第二話 それが闘い
第二話 これが闘い
「俺の願い・・・」
そんな事を、思いだしながら考えているレッド。だが、まだ迷いがあった。本当に優勝して、魔騎士をやめるのかと。
「考えても仕方ないか」
開き直ったレッドは、テーブルのトロピカを再び持つと、一気飲みをした。
「そう言えば、次はもう準々決勝か」
予選Aブロックの出場者は、全部で十六人。シードがいないので、一回戦闘に勝利すれば、準々決勝になっている。
次レッドが戦うのは、今戦っているフェンリルかオラシオンのどちらかだ。
この大会の面白いところは、相手が分からない事。戦闘上にお互いが入らない限り、相手が知らされていない。なので、事前に作戦なども立てられない。だが、一流の魔騎士であれば、作戦などなくても、十分に戦えるものだ。
「そうだ。鍛冶屋いくか」
レッドは、この大会が武具変更可能な事を知っているので、モンスターの素材はたまっていたが、なかなかアグルを強化してなかったので、ナイトキャッスルにある鍛冶屋に向かった。
会場をでたレッドは、愛用の巨大バイクに乗り、スピード違反ギリギリで走って行った。
さっき素材といったが、モンスターには二種類存在する。
それは、死体が残るか残らないかである。基本的には、死体は残るのだが、グロルなどの一部のモンスターは、死体になると闇に包まれて無くなってしまう。
この、闇に包まれるモンスターは、亜騎士の頂点、コードネーム ダークが作った者だと言われている。
だが、レッドは闇に包まれるモンスターにあまり会わないので、関係ない事だった。
なので、素材も死体が残るモンスターの物だ。
アグルの素材は、鉄鉱石なのどの鉱物はほとんど使わず、鉱物に匹敵するほどの堅い鎧の持ち主のイブリ―スと呼ばれるモンスターの、鱗などを主に使われている。
イブリ―スは、伝説級のモンスターだが、実力のあるレッドが倒すには、そう難しい事ではない。
「ん?」
バイクのバックミラーを見たレッドの目に映ったのは、狼型のモンスターの大軍だった。
「なんで、街に?」
モンスターは、街以外の草原や山などのバトルフィールドに存在する。自分たちを殺す人間の近くに、わざわざ行くモンスターはほとんどいない。何度か、巨大なモンスターが人間が暮らしている所に侵入した事はるが、大勢の力で全て防いでいた。
「ガルルルル」
歩道にいる人や、車に乗っている人などは、そのモンスターに気付き、叫び声をあげ逃げていく。
だが、モンスターは真っ直ぐ、バイクに乗っているレッドに向かってきていた。
「何なんだ?」
レッドはバイクのアクセルを切り、スピード違反でもかまわないから、百キロほど出した。
だが、モンスターたちもスピードあげてきて、今にも追いつかれそうだった。
「だったら」
マックススピードまで出したレッドは、少し切り離すと、グルッと反回転して、襲いかかってくるモンスターの方を、バイクの正面にした。
「ガルルル」
「行くぜ!」
バイクを左手で片手運転し、右手で鞘にしまってあるアグルを抜き、モンスターたちに走って行った。
モンスターたちも、向かってくるレッドに襲いかかって行った。
そして、レッドはアグルで全てのモンスターにアグルを切りつけた。まさに神業。
「グルルルウ」
モンスターたちは、悲鳴のように泣き叫び、闇に帰って行った。
「闇?ダークのか。だが、なぜ俺を狙う?分からないな」
さっきのモンスターたちは、亜騎士 ダークが作り出したものだった。だが、レッドを狙った理由は不明だ。
レッドは、取りあえず再びバイクを回転し、ナイトキャッスルに向かっていった。
*
「よ、隼人」
ナイトキャッスルに着いたレッドは、すぐさま自室に戻り、素材が入っている宝箱のようなものを思っていき、鍛冶屋を営んでいる、従弟の大門字 隼人のもとにいった。
ここは日本なので、魔騎士以外の人は、十通の日本の名前だ。
鍛冶屋は、ナイトキャッスルの一回の右はじにあり、一つの家ほどの起き差で、鉄と硫黄のにおいがする。暑さも、鍛冶職人かここにきてなれている魔騎士でないと、耐えられないだろう。
