『出雲神話真実― 徐福と大国主』第0話 神話の前夜
神話は、本当に“神の物語”だったのでしょうか。
この作品は、出雲神話を一つの視点から再構成した物語です。
史実と想像のあいだにある「もしも」をお楽しみいただければ幸いです。
まだ――
神話が生まれる前の時代。
海は荒れ、山は崩れ、
川は幾度となく村を飲み込んでいた。
人はただ、
自然を恐れて生きていた。
その頃――
海の向こうから、一人の男が来た。
男は、鉄を知っていた。
火を操り、黒い砂を溶かし、
これまで誰も見たことのない
硬い刃を作り出す。
人々は、驚き、そして畏れた。
男は川を見た。
暴れる水。
崩れ続ける山。
そして、静かに言った。
「川は――敵ではない」
誰も、その意味を理解できなかった。
男は土を動かし、
水の流れを変えた。
やがて――
荒れ狂っていた川は、静かになった。
人々は、その力を見て言った。
「神だ……」
だが、男は笑った。
「違う」
「これは――人の知恵だ」
やがて、多くの民が集まり、
一つの国が生まれる。
だがその出来事は、
長い年月の中で、少しずつ姿を変えていく。
川は大蛇となり、
鉄は神の剣となり、
王は、神と呼ばれるようになる。
そして人は――
その物語を「神話」と呼んだ。
これは、
その神話が生まれる前の物語。
まだ誰も知らない、
出雲の真実である。
遠くで、波の音が響いていた。
その浜に――
一人の少女が立っている。
懐には、小さな木の仏。
円空仏。
その仏は、
静かに、温かかった。
神話は――
まだ始まっていない。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この物語は、神話がどのように生まれたのか――
その「人の営み」に焦点を当てて描いていきます。
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次話より、物語は動き出します。




