2/9
第2話「妖精の朝」
暁が津波のように山を越えて
赤い空気が街並みを抜けてくる
木々の枝に残る雪の巣
早起きのスズメは羽根を広げ
出来たての陽を浴びる
庭の妖精は蕾の中で透けている
椿の花と蕾は交互に並び
歴史を重ねた幹を飾り付ける
小さな古い洋館の二階から
子供の声がする
勢いよく階段を降りる音
赤い椿は白い壁によく似合う
小さな庭をゆっくりと暁が歩く
蕾を揺らし照らしながら
おはようと妖精に言いながら
真っ赤な陽射しは
赤ちゃんの頬
ゆっくり成長して一日を創っていく