「今日はなんだ?レッド」
「アグルを強化してほしい」
そう言って、先ほど使ったアグルをさやから取り出し、レッドと隼人の間にある鉄のカウンターに置いた。
「分かった。炎属性も加えるか?」
武器は、ある段階まで強化されると、モンスターなどが使う攻撃の、属性というものを取り付けられる。強化したものや、上物じゃないばあい、属性に耐えられず壊れてしまう。
「ああ。これ、好きに使ってくれ」
そう言って、巨大な箱をアグルの隣に置いた。
「ああ。できるだけ強化していいんだな?金は高くつくぞ」
「金ならある」
「時間は?」
隼人は、レッドが大会に出ている事を知っているので、次の試合までに出来上がらせないといけないと思い、聞いた。
「いや、確か今日は思う試合はない。明日までにできれば十分だ」
「オッケー。じゃあ、やっとく」
そう言って、隼人は箱とアグルを同時に持つと、鍛冶屋の煙の中に消えて行った。
「よし、買い物でもするか」
レッドは、アグルと素材を預け、市場に出かけた。
「何買うか。まずはトロピカだな」
トロピカが三度の飯より好きなレッドは、腹が減っているよ言うのに、フルーツジュース専門店に向かった。
「おっちゃん。トロピカ、一つくれ」
フルーツジュース専門店の屋台の店の前に来たレッドは、メニューを一切見ないで、トロピカを頼んだ。
「あいよ」
そう言って、屋台の主人がいい、すぐさま作ってくれた。
「いくら?」
「百二十円」
「あるかな」
よりについている小さなポーチを探り、財布を出して、小銭袋を覗き込んだ。
「あった」
そう言って、レッドは小銭を取り出して、カウンターに出そうとした時だった。
「グルルルル」
なんと、何所からともなくモンスターの雄叫びが聞こえた。
「何だ?」
レッドはすぐさま、声の方を向くと、さっきのモンスターと同じ、狼型のモンスターだが、三メートルほどのモンスターが、市場のど真ん中に存在した。
「きゃあああ」
そんな声とともに、すぐさま市場の人たちは、裏の道に逃げて行った。
「おっちゃん。おいとくぞ」
レッドは、カウンターにお金を置き、トロピカを受け取ると、武器を持たないまま、モンスターに向かっていった。
「狙いは俺だろ」
「グルルルル」
向かってくるレッドに気付いたモンスターは、巨大な二つの前足で地面を蹴り、レッドに飛びかかってきた。
「く!」
レッドは、モンスターが飛びかかってくると、サッカー選手のような見事なスライディングをして、モンスターの腹の下を通り、後に回った。
「こっちだ」
スライディングの体制から、起き上がったレッドは、モンスターとは逆方向に逃げて行った。
「ガッルルルウルル」
巨大な雄叫びをあげたモンスターは、逃げるレッドに走って行った。
「はあ、はあ」
レッドが、いくら足が速いかと言って、鎧を着ているので、スピードと体力が落ちて行った。
「グルルルウ」
距離が十メートルになると、モンスターは再び走ったまま飛びかかってきた。
「くそ」
左にレッドは急カーブし、裏路地に入って行った。
「皆、もっと逃げろ」
モンスターが通れない細い道をレッドが走っていると、逃げ惑う人々が見えたので、非難を呼び掛ける。
レッドは裏路地を抜けると、隣の市場に入り、そこにはモンスターが待ち構えていた。
「ち」
舌打ちをしたレッドは、モンスターが待ち構えてない方に逃げていく。
モンスターも、全力で襲いかかってくる。
「あった」
走っているレッドが見つけたのは、ナイトキャッスルの駐車場に置いてある、バイクだった。
それに急いで乗ると、鍵を入れ、トロピカを持っているので片手で運転して、すぐさま駐車場から出て、モンスターから再び逃げて行った
「これで、おしまいだ」
マックススピードで走っているレッドは、後から追いかけているモンスターの方を、反回転して向いた。
そして、さっきのモンスターの大軍に突っ込んだように、巨大なモンスターに走って行った。
