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短編(その他)

妖怪売り〼。

作者: 鴨野朗須斗

 狂い桜の咲く井出道を曲がると、奥に一軒のあばら家がある。屋号もなくひっそりと佇むその店は、人間には叶えられそうにない願いすら等価を払えば叶えてくれるらしい。



 日月(ひづき)洋子(ようこ)はそれはそれは美しい女だった。

 街を歩けば老若男女構わず振り返り、虜にした。二十四を過ぎたがその容姿が原因で彼女の周りには厄介事が常に潜んでおり、職を何度変えてもそれは付きまとった。洋子は疲れ果てていた。誰もがくだらないと一蹴する噂を頼る程に。

 洋子は何日もその店を探し歩いた。どの街にあるとも知らない、存在さえも怪しいその店を。昨日は紺屋町を、その前は古大工町を、その前は――どこだっただろうか。今自分が立ち尽くしている場所すら、洋子にはわからなかった。

 ついぞ最近買ったはずの洋子のパンプスは、随分と踵がすり減っていた。洋子の歩き方は癖があるのだろうか、右足のヒール部分には小さな傷がいくつもついている。こんな靴じゃ、お店に立てないなと彼女は独り言ちた。そして形のいい唇から自嘲するような声が漏れる。



「私がどんな襤褸(ぼろ)を着ていたって、同じか」



 汗と泥に塗れていても隠せない美貌が、洋子にはあった。

 誰もが美しいと褒め称え羨む容姿、それは洋子にとっては呪いのようなものだった。男のように髪を短く刈り上げても、みすぼらしい服を纏っていても、皆が洋子を讃え、愛の言葉を囁く。

 美しい美しいと外面しか見ようとしない他人たちが、洋子は嫌いだった。


 沈み込んだ彼女の心を映すように、ぽつりと一滴の雫が天から落ちる。天候すら私の邪魔をするのか、と洋子は八つ当たり気味な思考を飲み込んだ。

 嫌でも人目を引いてしまうので濡れ鼠になるのは避けたい。そう思った洋子は雨除けになる場所を探し、水を吸って色が変わったパンプスで歩き出した。

 否、歩き出そうとした。しかし視界の端で見つけたのだ。真夏に見ることのできない筈はずの、桃色の花弁を。


 洋子は濡れるのを構わず走り出す。

 ――あった、あった!

 洋子は思わず声を張り上げた。

 狂い咲きの桜は、まるでそこだけ世界を切り取ったような不思議な気配を纏っていた。周囲は何度も確認したのに、こんなに目立つものを見過ごすはずはない。街並みも今までと同じだが、真夜中に墓地に迷い込んでしまったような薄ら寒さを感じた。

 洋子は花には聡くはない。だからこの季節外れに咲き乱れる桜が、どんな名を持つのかは知らなかった。それでも今まで見慣れてきた花々とは一線を画したものであるということは、本能で感じ取れる。逞しい幹に儚さを感じる花弁。洋子は本来の目的を忘れて、うっとりとその桜に見とれてしまった。


 どのくらいの時が流れただろう、洋子は唐突に己が目的を思い出し振り向いた。桜は三又路の真ん中に存在しており、その中の一方は人が一人通れる程度の大きさだった。おそらくこちらだろうと当たりをつけた彼女は、カラカラに乾いた口を閉じて進みだす。

 するとその細道は、あっと言う間に行き止まりへとたどり着いた。袋小路の最奥は一軒の、古い長屋だった。もう建てられてから何年も経っているであろう長屋は、風を受けて引き違い戸のすりガラスががたがたと小さな音を立てている。古びたただの家にしか見えない長屋には、達筆な筆字で申し訳程度の張り紙がされていた。


 ――妖怪売り〼。


 あまりの怪しさに洋子は笑ってしまいそうになった。妖怪、だなんて。こんなにも詐欺です、と自らを主張しているものに普通ならば頼りはしないだろう。しかし、こんなに馬鹿げた張り紙を笑い飛ばすことができないほど、洋子は追いつめられていた。

 生唾を飲み込み、その白魚のような指を引き戸にかける。引き戸は平屋の外見とは裏腹に、音を立てることなく軽く静かに開いた。



「いらっしゃい」



 六畳ほどのその店は、半分が土間だった。残り半分には洋子の膝程度の高さに畳が敷かれ、玄関ではなくまるで小さな駄菓子屋のような作りだ。土間部分には傘や草履など、この家に住んでいる人間のであろう生活必需品が置かれていた。畳の先に左右、そして中央の押戸があり、その戸は閉じられている。

