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(完結)『隣の席の田中くんが異世界最強勇者だった件』  作者: 雲と空
第二章:運命の扉と私たちだけの世界
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8話:足を踏み入れた異世界、そして魔物の影


全身を襲う衝撃と共に、私は硬い地面に投げ出された。目を開けると、そこは知らない場所だった。


「う、うぅ……」


体を起こそうとするが、全身がひどく痛む。

特に頭がガンガンする。

恐る恐る周囲を見回すと、鬱蒼とした森の中にいることに気づいた。

高く伸びる木々は見慣れない形をしていて、葉の色もどこか現実世界とは違う。

空気はひんやりとしていて、微かに獣の匂いがする。


「ここ、どこ……?まさか、本当に……」


田中くんを追って光のゲートに飛び込んだのは覚えている。

ということは、ここは……?

その考えに至り、私の心臓はドクンと嫌な音を立てた。

同時に、言いようのない興奮が込み上げてくる。

本当に来てしまったのだ。田中くんが、いつも行っていた場所に。


「田中くんは?どこ!?」


慌てて周囲を探す。しかし、彼の姿はどこにもない。

私一人だけが、この見知らぬ森の中に投げ出されたようだ。


途方に暮れて立ち尽くしていると、突然、頭の中に直接響くような声が聞こえた。


『転移者よ。初めての転移、歓迎する。ここは「始まりの森」。』


「え?何、この声!?」


驚いてあたりを見回すが、誰もいない。


『これより、お前は異世界のことわりに従う。まず、初期装備を選択せよ。選択肢は以下の通り。』


頭の中に、半透明のウィンドウが浮かび上がる。

そこには、いくつか武器のイラストと説明が書かれていた。


鉄の剣(STR補正:小、片手武器)


木の杖(INT補正:小、魔法武器)


革の弓(AGI補正:小、遠距離武器)


ショートナイフ(AGI補正:小、隠密武器)


「え、なにこれ、ゲームみたい……!」


私は目を輝かせた。

不安よりも、未知の体験への好奇心が勝る。

剣は重そうだし、杖は魔法が使えないと意味がない。

弓は使い方が分からない。残るは……。


「ショートナイフ……よし、これにしよう!」


直感でショートナイフを選ぶ。

素早い動きと相性が良さそうだと思ったのだ。

ウィンドウが消えると同時に、私の右手に、ずっしりとした重みの短いナイフが現れた。

そして、私の体に、見慣れない薄茶色の動きやすいチュニックと、丈夫そうなズボン、そして簡素なブーツが身についていた。

制服は消えている。


「おおー……」


妙に感心していると、足元で、ぴちゃ、と嫌な音がした。


見ると、緑色のゼリー状の塊が、ゆっくりとこちらに近づいてきている。ぶよぶよとした体には、小さな目のようなものが二つ。


『スライム:最弱の魔物。初期経験値を有す。』


再び頭の中に声が響く。

スライム。図鑑で見たことがある。最弱の魔物、ということは……!


「よし、やるしかない!」


意を決してナイフを構える。

ぴちゃぴちゃと近づいてくるスライムに、思い切ってナイフを突き立てた。


プシュッ!


という音と共に、スライムは弾け飛び、緑色の液体が飛び散った。

私の服にもべっとりと付着したが、痛みはない。


『経験値を獲得しました。レベルが上がりました。』


頭の中でメッセージが表示される。すると、視界の片隅に、私の名前とステータスが表示された。


佐藤 花 Lv.1 ⇒ Lv.2


筋力(STR): E ⇒ E+


体力(VIT): E ⇒ E+


知力(INT): C


敏捷(AGI): E ⇒ E+


精神力(MND): B


運(LUK): B


『スキルを獲得しました:初期回復(微小)』

『スキルを獲得しました:運命の導き手(特殊)』


「マジか!本当にレベルアップとかスキルとかあるんだ……!」


私は興奮に震えた。これぞまさに、ゲームの世界!

初期回復スキルは、体が少し楽になった気がする。

スライムを倒したことで、体全体の痛みも和らいでいた。


しかし、安堵したのも束の間だった。


ガサガサ……。


森の奥から、複数の物音が聞こえてくる。


「え……?」


視線の先に現れたのは、小さな緑色の人型。耳が尖り、手に粗末な棍棒を持っている。


『ゴブリン:群れで行動する好戦的な魔物。』


一匹、二匹……。あっという間に、十数匹のゴブリンが私を取り囲んでいた。

その全てが、ギラギラとした赤い目で私を睨んでいる。


「う、嘘でしょ……!?」


私はゾッとした。スライムとは明らかに格が違う。体が震えだす。

しかし、その震えは、恐怖だけではなかった。


そして、ゴブリン地獄が始まった。


『やってやる……!』


田中くんが、一人でこんな世界で戦っているんだ。私だって、負けていられない!


「うおおおおおおおっ!」


私は叫び、手にしたショートナイフを握りしめて、最も近いゴブリンに飛びかかった。

短く鋭いナイフが、ゴブリンの胴体に深く突き刺さる。

ゴブリンは甲高い悲鳴を上げて倒れた。


『経験値を獲得しました。』


次々と襲い来るゴブリンを、私は必死で迎え撃った。

ナイフを振り回し、時には回避に徹する。

何度も攻撃を受け、全身に痛みが走る。

それでも、ゴブリンが倒れるたびにレベルが上がり、ステータスが僅かに上昇していくのが分かる。


気付けば、空は茜色から漆黒へと変わり、そして、また仄かな光が差し込み始めていた。

夜通し、私はゴブリンと戦い続けていたのだ。


倒しても倒しても湧き出るゴブリンの群れ。

正直、もう限界だった。体は傷だらけで、足元もおぼつかない。

だが、目の前のゴブリンを倒せば、また経験値が入る。

その繰り返しが、私を突き動かしていた。


そして、夜が明け、太陽が昇り始めた頃、ついに私は、森の出口にたどり着いた。


「ハァ、ハァ……!」


森を抜けた先に広がっていたのは、石造りの建物が並ぶ、見慣れない街並みだった。

煙突からは煙が立ち上り、活気を感じさせる。助かった……!


安堵と疲労で、その場にへたり込みそうになった、その時だった。


街の入り口の門のそばに、見慣れた背中が見えた。

その人物は、私と同じ高校の制服ではなく、簡素だが動きやすそうな皮鎧を身につけ、腰には長剣を携えている。


「田中くん……!?」


私の声に、田中くんがゆっくりと振り返った。


その顔には、驚愕と、困惑、そしてかすかな焦りが浮かんでいた。

私は、田中くんの物語をこの目で見て、この胸で感じています。

彼の強さ、優しさ、そして葛藤。それらすべてが、私にとって、かけがえのない宝物です。

もし、あなたがこの物語に夢中になってくれたなら、私と同じです。

その気持ちを、ぜひ【評価】と【ブックマーク】で表現していただけると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
Xの方から伺わせていただきました! 文章自体はさくさくと読めるよう書かれている印象ですが、物語自体はゆっくりと腰を据えて進めるような意図を感じます。 また、主人公の佐藤が田中と積極的に関わらず、6話…
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