モンスターも勢いをつけ、レッドに走って行った。
「そりゃあああ」
バイクに乗っている途中で、バイクから落ち、バイクはクラッシュしながらモンスターに滑って行き、モンスターにぶつかると爆発し、モンスターもろとも焼き尽くした。
そして、炎が巻き上がる中、それを包むように闇が現れ、炎が消えたと思ったら、モンスターの死体も消えていた。
「ダークか。なぜ、ダークが?もしかして、何かをたくらんでいる?これは序章に過ぎないのか?」
レッドは亜騎士 ダークのことを悩みながらも、手に持っているトロピカをのんだ。
*
隼人が今日中に強化してくれたアグルを受け取り、金を払い、ナイトキャッスルの自室に戻って行った。
自室は五畳ほどの部屋で、ベッドと鎧や道具、あとはテーブルぐらいしかない。
「はあああ」
鎧を脱ぎ、壁に立てかけ、私服に着替えたレッドはベッドに座り、トロピカを再び飲んだ。
そして、中央の机にトロピカが入ったプラスチックの言えものを起き、ベッドに寝転がった。
「疲れた。それにしても、あの闇のモンスター何なんだ?やはり、言い伝え通り、亜騎士のダークなのか?ああ」
考えるほど分からなくなっていくレッドは、黒い髪の毛をかき、ぼさぼさにした。
そんな時だった。「トントン」と、レッドの自室のドアが叩かれた。
「はーい」
ベッドから起き上がったレッドは、ドアの小さな穴を覗き込んだ。
「ゼロ?」
そこにいたのは、無口で何を考えているか分からない、コードネーム ゼロだった。
「入っていいよ」
レッドは、ゼロがなぜ来たのは分からないが、取りあえず中に入れた。
ゼロはレッドの部屋に入ると、テーブルの横に正座をして座った。
「なあ、ゼロ。何しに来たんだ?俺たち、喋った事あんまないし、友達でもないだろ?だから、気になって・・・」
レッドとゼロは、仲がいいどころか、衝突することもあった。
「・・・」
質問に答えないゼロは、その場から立ち上がり、壁にかけてあるカレンダーに向かった。
「ん?」
カレンダーの前にいったゼロは、無言である所を指差した。
「一か月前?」
そう、ゼロが指差したのは、ちょうど一か月前の所だった。
「・・・」
ゼロはカレンダーから、レッドの方を向き、黙って頷いた。
「ああ。俺が、ワイルドタイムに入って、確かお前が助けてくれたんなったよな。そうだ、お礼がまだだったな」
「・・・」
再び頷いたゼロは、次に食べるしぐさと、金を現すマークを手で表した。
「つまり、おごれと」
「・・・」
ゼロは、またもや無言で頷いた。ゼロは、助けたから何かお礼をくれと思い、ちょうど腹が減った時にレッドの部屋を発見したので、寄ったのだ。
そして、レッドも腹が減ったので、昼を食べに、ナイトキャッスルの食堂に向かった。
レッドは、食堂のど真ん中の席に座り、ゼロもその反対側に座った。
「何食べる?」
「・・・」
ゼロは、テーブルに置いてあるメニューを手に取り、うどんの写真の所を指差した。
「うどんか。分かった。勝手くる」
そう言って、レッドはカウンターの方に向かっていった。
今はちょうど昼なので、人が多いかと思われるが、そうでもなかった。コスモバトルを見に、バトルアリーナ付近で食事を済ます魔騎士が多いので、ほとんど貸し切り状態だった。
そして、レッドが二人分の食事を一人で持っていき、ゼロは届くとすぐさま橋を割り、吸い込むように食べた。
「腹、減ってたんだな」
そう言ったレッドが頼んだのは、真っ赤で見るからに辛そうなカレーだった。
ゼロはそのカレーを、目にはしたものの、あまり気になっていない様子。
「ゼロ。このカレーは、俺専用のカレー、レッドスペシャルだ」
レッドはスプーンをとると、カレーを食べ始めた。
「ふん」
その、ネーミングのなさに、鼻で笑ったゼロ。
「何だよ。でも、笑うは笑うんだな」
笑うといっても、鼻笑いだが、笑っているには違いないので、意外と思い、ずっとゼロの顔を見ながらカレーを食べている。
