくことを。


 あのときは出会って間もなかった。


 しかしその後は――今は違うだろう。


 その上で、まだ僕を排斥しようというのなら、僕はその逆を行くまでだ。僕はそのために君の隣にいるのだから。


「ふざけるな」


 僕は怒っている。


 僕と君は友達じゃなかったのか。僕と君とは対等だ。この僕を、下に見るな。君の友達を名乗る男を見下すな。


 ――いいや、正確には違うのかもしれない。僕が勝手に友達宣言しているだけだ。


「あれ? くそっ」


 どうにも視界が揺れると思ったら、僕は泣いていたらしい。


 なんてことだ。初デートの思い出は先に女の子に帰られ、一人立ち保うけて泣いたこととなってしまった。


 ・・・・・・さて。ここからが正念場だ。


 もう逃げられないのは、姫宮さんもわかっている。逃げられないのは、僕とお姉さんだけどね。


 とにかく、できることはやった。後は、あの人の執念深さを信じるしかない。


 僕はトイレで顔を洗うと、一人帰り道を歩き始めた。


 二人で来た道を一人で帰るのは寂しいのだと、僕は初めて知った。帰って乙女に泣き付こう。


さて、二人の関係はどうなることやら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