性欲
僕は静かに本を閉じて枕もとの電気スタンド薄暗く照らす自分の部屋を見渡し、
心の中でポツンと感想をこぼす。
「面白かった。ナオミちゃんサイコーだぜ」
噂は聞いていたけど百閒は一見にしかずとはまさにこのことを言う。
とても僕のボキャブラリーでは言い表せないが、強いて言うなら
僕のような性癖があるならば「ご褒美」と言える内容だった。
とどのつまり、楽しかったのだが一つ問題がある。それは、本の内容のせいで
血気盛んな男子としては排除できないある欲求が発動したのだ。
詳しくいうならば、僕の下着が競泳水着のようになっているということ。
読書の間から、幾度となくこの衝動は波のように大きく小さくなっている。
しかし、その時はまだ昼間だしまだ読書中というのでこらえることが出来た。
なら今はどうだろうか?
夜の11時ころ家族は寝静まり、静かな薄暗い部屋の中、一人、一日の読書後の達成感。
ああ!誰がこの衝動を我慢できるだろうか!
それでも僕は必死にこらえる。
「落ち着け! 一昨日もやったじゃないか。僕は、サルなのか?違うだろう!!
そうだ!音楽だ!」
僕は気を紛らわそうとIphoneを手に取りユーチューブをつけた。でも、僕は無意識のうちに
女性声優が歌うアニソンなどをチョイスしてしまった。
可愛い声、可愛いサムネイル。
僕の精神が獣になるカウントダウンは秒読みだ。
「ヤバイ! ヤバイ! ヤバイ!」
そう思った僕は大好きなアニメを見ることにした。健全なアニメを見ようとした。
それは、アニメ制作をテーマにしたもので僕はその最終回を見たのだがやはり
初めて見た時と同じ気持ちになれた。
が、である。
そんなすがすがしい綺麗な気持ちになれたのにかかわらず僕の競泳水着はまだそのままであった。
はて、どうしたものかと見つめるiphoneの画面には少し卑猥な漫画の広告。
そう、僕はまたしても無意識のうちにこの卑猥な広告だらけのサイトを選んでしまったのであ。
innocentの仮面をかぶりつつ無意味に、否、意識的にiphoneの画面を下から上にスクロールさせる。
卑猥なかおが画面を文字どおり穴が開くほど見つめる。
「もっと他の広告はないか?もっとすごい広告はないか」
そして、iphoneのプライベートモードを立ち上げると同時に僕は獣になった。
僕はまたしても部屋を見渡す。
「やっちまった」
百メートルを全力疾走したのと同じ体力を使った。
どうしようもない自己嫌悪、倦怠感。
あの時クラッシックにすれば、、、
あの時普通のサイトで見れば、、
競泳水着と化していた下着は、いつもの下着に戻っていた。
それがなお一層、自己嫌悪を増長させた。
「シャワーでも浴びよう」
その後はテレビでアニメを見て、寝る前に少し本をよんでそのまま落ちた。
翌朝、天気は快晴、鳥が鳴いている」
「外いきたくないな」
空気の読めないことを考えながら僕はベットから起き上がり
「人間ってのは罪深いな」なんて意味の分からないことも一緒に考えつつ
僕の一日はまた始まった。