それには、ゼロは気にも留めず、うどんを次々と食べ始めた。
「なあ、ゼロ。なんで、俺を助けてくれたんだ?」
ゼロとは話す機会がほとんどないので、今聞いておこうと、ずっと気になっていたことを、聞くレッド。
「弟に、似てるから・・・」
そう、小さく呟くゼロ。
「やっと、喋ったな。そうか、弟がいるんだ。じゃあ、弟に感謝しないとな」
「?」
「だって、弟に似てなかったら、お前は俺を助けなかったんだろ。だったら、俺に似ている弟に感謝だろ」
ニッコリ笑って見せるレッド。
「・・・」
またもやレッドを無視して、うどんを食べ続ける。
「何だよ。喋ったかと思ったら、また無視して。それで、弟は元気なのか?」
そう、レッドが軽く質問すると、ゼロは立ち上がった。
「・・・」
そして、うどんを一気に食べると、食堂を出て行ってしまった。
「おい。なんだよ、あいつ。もしかして、弟の具合でも悪いのか?」
そんな事を思いながら、激辛のカレーを再び食べ始めた。
レッドは、カレーを食べ終わると、出で言ってしまったゼロの分までかたづけ、自室に戻って行った。
「ん?」
ナイトキャッスルの廊下を、食べ終わったレッドが歩いていると、前からアクアが歩いてきた。
「お、アクア」
「あ、レッド」
なぜか、アクアの表情は暗かった。
「どうしたんだ?元気なさそうだけど」
「う、うん。私、負けちゃった。願いはないけど、いざ負けてしまうと、何か元気が出なくて・・・」
「アクアが、負けた?」
レッドは、アクアが女性で一番強いと思っている。男性の中でも、かなり強い方だ。その、アクアが簡単に負けるはずはない。そう思ったレッドは、「冗談だろ」と、詳しく聞いた。
「お前の、対戦相手って、誰だ?」
「ゼロ・・・」
「ゼロ?」
大声をあげてしまったレッド。ゼロが強いのは、ワイルドタイムの自分を倒したことで分かっていた。だが、それが本当か分からなかったので、まだ半信半疑だった。だが、相棒のアクアを倒したということで、ゼロの強さが分かった。
だが、レッドがゼロのことで知っているのは、一か月しか魔騎士をやっていなく、特別な訓練も受けていないことだった。
「うん。一瞬だった。一瞬で、控室に転送されて」
アクアは、明らかに顔色が悪かった。
アクアは、願い事はないと言っていたが、相棒のレッドにはアクアの本当の願いが分かっていた。
恋をする事だ。
アクア、十四歳で子どもを出産した。
その相手は、半年間ぐらいまでは育ててくれたが、父親が飽きたと言って、アクアと赤ちゃんを置いて出て行き、そのあとアクアは、一人の男性とあったが、その人は結婚詐欺市で、金もとられた。
そのあと、三度目の正直と、一人の男性と付き合った。その男性は、赤ちゃんもちゃんと見てくれて、経済力もあった。
だが、ある日赤ちゃんとともに事故に巻き込まれ、亡くなった。
それからアクアは、恋をやめることにした。
そして、幼馴染のレッド魔騎士をやらないかと言って、今は戦闘が恋人になっている。レッドは、自分の仕事を減らすためにアクアを誘ったのだが、そのおかげで今のアクアがある。
だが、アクアは二十歳だ。恋もしたくなる。だから、優勝して、本当の恋をするつもりだったのだろう。
「アクア」
「き、気にしないで、私が弱かったの、ゼロは強かったは」
「そうか。ゼロ・・・あいつはいったい何者だ?」
そんな疑問の中、一日が立った。
そして、コスモバトル二日目。今回レッドは、勝ち進めば二回戦うことになっている。
「よし、行くか」
鎧を着て、強化されて炎属性が入ったアグルを腰に収め、バイクで会場に向かった。
「対戦相手は、誰だ?」
レッドは少し、対戦相手が誰なのか知らされていないので、気になりながらバイクを運転していた。
「よし、勝つぞ。俺の願いのために・・・」
バトルドームに着いたレッドは、バイクから下りると右手拳を握りしめ、心に言い着させ、控室に向かった。
控室は、昨日と同じ場所だったので、迷わず行けた。
「アグル」
