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第一章 『新ヶ島』メランコリー ⑥


 二号室に戻り、ちょっとそこまで用のサンダルを脱ぐ。

 奥に目をやると、今までヒトが居たとは思えないほど閑散としていて殺風景だった。

 座布団に胡坐をかき、部屋内を見渡しても同じだった。

 これがいつも通りなのだが、変な感じがした。


 ブッ、ブーッと新着メッセージ一件を知らせるバイブレーションに円卓が響いた。




白衣貂子 「話は今度改めてするわ」




 すぐ返信しようと思ったが、待て。

 昔すぐ返したり逆に遅すぎたりはNGと聞いたことがある。


 ベストのタイミングっていつなんだよ・・・


 まごついている間に何度か連続で振動した。




白衣貂子 「その時こっちからまた連絡する」

     「またアンタ家ね」

     「カルピスごちそうさま、テーブルにあったのも頂いたわ」

     「じゃっ」




 あの女泥棒め・・・結局ほぼ二本持っていかれたわけか。


 しかし、等価交換とはほど遠い大きな対価を支払ったことをヤツは知らない。


 オレと間接・・・知らないほうがいい。いいに決まってる。




ハイジ  「了解。その時はよろしく。今度は事前に大きめのカルピス買っておく」

 


白衣貂子 「絶対買っておいて」

     「無かったら即帰る!」

     「必ずね」




 ブーブーブーブーうるさいんだよ・・・

 連続的振動に不快を覚え、側面のスイッチをオフにした。




ハイジ  「わかったわかった。帰り気をつけてな」




 しばらく返信もなかったのでパジャマに着替えることにした。

 パジャマといっても、高校のジャージなのだが。

 意味もなく長ズボンのタックの糸を抜いてある。コレは田舎特有の風習なのであろうか。

 クラスのイケイケ上位連中が先輩に教わり、次第にオレたち下位まで広まった。糸を抜いていないとダサいヤツ扱いされることから流されるままオレもやってしまった。

 今思うと、そんなルールに流された自分がダサい。


 ライフポイントが残り二パーセントほどのスマホに回復魔法ケーブルを挿し、さて横になるかと思った時、衝撃の事実に気づき電撃が脳みそを貫いた。

 

 他人が寝てたベッド。

 貂子が寝てたベッド。

 JKが寝てたベッド。


 オレ・・・ココで寝るのか・・・!?


 見慣れた布団をじっくり観察する。


 心なしかフローラルな香りがするのは気のせいであろうか。

 オレの香りセンサーがビリビリと反応してやがる・・・ゴクリッ。


 ピコンッ!


「うわっ!」


 素っ頓狂な不意打ち音に、バネの如く飛び上がってしまった。

 マナーモードの解除が返って仇となった。


 ピコンッ!ピコンッ!




白衣貂子 「家に着いた」

     「いや、実際は少し前に着いている」

     「気にしてるようだったので一報してやった」




 監視されているのかというタイミング。


 まぁ、たまたまだろうけど?べつに変なことしてないし?

 てか、なんでアイツ連投型なんだよ・・・




ハイジ  「無事でなにより。寝ます!日程決まったらよろしく」




 ふぅ、これでひと段落だ。

 いやぁ、焦った焦った。


 あとは寝床だが・・・


 自分の家で床で寝るのもおかしいし、なによりまだ夜は冷える。

覚悟を決めるしかないしかない。

 今日入らなかったら一生このベッドに入れない気さえする。

 もう一度確認する。

 明かりを消し、深く深呼吸。


「失礼致します」


 一礼してから、思い切って布団に入った。

 当たり前の事だが、いつもの布団はいつもの布団だった。


 何やってんだオレは・・・

 暗い天井を仰いだ。


 

 新ヶ島に出てきて、大小様々の災難に遇った。

 悪夢に始まり、何度も事故に遇った。


 そんな日々をひっくるめて、今日が一番凄絶だった。

 配達中に死にかけた日と白衣貂子の襲来が同日。

 とんだXデーとなった。


 オレはこれからどうなってしまうのだろうか・・・


 ふと、スマホを手に取った。

 アラームのセットを忘れていたからである。

 いつもの時間に設定しホームに戻る。


 新着は、無し・・・か。


 メッセージアプリの連絡先一覧を一瞥し、明るい画面を枕元伏せ、目を閉じた。


 


家族を除く登録者の中で、女性は白衣貂子で二人目(・・・)だった。




あれほど警戒していたベッドだが、不思議と熟睡できた――――


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