第二十一話 プレゼント会議③
なんだかんだ言って、姫宮さんは面倒見がいいです。
「既に妹の携帯電話に登録済だよ。僕が登録した」
「なぜ? 自首?」
「なんで犯罪者確定なのさ。ほら、僕になにかあったときに、頼るために必要だからね。他にも役所とか病院とか、いざというときに必要な施設は網羅しているよ」
「ひどく事務的ね。でも、そういった冷静さと客観的な視点こそが、いざというときに必要なのも確かね。だからと言って、プレゼントを選ぶときにまで持ち出すのは、NGだけど」
「うーん。どうしても自分が欲しいもの以外思いつかなくてね。だから無駄なものが欲しいという君の意見は参考になるよ」
「・・・・・・念のために言っておくけれど、無駄なものならなんでもいいってわけではないからね。普通に役立つものは喜ばれるもの。あなたの場合、それが極端な上に致命的にセンスがないのね。もはや不憫ですらあるわ」
「そんなこと――」
「あるのよ。女の私が言うのだから、間違いないわ。聞くのが怖いけれど、これまでの会話を総合して、一体どんなものを贈る気なのかしら? 思いつくものを言ってみなさい」
まずい。
ここで返答を間違ったら、見捨てられるかも。
ていうか無駄なものって、一体なんだ?
石ころとか松ぼっくりとかか? 全然わからない。
ここは多少の批判を覚悟して、機能性に着目しようと思う。僕が最近買ったものを言ってみた。
「・・・・・・サプリメント、とか?」
「あー、うん。幾分マシ。もっとも、元がひどすぎたから、比べるのもあれだけど。――して、その心は?」
「女の子は綺麗になりたいと願う生物なんだろう? ならば、体を美しく保つため、各種栄養素を補えるサプリメントが最適じゃないか。もちろん、きちんと食事を採っていれば必要のない、無駄なものだ」
「あくまで効率と利便性重視な点を除けば、概ね正しい意見ね。でもダメよ。記念日には記念になるものを贈らないと。特に十代の女子にはね。まだ家に養われている人がほとんどだから。消耗品や必需品は親がそろえてくれるもの」
「ふむ・・・・・・なら、壺とか?」
「なんで壺よ。骨董品と言いたいのかしら? 渋過ぎるでしょ」
姫宮さんは軽くこめかみを抑え瞑目した。頭が痛いのだろうか。
・・・・・・あ。常備薬の詰め合わせとかいいかもしれない。
――って、これも利便性重視だからダメか。
月島さんの喜びそうなものはなんだろう。毎年繰り返してきた思考に頭を悩ませていると、姫宮さん軽い溜息とともに言った。
「いいわ。プレゼント選び、私も付き合うわ。一緒に買いに行きましょう」
「へ?」
「彼女の誕生日が五月五日なのよね。ゴールデンウィーク真っ只中ということは、予定が入っている可能性もある。あなたは彼女の予定を訊いておいて。当日にプレゼントが渡せなければ、予定を繰り上げることも視野に入れないと。それと情報収集ね。あなたは彼女の幼馴染なんだから、彼女の知り合いくらい知っているでしょう。欲しがりそうなものを聞き出しなさい。ちゃんと月島さんにばれないようにやるのよ。わかった?」
「了解だけど。一ついい?」
「どうぞ」
「プレゼント選びに付き合ってくれるの?」
「そう言ってるじゃない。そうね、次の休日でいいでしょう。隣町にショッピングモールがあるから、そこにしましょう」
「うわー、うわー」
「なによ」
「いやだって、これってデートってやつだろう? 僕初めてだよ」
「そうね。内容はどうあれこれはデートだわ。だから、あなたも気合を入れてことに臨みなさい」
「ああ。わかってる。デートは男の子がリードして、女の子を飽きさせないようもてなすことだって雑誌で読んだんだ」
「いい心がけだわ。本当なら恋人と行くものだけれど、あなたの恋に目途が立たない以上、こういった経験を先に済ませてしまうのもいいでしょう。でも勘違いしてはダメよ」
「! それはもしや『ただ一緒に買い物にいくだけで、別にあんたと付き合ってなんかないんだからね! 勘違いしないでよね!』という伝説の・・・・・・⁉」
「期待しているところ申し訳ないけれど、違うわ。そんな台詞まともな女の子が言うはずないじゃない。それに、この私がデートしてあげると言っているのよ? 勘違いするなと言う方が酷というものよ。むしろ勘違いしない男なんていないわ」
「へー。僕はちゃんとわかってるよ?」
「そうね、そういうところが残念なのよ・・・・・・。私が言いたいのは、デートにばかり気をとられて、プレゼント選びをおろそかにしないよう、注意しなさいってことよ。私たちの第一目標は、あくまで月島さんのプレゼントを確保すること。それを肝に銘じなさい」
「なんて頼りになるんだ。どうして姫宮さんはそんなに男女交際に詳しいんだい? 友達いなかったんでしょう?」
「うるっさいわね。昔ちょっと調べただけよ」
「なるほど。恋愛やおしゃれの話題に精通しておけば、大半の女の子と仲良くできるものね。友達作りの一環だ。そしてそれは徒労に終わった。悲しい思い出だ」
「余計なお世話よ。あんた無駄に鋭いときあるわよね。なんでそれが月島さん相手にできないのよ・・・・・・」
次の日曜日、駅前に午前一一時集合。
遅刻厳禁。以上が決定し、その日は解散となった。
プレゼント選びまで時間がない。早速情報集め開始だ。
次回、妹の涙。