控室に入ったレッドは、腰に収めてある、隼人の手によって強化されたアグルを、部屋の電気にかざすと、アグルは電気を受けて、赤い輝きを放った。
「勝つ!」
レッドは準々決勝の時間になったので、アグルを鞘に戻し、万全の態勢で、通路のソファーに向かった。
「それでは、コスモバトル二日目の、最初のカードは、血だらけの戦士と恐れられる魔騎士 コードネーム レッド!」
MCが昨日のように声を張り上げると、歓声が巻き上がり、レッドは戦闘場に足を踏み入れる。
「行くぞ!」
レッドは、気合いを入れるために、右手の握りこぶしを天井に向けると、歓声が強まる。レッドは、勝つと前もって宣言してるのも同然の行為をした。
「その対戦相手は、閃光の使者 気高きオラシオン!」
歓声の中姿を現したのはフェンリルに勝ち、マントをなびかせながら登場する、オラシオンだった。
「フェンリルに勝ったんだな」
「ああ。俺は、エクスカリバーを手に入れる。悪いが、お前の願いはかなわない」
「それはどうかな」
プライドの高いオラシオンを挑発するレッド。だが、オラシオンはビクともしない。
「それでは、バトル開始」
「行くぜ!」
最初に動き出したのはレッドだった。レッドは、燃え盛るアグルを勢いよく抜き、余裕の表情を浮かべているオラシオンに、音速の速さで走っていき、燃え盛る斬撃を放った。
「ふん」
オラシオンは中高く飛び、レッドの斬撃を軽くよけた。その時に、青いマントがなびき、一瞬レッドはそっちに注意を向いてしまった。
「行くぞ」
静かに言ったオラシオンは、鉱物をふんだんに使った、黄色と白のレイピアを抜くと、自分のマントを見ているレッドに向かって、強く素早い突きを放った。
「く!」
それを、兜ギリギリで避けたレッド。兜にも少しかすったので、兜をしていなかった場合、かすり傷を負うだろう。
そして、レッドは鋭い突きを避けると、勢いよく後にジャンプし、後の壁に空中で足をつき、勢いよく蹴っ飛ばし、突き避けられ地面に足をついているオラシオンに向かって、アグルを振りかぶりながら飛びかかった。
「ふん。甘い」
レッドは、オラシオンに近づくと、再び斬撃を放ったが、オラシオンは斜めに飛んで避けると、素早く天井を向いているレッドの背中の上に移動し、レイピアを刺した。
「ぐッ!」
鎧のおかげで、突き刺さりはしなかったが、突きの勢いでレッドは腹から地面に叩きつけられた。
オラシオンは、レッドの背中を蹴ってジャンプすると、少し距離をとった。
オラシオンの能力は、聖なる光。聖なる光により、身体能力など体の能力が、ワイルドタイムと匹敵するほどに活性化する。聖なる光事態で、攻撃することも可能だ。
「まだまだ」
立ち上がったレッドは、アグルを構え、オラシオンに走って行く。
「懲りない奴だ」
オラシオンも、レイピアをフェンシングのように構え、向かってくるレッドに何度も連続で突きを放った。
だが、レッドは正確に確実にその突きを走りながら避けると、オラシオンの腹に、アグルを叩きこんだ。
「何!」
さすがにオラシオンはよけれず、燃え盛る斬撃は、オラシオンの腹にクリンヒットして、炎が巻き上がった。
「すげえな」
その炎の量に、自分でも驚くレッド。
「ぐう」
オラシオンは、火事が起きるほどの炎をかき消すと、レイピアを持っていない左手を、レッドにかざした。
「ヤバい」
オラシオンの能力と、戦闘スタイルが分かっているレッドは、すぐさま左手がさしていない方に移動した。
「ち」
レッドがさっきまでいた場所は、急に光に包まれ小爆発した。
「行くぜ!」
小爆発を先読みして避けたレッドは、音速でオラシオンに走ると、二人の距離が近くなった時に、空中に飛びながら、強化されたアグルを叩きつけた。
「く」
その攻撃を、オラシオンがレイピアで防ぐと、アグルの炎属性が発生し、ぶつかったことで起こった火花と一緒に、燃え上がり、二人の顔を炎の熱さが襲う。
「く!」
熱さに耐えられなかったオラシオンは、アグルをレイピアで弾くと、レッドの腹を蹴り、自分を炎から離れさせた。
