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優等生は誰がために  作者: うえりん
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第二十二話 風間くんの苦悩

妹の愛が重い。

「というわけで、乙女よ。月島さんの趣味趣向と、今どきの女子高生のマストアイテムを教えておくれ」

「ああ、兄さん。遂に他人の意見を聞き入れる覚悟ができたのですね。月島さんは乙女にとっても大切な存在。力の限り協力させていただきます」


 と言って目に涙を浮かべるのは、我が愛しの妹乙女である。


 早いもので今年一四になった中学二年生である。


 女子中学生と言えば、女子高生にこの世で最も近い存在。

 しかも乙女は僕と同じく月島さんの幼馴染。これ以上の情報源はないだろう。


「乙女はうれしいです。毎年月島さんの引きつった笑顔を見るのは忍びないと、常々考えていました。兄さんの贈る物といえば、およそプレゼントからかけ離れたものばかり。一体なぜこうなったと、あれこれ話し合うのが毎年の恒例行事となっていました。悲しみの連鎖は断ち切らねばなりません」

「そんなことをしていたのか。ならば話は早い。彼女は一体なにが好きだろう?」

「好き。と言いますれば、やはりテニスではないでしょうか」

「おお、これは早くも正解に近いのではないか? 確かに彼女は中学生からテニス部に所属している。テニス、またはスポーツ用品に的を絞るか。無駄なものという括りからは外れるが」

「いいえ兄さん。早計は禁物です。仮にも月島さんはアスリート。使う道具・装備にもこだわりがあって然り。素人である兄さんが選んでも、それらに比肩しうる性能を確保できるとは思えません」

「ううむ。まったくその通りだ。やはり乙女に相談してよかった。危うくまた失敗するところだったよ。僕はよい妹を持った」

「うふふ。もっと褒めてもよいのですよ?」


 と言って体を寄せ、最終的に僕の膝の上へと座った。

 まったく、体は大きくなっても中身は昔と変わらない。甘えたい盛りは過ぎただろうに。


 僕は乙女の頭を撫でながら思考を再開した。


「となると、やはりテニスは鬼門か」

「とりあえず、保留としましょう。捨てるには惜しい意見ですもの」

「では、他に心当たりはあるかい?」

「それが、思い当たらないのです。月島さんとは中学校にあがったあたりからあまり会わなくなったもので。ですが、女性の欲しがるものでしたら、乙女にも心当たりがあります」

「おお、それはなんだい?」

「ずばり、かわいいもの。です」

「かわいいもの! なんて無駄そうな響き! 完璧じゃないか乙女よ!」

「褒められているのかしら?」

「もちろんだとも。して、かわいいものとは、一体なにを指すのか」

「キャラクターデザインのぬいぐるみなどどうでしょう? 私もかわいい鉄道模型たちに囲まれていると幸せを感じます。月島さんには贔屓のマスコットなどはありませんの?」

「うーむ。聞いたことがないな」

「ならば、月島さんのご友人に訊ねればよろしいのではなくて?」

「そうしてみる。元より明日、聞き込みをする予定なのだ」

「がんばってください。乙女は応援しています。ですが気がかりが一つ・・・・・・果たして高校生にもなって、ぬいぐるみを欲しがるでしょうか。かわいいものと問われ、答えてしまいましたが、やはり中学生の感性。高校生のそれとは、異なっているかと」

「うむむ・・・・・・言われてみれば確かに。最近読み始めた女性誌にも化粧品特集はあっても、ぬいぐるみの記事はなかった」

「兄さんは、そんなものを読んでいるの。乙女は若干引いております」

「これも恋をするためだ、堪えておくれ。しかし女性誌で思い出したが、アクセサリーなどどうだろう? どの雑誌にも、必ず記事が掲載されていたんだ」

「まあ! それ、それですよ兄さん! 高校は中学と違って、多少の装飾はお目こぼしをいただけるのでしょう? 街行く女子高生のみなさんが、こぞって腕輪やネックレスをしているのを見たことがあります。正に女子高生に贈るに相応しいと思います」

「そうかそうか。ならばアクセサリーでひとまず決定しよう。後はなににするかだ」

「もし学校にも身に着けていくと考えると、あまりに派手なものは避けるべきですね」

「ああ。小さく目立たないものがいいだろう。指輪はどうだ?」

「いけません。絶対に」

「・・・・・・乙女? 急に怖いぞどうした」

「いえ、兄さんの無神経さに腹など立てていません。それよりも、いかに親しい仲とはいえ、指輪はいかがなものかと」

「なぜだい?」

「重いのです」

「あんなに小さいのに?」

「そういう意味ではありません。いいですか? 指輪といったら婚約指輪や結婚指輪がまず思い浮かびます。婚約指輪は英語ではエンゲージリング。従わせる指輪です。お付き合いもしていない異性に、そのような連想をさせる贈り物は、相応しくないでしょう」

「もし乙女が好きでもない男にそんなものをもらったとしたら?」

「正直引きます。通報もあり得ます」

「怖い・・・・・・僕はプレゼントが怖くなったよ、乙女・・・・・・」

「おかわいそうな兄さん。ですが安心なさって? 乙女は兄さんからいただいた指輪ならば、喜んで左手薬指にはめます。むしろはめてください。サイズは六号で少し大きいくらいです。大丈夫。法定年齢に達する頃にはぴったりになっています」


 とりあえずアクセサリーにしようということで、その日の話し合いは幕を閉じた。


 自室にこもり姫宮さんに秘密で購入した女性誌の中から、高校生向けと思われるものを選びページを開いた。


 小悪魔やごつもり、ゆるふわにかれぴっぴといった摩訶不思議な言葉で溢れかえっている。

 それらの用語についての考察は後に回すとして、今流行のショップについて書かれた記事に目を通していく。


 やはり、アクセサリーは女子高生の必需品らしいとわかる。

 限られた文字数の中にこれでもかと商品に関する情報が詰め込まれ、これを買えばクラスの女子から羨望の眼差しを受けること間違いなしと思えてくるのだ。


 ――て、ちょっと待て。


 女子からの眼差しだって? 僕はなにか読み間違えただろうか。


あれこれ考え過ぎたあげく、めちゃくちゃになることってありますよね。

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