第十二話 彼はUMAへ進化した
あの人がまさかの大変身!
セリフめちゃくちゃ読み難いと思います。すみません。
その後数日の間、周囲の態度がよそよそしくなったのは言うまでもない。
明らかに弱い者いじめを通り越した虐待を働いたのだから仕方がないが、バスケ部に同情する者が多かったのが腑に落ちない。彼らは当然の報いを受けたまでのはず。
「バスケ部存続ですって。一致団結して、全国目指すそうよ」
「へー。潰れればよかったのに。無駄な努力って言葉、知らないのかな」
「そうよね。あんな弱小部、あっても予算の無駄よ。いっそもう一度試合申し込んで、今度こそ草の根も残さずあいつらのプライド焼き払ってやろうかしら」
「やめとこうよ。時間の無駄だ」
「そうね。どうせ一回戦敗退だろうから、そのとき指さして笑ってやればいいわね」
暇である。
それも当然だ。あの場には裏生徒会の顧問である川村先生もいて、一部始終を見ていたのだから。
「頭を冷やせ」
そう言われてしまった。
依頼を完遂しただけだと主張したが聞く耳を持ってはくれず、ただ疲れたように先の言葉を繰り返すだけであった。
また婚期が遅れたに違いない。僕の呪いも大したものだ。
というわけで、活動自体は続けているが、肝心の依頼主は川村先生に止められているため、しばらくはなにもすることがなかった。
姫宮さんに薦められた本はすべて読んでしまったので、新たに本を借りるか,姫宮さんがどこからか持ち出してきたボードゲームを定時までプレイするのが日課となった。僕の恋はいつ始まるのだろうか。
すると、コンコンとノックの音が聞こえてきた。急いでボードゲームを片付け姫宮さんが「どうぞ」と言った。
「こんつぁー。その節はどーもー(語尾上げ)」
と言って入って来たのは、巨漢の三年生。元・バスケ部部長の山野辺先輩だった。
しかし一目見て彼に気づくことができなかった。
なぜなら、彼の頭がオレンジ色の毛でおおわれ、肌は浅黒く変色していたから。
「先輩⁉ 山野辺先輩ですよね⁉ どうしたのですその頭は! まさか試合の後遺症で脳に影響が⁉」
「いやいや違ぇってー。マジ風間っち落ち着いた方がよさげだしー」
「こっちがいやいやですよ! なんですかその頭の悪いしゃべり方は! あの温和な先輩はどこに行ったのですか!」
「ちょっ、黒歴史ばらすなし。あのときの俺っちマジ若かったつーか、青春なうの真っ只中なわけでして?」
「キモイ! あの狭間を超えた!」
「姫宮さん落ち着いて! 狭間くんのキモさはそこまでじゃない!」
「もー、風間っちも姫のん「姫のん⁉ それまさか私か⁉」もクールにゴーよ? マジそれ社会のジョーシキ。OK?」
どう考えてもあなたの常識がアウトですよ。最早混乱し過ぎて僕も姫宮さんもなにも言えなかった。
山野辺先輩はそんな僕らを無視して勝手にしゃべりまくった。
「じっつぁさー、俺っち二人にマジカンシャしてんっでマジでー。ラストゥあちょいアレだっけどぉ、バスケ部みんなまとまってぇ? ヌマとサワ和解っしてぇ? あの試合マジ注目度マックスで? あの後女っ子たちかあー話しかけられまくりんぐ? 俺っちのモテ期到来? むしろガールが襲来? っでー、なんとぉー、俺っち彼女できましたぁーっ!」
山野辺先輩が入り口に向かって「っこいよー。ゆっこー」と叫んだ。
まさか彼女が来ているのか。
一体どこの地球外生命体が現れるのかと思っていると、姿を見せたのは――なんというか――普通の女子生徒だった。
肩までの髪を輪ゴムで二つに縛り、ノーメイクでも全然いける。
校則順守のスカート丈から伸びる足は細長く、きちんと膝をそろえ手を前で組む姿は、とても清楚である。
つまり簡単に言って、とてもかわいい女の子である。
「こっつがぁ、ゆっこ。俺っちのかのじょー(語尾上げ)」
「もう、だめだよたっくん。ちゃんとごあいさつしないと。初めまして。一年一組の竹宮由紀子です。あの試合見てました。あのとき聞いたたっくんの叫びが声が耳から離れなくって。それであの後思い切って話しかけて、その・・・・・・お付き合い・・・・・・させていただいております。たっくんからお話を聞いて、ご挨拶しなければならないと思い来た次第です。お二人のおかげで、私は彼と出会えました。本当にありがとうございます!」
「っめろってゆっこー。俺っち恥ずいじゃんよマジでぇー。黒歴史拡散とかぁマジシャレならんしー。でもぉー、そっゆことなんでぇ。風間っちと姫のん、マジカンシャ! もはやリスペクツ!」
両手でピストルを作り「バンバン!」と、山野辺先輩。
なんかもう、キャラが大気圏外までぶっ飛んでる。
恋は人を変えると聞くが、今の山野辺先輩は物の怪か未確認生物としか思えない。まさか人の垣根を超えてUMAにまでしてしまうとは・・・・・・恋とは実に恐ろしい。
「っじゃー、そっゆことなんでぇー、ばいならー(語尾下げ)」
「もう、さようならでしょ。では、私もこれで。お世話になりました。私たち、きっと幸せになります!」
山野辺先輩はどでかい手をぶんぶん振り回し、竹宮さんはきちんとお辞儀をして、手を繋いで去って行った。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
なんだろう。このやるせない気持ちは。
姫宮さんを見ると、呆然と扉を見つめたまま静止していた。
小さく「くたばれくたばれくそが」と繰り返している。きっと現実を受け入れられないのだろう。
彼女と違い、恋愛というものを理解できない僕は傷が浅い。
とりあえず落ち着き、冷静になってから準備を始めよう。もちろん、山野辺先輩に呪いをかける準備である。
彼に限りない苦痛と永遠の死が、どうか訪れますように。くそったれ。
次回から新章です。