「まだまだだ」
今度はレッドが左手をオラシオンに向けると、オラシオンの前で一瞬だけ炎が巻き起こった。
レッドは炎を出せるが操れないので、炎は一瞬で消えてしまった。
「はあああ」
オラシオンも、左手をレッドに向けると、同時に光と炎をだし、巨大な爆発が起こり、煙に、会場は包まれた。
「おーと、どういうことでしょか。まったく、様子が見えません」
そうMCが実況すると、客席も騒ぎ出す。
「おおおおおお」
そんな中でも、レッドの勇ましい雄叫びが聞こえた。煙の中でも、戦闘は行われているようだ。
そして、数分後。
二人は同時に煙から飛び出し、煙はようやく消えた。
「やるな、レッド。だったら、はあああああ」
オラシオンを、聖なる光が包み、オラシオンの体は光り輝いて行った。
これは、聖なる光をかき集め、一撃に込めていた。
「だったら」
レッドも、ラストスパートでワイルドタイムを発動し、力を蓄え、アグルをしまい、赤い大剣のマゲリマムを両手で構える。
「行くぞ。レッド」
「おおおお」
そして、二人は武器を振りかぶり、お互いに走って行き、レッドは強力な斬劇を。オラシオンは、急所を正確に狙う鋭い突きを放った。
そして、その勝者は・・・
「決まったー。勝者は、コードネーム レッードー」
そう、今回の勝者は、レッドだった。
そこには、オラシオンの姿はなく、レッドの姿しかなかった。
「よっしゃー」
マゲリマムを戻したレッドは、右手を始まる前にやったように、掲げた。
そして、レッドは通路に戻って行った。
*
試合会場を後にしたレッドは、通路を歩いていると、そこにあるソファーに座っている、ある魔騎士に目がやった。
その魔騎士は、黒に赤い線が入った貫禄のある鎧を着用していて、通り過ぎるレッドを睨んでいた。
そして、控室に入ったレッドは、睨んできた奴のことを思いだした。
「何だ?あいつ。いかにも、亜騎士って感じだったな」
レッドがそう思ったのは、黒い鎧が闇をイメージさせたからだろう。だが、ここにいるということは、あの魔騎士は、コスモバトルの参加者の、正式な魔騎士だ。
「ま、いっか」
そう言って、兜を外したレッドは、前もって買っておいたトロピカをとり、体を回復するような気持よさそうな表情しながら、トロピカを飲んでいる。
「何とか、勝てたな」
勝ったので安心したのか、一息ついた。
オラシオンの攻撃の前に攻撃できたからよかったものの、もうちょっと攻撃が遅ければ、レッドが控室に戻されただろう。
そんな時だった。
突然、控室のドアが叩かれた。
「誰だ」
座っていたベンチから立ち上がったレッドは、ドアを開けると、そこにはフェンリルとオラシオンがいた。
「二人とも、どうしたんだ」
「いや、俺はオラシオンに勝ったて聞いたから、お目どうって言おうと思ったら、オラシオンがいたんだ」
オラシオンを不思議に見ながら言うフェンリル。
「レッドには負けたからな。だが、俺はもっと強くなれる気がした。だから、その礼を」
「そうか、取りあえず入れよ」
そうして、二人はレッドの控室に入って行った。
「ごめんな、オラシオン」
「なぜ、レッドが謝る?ああ、エクスカリバーの事か。気にするな。そんなものに頼らずとも、俺は強くなる」
淡々と語るオラシオン。
「そうか。そうだ。こんなことも聞くのはなんだが、フェンリルの願いはなんだったんだ?」
フェンリルはオラシオンに負けたので、願いはかなわないので、少し控え目で聞くレッド。
「俺か?俺は、ありったけの金よ。金があれば何でもできる」
そう、ニヤニヤしながら言うフェンリル。
だが、レッドはそれが願いだとは思わなかった。
フェンリルの願いは、母親を見つけることだ。
甘えん坊で、ガキみたいなフェンリルを、づっと面倒見てきた母親がいた。
だが、その母親は、なぜかフェンリルのもとから去り、それから一度も会ってなかった。
あまりその事を思い出したくないフェンリルは、嘘をついたのだろう。まあ、金がほしいというのも、嘘ではないが。