 そのおかしな作りの狭い部屋に、ひとりの青年がいた。藍色の甚兵衛を纏う青年は、暑そうにうちわで自分を仰ぎながら畳の中央に座り、片足で胡坐をかいてもう一方は投げだすようにこちらを向けられている。年は二十を過ぎたくらいだろうか。まっすぐとした黒髪は汗でうなじに張り付いている。男性なのに洋子と変わらないほどの長さを持つ青年の髪を見て、洋子は今までの緊張など忘れてヘアクリップを貸してあげたくなった。



「あ、あの……こちらが願いを叶えてくれる店ですか?」

「願いを?」



 洋子の言葉に、部屋の端に積んであった座布団を引きずりよせていた青年は首をかしげる。



「そんなたいそうなものじゃない。そうだな……玄関に貼ってあっただろ? 妖怪売りますって。まあ俺の手持ちにお嬢さんの希望にぴったり合致するものがいるなら、願いを叶えるってことになるかもね」

「……私、どうしてもやりたいことがあるんです!」

「あーいやいや、まあ落ち着いて。商談は座ってゆっくりとやろうじゃないか。な?」



 そういいながら青年はぽんぽんと彼の隣に置かれた座布団を叩く。洋子はそれに従い、靴を脱いで畳の上へと上がった。





 青年――ミヤと名乗った―――からしてみれば、洋子の語る半生はつまらないものだった。幼い頃から美しく、他人の好奇な視線にさらされ、同性からは妬まれた。彼女が成長してからは欲望が向けられることが恐ろしく、こんな人生を捨ててしまいたい、でも死ぬ勇気はないと洋子は泣いた。

 おそらく他の女がここにいたら言うだろう、自慢か、と。

 さめざめと泣く洋子はミヤから見ても確かに美しい女性だった。流れるような癖のない黒髪に白い肌、儚さを感じさせる容姿は男からすれば守ってやりたくなるだろう。美しすぎるから苦労するなんて美人も大変だな、とミヤは無感動な感想を抱いた。



「私は、誰からの注目も集めずに、静かに、ただ穏やかに暮らしたいんです」



 舞台上の女優のように己が薄幸さを語る洋子に、ミヤはため息を飲み込んだ。ミヤには洋子の苦悩は理解できなかった。他人から見れば、喉から手が出るほど羨まれてもいい立場なのだ。今回は随分な客が来たな、とミヤは心の中で独り言ちた。



「とりあえずさ、整形してみたら?」

「美容外科に行ったら断れました」

「変な髪形にするとか」

「髷を結っていたら、呉服屋のご主人から着物をもらいました」

「……誰もいない無人島とかで暮らすとか。今の通販は割とどこでも届けてくれるし」

「一度人口が10人もいない島に住んだことがあるのですが、昔の知り合いが追いかけて来てしまって……その村は急激に発展して、今では橋が架けられています」

「…………わかった。なんとかしよう」



 ミヤは洋子の人生が自分の想像以上のものだったことに詫びたくなった。

 洋子の話を聞く限り、これは人の手に余ることだろう。そうなればこちら側の領分だ。ミヤは姿勢を正して、洋子へと視線を向けた。



「話をまとめると、あんたは自分以外の何物かになりたい。違うか?」

「そ、うです。私は、私以外の誰かになりたい!」



 洋子が鬼気迫るような表情でミヤに詰め寄る。ミヤは彼女をなだめすかしながら、指を一本立てた。



「方法はある」

「本当ですか!?」

「だが、それをするとあんたは二度と日月洋子にはなれない」

「それが望みです!」

「かなり時間がかかるぞ」

「いくらでも、待ちます」

「次に歩む人生が、幸福なものであるという保証もできない。死にぞこないの老人だったり、虐げられている立場の人間だったり、とんでもない醜男になるかもしれない」

「少しでも、日月洋子(わたし)とは違う生活ができれば構いません」

「……あんたが次になる別人は、幸せな人生を送っている人間である確率はとてつもなく低いぞ。成り代わる相手は、あんたみたいに人生に嫌気が差した人間ばかりだからな」



 店を訪れていた時には揺らいでいたはずの洋子の瞳は、今はまっすぐとミヤを射貫いていた。



「決心は堅いようだな」



 洋子が頷く。

 じゃあ、ちょっと呼んでくるから。そういってミヤは奥へと続く戸の先へと消えた。





 洋子は手ぶらでミヤの店から帰っていた。

 彼が奥の部屋から出てきたと思うと、虚空を眺めて何かと会話しているように見えた。彼の話し相手は洋子には見えなかったが、おそらくミヤの言う妖怪(・ ・)が相手なのだろう。そこまで頭の中で考えて、洋子は途端にミヤが胡散臭く感じた。洋子はミヤに自分の境遇から現在の生活まで全て話してしまっている。何も得ていないのに、多額の報酬を要求されたらどうしよう。ミヤは興奮がさっと冷めてしまうのを感じた。

