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使い魔と魔法少女

作者: 蒼空 秋
掲載日:2025/12/19

 吾輩は猫である。見た目はただのオスのどら猫。だがただの猫ではニャい。人語を話し、夢見る少女と契約して魔法少女に仕立て上げる特別な猫、いわゆる使い魔である。

 だが先日、主人によって吾輩は一方的に追い出されてしまった。

「魔法少女なんて、もう時代おくれなの、大学受験もあるし」

 もはや少女と言うには厳しい年齢になっていた彼女に未練などない。だが寝床を失ったのは痛い。できれば本格的に寒くなる前に、次の契約者を見つけたい、そんなことを考えながら街を歩く。

 できれば幼い娘がいい。しゃべる猫の存在を知って目を輝かすような、純真で夢いっぱいな女子小学生がベストだ。というわけで吾輩は私立の小学校に潜入し、契約者兼飼い主を探した。

 なぜ私立なのかなんて野暮なことを聞くでニャい。飼われた場合、いい餌にありつけるからに決まっているだろう。

 その後吾輩は何人かの女子小学生に秘密裏に接触し、契約をもちかけたが、結果は惨憺たるものだった。現代の女子小学生達は、

「魔法よりアイフォンが欲しい」

「最低でも正社員がいい」

「公務員でいい」

 と夢のない事ばかりをいう。

 もはや現代に、夢見る少女はいないのだろうか。悲観した吾輩は小学校を後にして、夜の街を徘徊する。冷たい秋風が身にしみた。

『ようレオ、しょぼくれて、どうしたんだニャ?』

 見るとトラ猫が前にいた。名前はトラ、こいつも見かけによらず、魔法少女の使い魔をしている。

『どうもこうもないニャ、夢のない少女ばかりで、適任者がいないニャ』

 そもそも魔法少女は何か。それは少女時代の純粋なエネルギーをもって、大人たちが生み出した負のエネルギーを人知れず打ち消す存在なのだ。しかし当の少女たちがこうまで社会の負のエネルギーに染まってしまっては、元も子もない。このままでは魔法少女はいなくなり、社会は犯罪者ばかりになるだろう。

『ニャんだそんな事か、それならいいところを知っているニャ』

 翌日、トラに紹介してもらった場所に向かった吾輩は、思わず感嘆の声を上げた。

『すごい、夢のエネルギーでいっぱいだ!』

 コミケと呼ばれたその場所には、思い思いの華麗な衣装を着た、若く希望に満ちた少女たちがたくさんいた。これなら契約者には困らない。

(あれは︙︙こんなところにも負のエネルギーの渦があるのか!)

 同時に、優秀な吾輩は危機もまた察知した。負のエネルギーは特定の人間に集まり、事件という形で現界する。集まっているのは客と思しき中肉中背のTシャツの男。このままではあの男は、何らかの事件を起こすだろう。

 急がねば。そう思った我は、その場で最適と思われる少女を探す。

(この娘だ!)

 椅子で休憩中の、ひときわ可愛らしい10歳くらいの黒髪ボブの女の子に目をつけた。彼女はフリルが付いたミニスカートの衣装を着ている。その姿は既に本物の魔法少女と言っても良いものだった。

『吾輩は使い魔のレオという。ぜひ吾輩と契約して、魔法少女になってほしいニャ!』

 吾輩は右手前足を少女に差し出し、彼女にしか聞こえない声で話しかける。

「えっ!?」

 少女は美しい瞳を大きく見開き、吾輩を見つめている。

『はやく、このままでは犯罪者がでてしまうニャ!』

「──は、はいっ!」

 吾輩の右前足を、素直にとる少女。眩いばかりの正のエネルギーが放出される。その圧倒的な力によって、男に集まっていた負のエネルギーは瞬く間に浄化された。

「すごい、本物の魔法少女になってる。ずっと、憧れていたんです」

 魔法の効果によって、彼女は魔法少女の姿に変わっていた。満面の笑みで喜ぶ少女。そうそう、魔法少女はこうでなければいけない。

「でも、いいんですか、僕なんかが魔法少女になって」

 少女の一人称は〝僕〟だった。いわゆる〝ボクっ娘〟というやつだろう。

「問題ないニャ、吾輩の名前はレオ。ホッケが好物なので、よろしくだニャ」

「はい。僕の名前は、斉藤雄二といいます」

 うん? 雄二? それは勇ましい男の子につけられる名前だったと記憶していたが。

『ひょっとして、君、男の子?』

「︙︙はい。やっぱり、だめでしょうか?」

 なんてことだ。少女だと思ったが、少年だったようだ。

 しかし、発せられる正のエネルギー量は、前のご主人とは比較にならない。それは雄二に魔法少女としての、極めて高い適性があることを示していた。

 この際、肉体の性別など関係ない。大切なのは心だ。

『問題ないニャ。よろしくだニャ』

「押忍!」

 雄二くんが答える。地声は思ったより野太かった。


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