「そうか・・・」
嘘だと分かっているレッドだが、気を使い、そっとしておいた。
「まあ、俺らは、敗れた。お前は、願いをかなえろ」
こんな事を言っているオラシオンだが、本当はレッドには負けてほしかった。そのために、全力の全力で戦った。だが、オラシオンは負け、レッドは願いを叶えるために戦う。
そして、二人が帰ると、再びドアが叩かれた。
「レッドさん」
その人物は、ブラストだった。
「おお、ブラストか。どうした?」
「僕、負けちゃいました」
「そ、そうか」
「はい、ゼロさんに。でも、あの人と戦ってみて、何かを感じたというか、何かを背負って戦ってる気がして。あ、いえ、たぶん気のせいですよね。それだけ、伝えに来ました。まえ、レッドさんとゼロさんが一緒にいるところみたので・・・それでは失礼します」
そう、ブラストは一方的にレッドに言うと、すぐさま帰って行った。
「ゼロか・・・あいつのことは、何か引っかかるんだよな」
この前のようにゼロのことを考えると、魔またまたドアが叩かれた。
それはスタッフで、スタンバイを城ということだった。
「よし、行くか」
そう言って、兜をつけたレッドは、あの白いソファーに向かった。
*
ここは闘技場。
レッドはMCに紹介され、早くも入っていた。
「レッドの相手は、影の支配者 コードネーム シャドウ」
MCに紹介され、レッドの反対側から出てきたのは、さっきレッドをにらんだ、黒い鎧を着た魔騎士だった。
「お前、シャドウって言うんだ」
「はい。僕のコードネームは、シャドウ。僕の願いは、魔騎士のトップになることです」
ていねいな口調で、とんでもない事を口にするシャドウ。
「ずいぶんな野心家だな」
「ふふ。あなたは、聞くところに言うと、魔騎士をやめようとしてるらしいですね。僕は、そんな人には負けません。僕の力を、僕をいじめた奴に、認めさせるために」
感情を出しだしたシャドウ。シャドウは、ブラストとは反対で、子どもの頃いじめられていた。だから、強くなろうと魔騎士になったのだ。だが、いじめっ子は認めてくれないアから、トップに君臨して、認めさせようとしているのだ。
「そうか。確かに、俺はやめようとしている。だが、そのためなら勝つ」
「それでは、始めたいと思います。バトルスタート」
MCが開始の合図を言って、最初に動いたのは、武器を持ってない格闘戦を得意とする、シャドウだった。
シャドウは、右手の小手の丸くて赤く光っている部分を押し、レッドにそれを向けると、黒い破壊光線が発射された。
「何?」
その破壊光線は、影の力でできており、油断しているレッドの腹に直撃し、レッドは壁に背中をぶつけた。
「やるじゃねえか」
「そうでしょ。これが僕の技、シャドウバーストです」
このシャドウが来ている鎧は、ウレイドルと呼ばれる黒狼で作られたもので、シャドウの能力に合わせて作られたもので、この鎧はシャドウの力と直結しており、各部分の赤く光っている部分を叩くと、それの部分の攻撃を繰り出せる。右手は、影の力の破壊光線のようだ。
「やるじゃねえか」
レッドは、背中を壁から話すと、アグルではなく、右手に赤い巨大な手裏剣を出すと、近距離が得意な事が、武器を持っていないことから分かったので、手裏剣をシャドウに投げ飛ばした。
「シャドウバーストです」
シャドウは、左足をできるだけ上げ、その赤い丸の部分を押し、影の力を左足から黒い波動として出した。
半月型のした黒い波動は、左足で何もない所に蹴った八回と同じ、八つ飛ばされた。
そしてその斬撃は、赤い手裏剣に全てあたり、勢いを止められた手裏剣は、地面に落ちて行き、レッドのもとへ帰って行った。
「はああああ」
レッドは、やはり近距離が得意なので、左足をあげているシャドウに、アグルを抜いて音速ではなく、光速で走った。
そして、レッドはシャドウに近づくと、右からシャドウのわき腹に叩きつけた。
