第三話 赤い海と魔女
あたしは優しいこの港街の人が大好きだった。
昔は人間は皆、人魚を見世物にして殺す悪魔の様な存在だと思ってた。
でも違った。
ここの人はとっても優しくて、心のおくから幸せをかみ締めたくなる。そんな暖かさをもってた。だから私は信じてたんだ。
ずっとこのまま、ここにいられるって…。
そう、100年前までは。
100年前、一人の人間の女が岬にきた。
「貴女は人間の事をどう考えてるの?」
女はいった。
あたしは何も知らなかったから、無邪気にこう答えた。
「大好きよ。暖かくて…」
そんな幼かった私の向かってあの女は、残酷な言葉をはいた。
「貴女が一人ぼっちなのはあの町の人間が、あんたの仲間を殺したからなのよ?」
そう、その一言で私は自分を失った。泣き崩れる私に女はいった。
「私は魔女なのよ…あなたの願いをかなえてあげる。」
私は魔女の手を取った。
全てが…嘘だとも知らずに…。
私は力を手に入れた。
人の命と引き換えに願いを叶える力。
本当はそんなモノ無くたってよかった。
でも、もう戻れない。
私は人々に問いかけた。だけど誰も、私の声を聞き取るものなど居なかった。
それは、もうその人が生きていなかったからだ。
「私がなにをしたっていうの?私の…私の家族を返しなさい!あんたなんでしょ?私の、仲間を殺したんでしょ?」
でも、誰も岬に来なくなった。
「…返してよ。私の幸せを…返して…あんたが、岬の人を殺したんだ。だから、私は今も一人だ。お前を私は許さないよ。」
女は、微笑むとこういった。
「だったら、私を殺しなさい。そうすれば貴女の憎しみも晴れる。」
海の水が赤く染まったのはその日。
あれは自らの死を誰よりも願った死ねない魔女の体に流れる、赤い、赤い、血の色。
いつか、続編を書きたいです。