ディストピアはらぺこ遭難者
「Pちゃーんこれって食べれる?」
「解析シマス。可能デス」
雑少女は手にした雑草をPちゃんに渡した。
Pちゃんは雑草を手に取ると抑揚のない声でそう返事した。
「Pちゃん。こっちは?」
「加熱ガ必要デスガ食ベレマス」
別の少女がPちゃんに木の実を手渡すとPちゃんは抑揚のない声で答えた。
「よーし。鍋にしよー」
「明日は救助がきたらいいね」
2人の少女は遭難していた。
日数は本日で3日目。日帰りの予定なのでたいした準備もなく、山道で2人仲良く足を踏み外して落下したのだ。
幸いケガは無かったが、食べ物も無かった。
水分は手持ちの最新型水筒を使えば夜のうちに空気から変換出来るが、食べ物はそうも行かない。
手持ちの食料はおやつのみ。
しかも落下した先は運悪く携帯端末の電波も圏外である。
それでもすぐに救助が来るだろうと晩ごはんに全部食べてしまったのだ。
2日目昼にお腹が減った2人は生まれてはじめてこの山に生えてあるその辺の草や木の実等が食べられる事を知った。
幸い鍋にできる器と燃料があったので、少女たちはその辺の草や木の実などを食べてその日の昼は飢えをしのぐ事ができた。
そしてそのまま今日まで恐る恐るその辺にあるものを食べてお腹を膨らませていた。
「Pちゃんは電波を拾えた?」
「拾エマセンデシタ。緊急信号ヲ発信中デス」
Pちゃんは一見人間の少女に見えるがロボットである。
その為雑草や木の実が食べられるか解析ができるのだ。
「早くかえっていつものご飯が食べたい」
「私は結構楽しいかも」
念のため持っていた非常用袋にはナイフも入っていたので、雑草を食べやすいサイズに切り揃え、木の実の殻を割る。
調味料はスープの素があるのでそれを使っているが、具のあるスープというものが彼女らには既にイレギュラーであった。
「ねぇ、今日も星がキレイだよ」
ボブカットの少女が言った。
彼女はこの非日常を存分に楽しんでいる。
お風呂に入れないのは不満だけど、それ以上に新しい体験が楽しいと感じていた。
「もう見飽きた」
ショートカットで眼鏡をかけた少女は毛布代わりのアルミシートに包まるとそう言った。
星は珍しいが3晩も続けてみれば飽きる。携帯端末のバッテリー残量も僅かだし、明日は雨の日だ。Pちゃんの充電が出来ないのでそれを考えると不安でしょうがない。
「…」
Pちゃんはスリープモードに入っていて何も話さない。
そもそもこういった何気ない会話ができないのだ。
「昨日はもっと楽しそうだったのにー」
「それも3日だと不安でしょうがなくなる」
「不安?大丈夫だよ。だってこの世界どこでも携帯の電波は入るし、徹底的に人類は管理されてるんだよ?電波が入らない場所なんてかえって珍しいから、明日こそ見つかるよ」
ショートカットの少女に比べ、ボブカットの少女はかなり楽天的だった。
「それもそうだよね。電波が入らないところを片っ端から調べてればそろそろ見つかるよね?」
「えへへー手を繋いであげるから、もう寝よう」
本当はボブカットの少女も恐かった。
恐怖をごまかすのように2人は手を繋いで眠った。
翌朝、かなり早朝に2人は無事保護された。
Pちゃんの非常用発信器が救助隊に発見されたのである。
本当にものすごく運が悪くたまたま携帯の電波を届かない場所に落ちていたらしい。
2人は入浴後に健康診断を受け、そのまま3日程病院に入院することになった。
「劣悪な環境の影響がないか確認の為3日も入院して下さいだってさー」
つまらなさそうにボブカットの少女。
「何もしないのは贅沢っていうじゃない。ゆっくりしましょ」
ショートカットの少女は特に不満も漏らさず携帯端末で本を読んでいる。
「オ食事ノ時間ニナリマシタ」
ナースロボが2人分の食事の乗ったプレートを持ってきた。
プレートに乗っているのは分厚いビスケット状の食べ物が2枚。それに飲み物と申し訳程度のサラダが乗っている。
「葉っぱが苦くない。美味しい」
ボブカットの少女は目の前のサラダを一口でたべるとしみじみ呟いた。
「野菜嫌いだったのにね」
いくらあの娘が野菜嫌いでも、あの雑草に比べたら美味しいんだろうなぁとショートカットの少女は思った。
そして食事は味も材料も全部管理されたモノの方がPちゃんには悪いが美味しいとショートカットの少女は思った。
そして何事もおこらず無事3日が過ぎ、彼女たちは再び平和な日常に戻るのだった。
・・・・・
「ねーねー。遭難したって本当?」
休み明け、遭難したせいで3日ほど入学が贈れた2人はそれなりに注目された。
「本当。つらかったわー」
「楽しかったよ」
そして、その時の事を話す様子は対照的だった。
ショートカットの少女は嫌そうに詳細を濁すが、ボブカットの少女はあったことを非常に楽しそうに話すのだ。
そして、雑草を食べた件でほとんどの生徒がドン引きする。
一緒に遭難した少女にはその部分は二度と話さないでと泣きつかれた。
町には雑草1本生えていないこの世界で山にあるその辺の草を食べるなんて非常識もいいところで、普通の感覚では隠したい体験なのだ。
「ねぇ、その話後でこっそり聞かせてくれないかな?」
ポニーテールの活発そうな少女がそう言った。
「隣のクラスのサリーっていうんだ」
「うん。私はジュリ。よろしくね」
そして2人はこっそり外の草や木の実を食べるようになるのだが、それはまた別の話。
深夜アニメってキャラクターがテンプレ化している気がするので自分もこれで何か書いてみようと思ったけどなかなか進まないし既に誰かが書いてそうで不安だしで…
キャラクターの名前とかも既に同じ元ネタを使ってる人がいそうだし…
とりあえずこのあと2人は「ぼうけん部」という部活を作って、新たな仲間も加えてディストピア飯しかない世界に一石を投じるべく食の追及をしていく予定です。
続きを書くのはまだ先になると思うので見切り発車で短編を書き逃げです。