 ところが、洋子の想像とは裏腹にミヤは快く彼女を送り出した。報酬の話を訪ねてみたが、彼はすべて終わってからでいいと返す。ただ怪しい家で自分の愚痴を吐き出して来たような状況に、洋子は腑に落ちない気持ちで自宅へと戻った。


 それからも洋子は今まで通りの生活を送っていた。洋子の勤める花屋で、花を買っては洋子に渡していく男性もいつも通りだ。いつも通り注目を集め、人に集られる。やはり詐欺だったのか、しかしこんな女の愚痴を聞くだけで何になる。洋子は自室でため息を吐いた。


 洋子の生活が少しだけ変わったのは、ミヤの店へ行ってから10日ほど過ぎてのことだった。

 最近、すれ違った人から絡まれることが減った。一度、視線が絡んだサラリーマンが瞳を輝かせた。また絡まれるのか、そう思ったが、その男性は次の瞬間洋子のことをまるで見ていなかったかのように、そのまま通り過ぎていった。洋子に声をかける途中で回れ右をした人だっている。

 これはもしかして、と洋子の中に眠っていた期待が再び呼び起こされた。


 次に、町中で数年ぶりにあった友人が洋子を忘れていた。

 何年も連絡を取っていないとはいえ、洋子と友人は仲が良かったと彼女は思っている。それが、まるで知らない人に声をかけるみたいに、すっごく美人ですね、モデルさんですか? などと声をかけられ、洋子は首を傾げた。


 二か月もすると、洋子との関わりが深い人間まで洋子のことを忘れ始めた。

 その異変は、花屋の店長が洋子の名前を思い出せないところからはじまる。それから10日もすると、店長は洋子を客と間違えるようになった。

 ここまで来て、洋子はようやく確信を持てた。ミヤの店で買った妖怪の効果が出てきたのだ、と。外食の時に注文を忘れられたり、買い物はセルフレジのあるスーパーしか利用できないなどさすがに困ったこともあったが、それ以上に洋子は誰の目にも止まらないことを喜び、浮かれていた。



 ある日家に帰ると、洋子がいた。

 洋子は目を大きく開き驚きの声を上げようとしたが、その唇はもう一人の洋子の手によってふさがれた。



「まあまあ、落ち着いて」



 もう一人の洋子が笑いながら言う。その笑い方は、洋子と同じ顔であるはずなのに自分とはまったく違うほほ笑みだった。



「わかるでしょ? ミヤの店の」

「あ、はい。妖怪……ですよね?」

「んーまあもとは人間だったんだけどね。そしてまた、人間に戻る」

「あなたが、私になるんですね」

「うんうん、いやーこんな美人だなんてラッキーだよ! ついてるね、あたし」



 洋子は自分もこんな明るい表情ができることを、もう一人の洋子の顔を見て知った。



「もうすぐあたしは、日月洋子になる。アナタは成り代わりにね」

「成り代わり、ですか」

「成り代わりって妖怪ね。うん、まあ詳しい説明はミヤに聞けばいいよ。時間はたーっぷりあるんだし」

「はあ……」

「明日、アナタは誰にも見えなくなるよ。あんまりフラフラしてるとミヤに怒られるけど、今後の日月洋子のことが気になるんなら、職場でも覗いてみなさい。アナタの席はもうあたしがもらうから」



 洋子は静かに頷いた。

 もう一人の洋子はご機嫌な様子で床に寝転がる。



「まあ、最後のベッドは譲るわよ。明日からはあたしのものなんだし」





 次の日、洋子が目を覚ますともう一人の洋子が鏡の前に座っていた。化粧をしているようだった。洋子とて女だ、最低限の化粧品は持ち合わせているしそれを彼女に贈る人間も多い。しかしながら、長い時間自分の顔を見たくなかった洋子は化粧をしたことがなかった。

 もう一人の洋子が身支度を終え、職場へと向かう。もう一人の洋子は、洋子が見えていないらしく彼女がかけるすべての言葉を無視していた。

 職場では昨日まで洋子を忘れていた店長が、笑顔でもう一人の洋子へと声をかけていた。今日はなんだか感じが違うね、すっごくかわいいと笑う店長にもう一人の洋子ははにかむような笑みで答える。そこにいるのが今までの洋子と違うこと以外、職場はミヤの店に行く前の日々と同じものだった。


 誰にも見えず、声も伝わらず、何かに触れることもできない。洋子は何をしていいのかわからなくなった。何せ自分自身にすら自分の姿が見えないのだ。途方にくれた洋子は、ミヤを頼ることにした。


 日月洋子であったときにあんなに苦労したことが嘘みたいに、ミヤの店はいとも簡単に見つかった。黒地の浴衣を着たミヤは店の前で打ち水をしており、彼が顔を上げると洋子と目が合う。誰にも見えなかったはずの洋子に、ミヤはほほ笑んだ。