だが、シャドウはそれより先に、手際良く左足を地面に置いて、右足を置いて、丸い部分を押し、レッドの頭に右から蹴り飛ばした。
そのシャドウの蹴りの方が早く、レッドは攻撃を与える前に、再び壁に吹っ飛ばされた。
「負けるかよ」
レッドは体制をたてなおすと、もう一本アグルを自分の能力で出し、余裕のシャドウ再び走って行った。
「何度来ても無駄です」
その突進を、右斜めに避けたシャドウは、すぐさま左斜めに飛ぶと、シャドウの背中が、レッドの背中と向かい合い、シャドウは勢いよく反回転して、レッドの脇腹を後から、カオスバースト状態の右足で蹴り飛ばした。
「ぐわああ」
嘘炉から攻撃されたレッドは、何が起きたのか訳が分からず、また壁に激突した。
「終わりです」
左手をシャドウバーストしたシャドウは、その左手の平を、闘技場の地面に叩きつけると、そこから影がレッドに向かって伸び、レッドにたどり着く前から、影から黒い槍が、何本も生えてきた。
「くそ!ぐわあああ」
避けようにも、壁に激突し立ち上がれないレッドは、その槍をまともに食らうと、その威力で中にあげられた。
「まだ、生きてますか。では、カオスバーストです」
今度は右手をカオスバーストさせ、空中で無謀なレッドに、破壊光線をお見舞いした。
それをまともに体全体で受けたレッドは、まだ控室に転送されず、客席と闘技場を区切る、壁の上の高い所に張り付けられている、鉄の網にぶつかった。
「まだですか」
なかなか、転送されないレッドに、いらつくシャドウ。
そして、レッドが網から壁に移って、ずるずると落ちて行くときに、シャドウは後の壁にバックステップし、壁をけり落ちて行くレッドに、カオスバーストした右足の裏で、壁にめり込ませるように叩きこんだ。
「ぐは!」
口から、少し血を吐き出すレッド。各当選なので、刃物と違ってすぐには死なないのだ。
「まだ耐えますか」
シャドウは左足で壁を蹴り、後に一回転しながら戻った。
そして、レッドはようやく地面に体がついた。
「け、ひでえな」
左手で口の血をふき、立ち上がるレッド。こんなものじゃ、トップレベルのレッドはやられない。
「おおおおおおお」
雄叫びをレッドが開けると、一瞬でこの闘技場が赤く塗りつぶされた。
「何?」
レッドが、赤の絵具で壁と地面を全て塗ったというより、そこに出して自然に塗られたのだ。
そして、全身赤いレッドの居場所は、シャドウにも観客にも、一瞬でもわからなかった。
「何所だ」
カメレオンのように隠れたレッドは、見つからないうちに背後に回り込み、二本のアグルをシャドウの背中に叩きつけた。
「ぐわああ」
初ダメージを受けたシャドウは、斬劇とともに、レッドのように壁に吹っ飛ばされた。
「ワイルドタイム」
勢いに乗って終わらすつもりのレッドは、さらに赤くなった。だが、絵具の赤い色とは違った赤なので、シャドウにも観客にもなんとなくわかった。
「やっぱり、やりますね。シャドウフルバースト」
シャドウは立ち上がると、胸の真ん中の赤い丸い部分を押した。
そうすると、シャドウの体は、闇ではなく自分の影に包まれると、影が消えた後は黒くかがやいている。
そして、右手が巨大な剣の刃になったシャドウ。
そして、一本は鞘ではなくい空間にしまい、もう一本のアグルは鞘におさめ、マゲリマムを出した。さっき、大量に絵具を出したので。マゲリマムを出すので精いっぱいだった。
そして、シャドウが走りだすと、レッドも走りだし、右手の刃をシャドウはレッドに叩きつけた。
だが、それをワイルドタイムによって、簡単によけ、すぐさま背後に回ると、車道が振り向くまでに、マゲリマムに力をため、車道が振り向いた瞬間、マゲリマムを叩きつけた。
「な!」
そう、シャドウは吐き捨て、消えて行った。
レッドが、ワイルドタイムで勝ったのだ。
「く!」
ワイルドタイムを、一日二回使ったので、さすがに限界が出たのか、すぐマゲリマムは消え、すぐさまレッドは、フラフラしながら、控室に戻って行った。
レッドは、こうして予選Aブロック決勝戦に出場決定。