第三十話 プレゼント決定②
新キャラ登場。
「うん。これなら彼女も喜んでくれそうだ。でも、色はどうしよう? いくつか種類があるけれど」
「月島さんの好きな色は?」
「乙女に聞いてみる」
「彼女が使う小物に多い配色くらいわかるでしょう? それに今使っているパスケースの色は?」
「白だね。一緒に買いに行ったんだ。僕も色違いのものを購入した。ペンケースも白。下敷きはテニスプレイヤーの写真に名言入り。ヘアゴムは赤、オレンジ、ピンクのローテーション。携帯電話は白のスマートフォンに同じく白のカバーを付けている」
「気持ち悪いほど詳しいわね。伊達に四時間も見ていなかったわけね。話を聞くに、月島さんは白がお気に入りということかしら」
「なら、前と同じにしよう」
「いいえ、ちょっと待って。あなた、彼女が今使っているパスケースを見たのよね? かなり汚れていなかった?」
「確かに黒ずんでたね。痛んではいないようだったけれど――そうか。白は汚れが目立つ」
「消耗品ならまだしも、パスケースはかなり長く使うから、できれば防汚性に優れたものが好ましいわ。まして記念の品だもの。すぐに汚れてしまってはかわいそうよ」
「となると、雫が白の次に好きな色か・・・・・・」
「なにも、彼女の好きな色に限定しなくてもいいわよ」
「なぜだい? 好きな色の方が愛着が沸くだろうに」
「そうでしょうけど、それ以上に嬉しいことだってあるのよ」
「機能性?」
「そうじゃなくて、大切な人が、自分のことを考えて選んだものってこと。要は、あなたが月島さんに似合うと思った色とデザインを贈ればいいの。きっと彼女も喜ぶわ」
そう言って微笑む姫宮さんには自信が溢れている。
これはきっと経験談に違いない。好奇心が顔を出すが、聞き出すのはまた後日だ。
雫が喜ぶ顔を想像し、彼女がパスケースを取り出す様を思い浮かべる。
その色は――
「黒? シックでいいとは思うけれど、デザインも男物って感じね。彼女には無骨過ぎはしないかしら」
「いいや、これがいいと思う」
「あなたがそう言うなら、止めはしないわ。それと、あなたの分も買いなさい。二人の思い出が片方だけ新しくなったら寂しいでしょ」
というわけで、僕は自分用のパスケースを選び始めた。今使っているのは明るいオレンジ色だ。購入したときのことを思い出し、苦笑する。
「僕はこれにするよ」
手に取ったのはパッチワーク柄のパスケースだった。
複数の色の皮が使用され、隅に猫の刻印が刻まれている。
「あら、そっちの方がかわいいじゃない」
「うん。これでいい」
「なにか考えているようね」
姫宮さんは得心し、なにも言わずにいてくれた。
これでプレゼント選びは終了だった。
時計を見れば、驚くことにまだお昼時だった。
姫宮さんのおかげで、信じられないくらいスムーズに予定を消化できた。僕が悩んだ数日間はなんだったのかと思ってしまう。
「お腹すかないかい? お礼になにかおごるよ」
「そうね。どこか寄りましょうか。でも、気を遣う必要はないわよ。言ったでしょ? 私も月島さんにお礼をしたいって。あなたに付き合ったのは、ついでよ」
素直じゃないんだから。
フードコートで適当に食べて行こうということになり、並んで歩き始めた。
休日の昼時とあって、フードコートの店はどこも人でいっぱいだった。仕方なく順番を待ちながら立ち話をしていたとき、その声が聞こえてきた。
「燈火ちゃん」
繊細な声だった。発する側から消え入るような、それでいて突き刺さるような鋭利な声。
「姉さん・・・・・・」
愕然とする姫宮さんの視線の先には、痩せこけた女性が立っていた。
姫宮さんは妹キャラ。