「おかえり」

「……ミヤ、さん」

「無事代われたみたいだね。とりあえず、これからのことを話したいから店に入ろうか」



 ミヤの店に日月洋子として訪れたときに感じたような暑さは、今の洋子には感じられなかった。ミヤは洋子の分の座布団を置き、その隣に腰かける。



「あの、私……これからどうなるんでしょうか?」

「まずあんたに売った妖怪の説明をしよう。あんたに販売したのは、成り代わりって呼ばれる妖怪だ」

「成り代わり……」

「あ、今そのままだなって思っただろ? 別に俺がつけたわけじゃないんだよ。一番最初に出会ったアレが、自分のことを成り代わりって呼んだんだ」

「はあ……それで、今は私が成り代わりなんですよね?」

「そうだねー、あんたは次に同じような願いを持つ人が来るまで、妖怪のままだ」

「次って、いつ頃でしょうか?」

「それは俺にもわからない」



 ミヤが水の入ったグラスを口に運んだ。



「前の成り代わり……長いからなっちゃんって呼んでたんだけど、なっちゃんは半世紀くらい待ったかな」

「はん、せいき……」



 人間が生まれて死ぬ程度の時間に、洋子――いや、成り代わりは言葉を亡くした。そんな長い時間、どうやって過ごせばいいんだろう、と途方に暮れる。



「ああ、妖怪にとっては半世紀なんてそんなに長い時間じゃあないよ。俺の知り合いは二百年くらい日の目を見ていない奴もいるし」



 からからと笑うミヤに、成り代わりは脱力しそうになる。もしかしたらミヤも見た目通りの年齢ではないかもしれない。



「ミヤさんは、おいくつなんですか?」

「俺? さあ? もう忘れちゃったよ」

「人間、ではないんですよね……?」

「んー多分元は人間だった気もするようなしないような? もしかしたら猫だったかも。まあ新しいなっちゃんが次の人生を手に入れるまで俺は死なないし、店も閉めたりしないから安心してよ」

「……はあ」

「まあなっちゃんが次にすることは待つことだね。成り代わりはじわじわと周囲の人間から記憶を奪って、最終的にその人に成り代わっちゃう妖怪なんだ。成り代わる相手がいないことにはどうしようもないな」

「前の成り代わりさんは、何十年もどうやって過ごしてたんですか?」

「普通に遊んだりだらだらしてたよ。あ、遊ぶっていうのは妖怪とね。この店、いっぱいいるし」

「妖怪が……いっぱい」

「商品だしねぇ。まあ現なっちゃんも妖怪だし。先々代は確か遊び飽きて暇暇うるさいから、俺が眠らせてたんだけど。なっちゃんもそうする?」



 ミヤの言葉に、成り代わりは首を振る。次の人生がどうなるかわからない今、妖怪としての生を楽しんでもいいだろう。枷のような体を失った成り代わりは、今まで持ち合わせていなかった前向きさを手に入れていた。



「とりあえずもう少し新しい体になじむと、物にも触れられるようになるし成り代わりの能力も使えるようになれるよ」

「能力? どんなものですか?」

「空を飛んだりとか? 実態を持たない系は大抵持ってる力だよ」



 俺はできないけど。そういってミヤは少し唇をとがらせた。





 妖怪になって何年が過ぎただろう。重力を感じずにふわりと空を飛ぶことも、他の妖怪たちとはしゃぎながら駆けまわることも、ミヤからなっちゃんと呼ばれることにもすっかり慣れていた。

 はじめて雲外鏡という鏡の妖怪に、自分の体を映してもらったときはなんとも情けない気持ちになった。成り代わりは真っ白な人型のぬいぐるみのような姿だったのだ。しかし、鏡をのぞいても日月洋子の顔が映らないことに、成り代わりは心が躍った。あんなに嫌っていた顔がなくなり、今ではのっぺらぼうだ。成り代わりは面倒臭がりな雲外鏡に頼んで、何度も何度も鏡を覗いた。


 異形の友人は気の良い奴もいる。付喪神や初めから妖怪として生まれた者など、成り代わりと違う感性を持っており、容姿などあってないようなものの妖怪の世界は、日に日に成り代わりを社交的にしていった。

 ミヤの店にはたまに客は来るが、待てど暮らせど成り代わりを求める人間はいない。ミヤや友人たちと過ごす日々に、このまま妖怪でいるのも悪くないとまでも思い始めていた。


 成り代わりの主観では左程時間が経った気はしていなかったが、現世では日月洋子が年を取って死ぬ程度の時間は過ぎていた。

 うだるような暑さの日、ミヤの店の戸が数年ぶりに開く。線の細い、金髪の少女だった。夏だというのに、セーラー服の下に黒い長袖を着こんでいる。その袖の下から、白い包帯がちらりと見えた。



「――あの、願いを叶えてくれる店ってここですか?」

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