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(完結)『隣の席の田中くんが異世界最強勇者だった件』  作者: 雲と空
第五章:二つの力と、新たな世界の始まり

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47話:人間と魔族、二つの世界を繋ぐ橋(後編)

「ところで」


王が田中くんたちを見つめた。


「この街の統治はどうしましょうか?」


「統治?」


田中くんが首をかしげた。


「そうです。中立都市とはいえ、何らかの管理体制は必要でしょう。法の制定、紛争の調停、街の運営など」


アルカディウス様が重々しく言った。


「この街は、人間でも魔族でもない、第三の存在が治めるべきです」


「第三の存在?」


「田中よ」


魔王が真剣な表情で言った。


「君たちこそが、その任を担うべきではないでしょうか」


田中くんは驚いて声を失った。


「え?僕たちが?」


「考えてみてください」


ハインリッヒ三世が説明した。


「田中殿たちは、人間でありながら魔族とも深い信頼関係を築いている。両方の種族から尊敬され、信頼されている存在です」


私が慌てて手を振った。


「でも、私たちはまだ高校生ですよ?街を統治するなんて」


「年齢は関係ありません」


神崎先生が励ますように言った。


「あなたたちがこれまで成し遂げてきたことを考えれば、十分にその資格があります」


茜お姉ちゃんが腕を組んで考えた。


「確かに、私たちなら公平に判断できるかもしれない」


「でも責任重大ですよ」


由希子ちゃんが不安そうに言った。


「人間と魔族の未来がかかっているんです」


アルカディウス様が優しく微笑んだ。


「田中よ、君は既に多くの人々を救ってきた。今度は、より多くの人々の未来を支えることになる」


「魔王様…」


田中くんは深く考え込んだ。


「無論、一人で背負う必要はありません」


王が付け加えた。


「人間と魔族の代表者による評議会を設置し、重要な決定は合議で行えばよいでしょう」


「それに」


私が田中くんの手を握った。


「私たちがいるじゃない。みんなで力を合わせれば、きっとできるわ」


田中くんは仲間たちの顔を見回した。茜お姉ちゃんの頼もしい笑顔、由希子ちゃんの温かい眼差し、神崎先生の励ましの表情。そして、私の信頼に満ちた瞳。


「分かりました」


田中くんがゆっくりと頷いた。


「お受けします。ただし、僕一人の力では無理です。みんなで協力して、本当の意味での平和な街を作りましょう」


王とアルカディウス様が立ち上がり、深く頭を下げた。


「ありがとうございます」


王が言った。


「この街が、人間と魔族の永遠の友好の象徴となることを願っています」


「田中よ」


魔王が厳かに言った。


「君たちに託すこの街は、ただの都市ではない。希望そのものなのだ」


私が立ち上がった。


「じゃあ、街の名前を決めましょう。何かいいアイデアはありますか?」


「『ハーモニア』はどうでしょう」


由希子ちゃんが提案した。


「調和という意味の」


「いいですね」


茜お姉ちゃんが頷いた。


「人間と魔族の調和を表す、ぴったりの名前だ」


「『交流都市ハーモニア』」


神崎先生が口にした。


「響きもいいですね」


王が満足そうに頷いた。


「では、正式に『交流都市ハーモニア』の建設を決定いたします」


アルカディウス様も同意した。


「人間と魔族の新しい歴史の始まりですね」


会談は成功に終わった。人類史上初めて、人間と魔族が対等な立場で交わした平和協定。それは小さな一歩だったが、確実に未来への道筋をつけた瞬間だった。



翌日、田中たちは人間領土の平原に立っていた。王が提供してくれた広大な土地は、見渡す限りの草原が広がっている。


「何もないなあ」


田中くんがぽつりと呟いた。


風が吹き抜け、草が波のように揺れている。空は青く澄み渡り、雲がゆっくりと流れていく。本当に何もない、ただの平原だった。


「でも」


私が田中くんの腕に寄り添いながら続ける。


「ここに私たちの街ができるのね」


「そうですね」


由希子ちゃんが目を輝かせた。


「学校も、病院も、図書館も」


「酒場も忘れるなよ」


茜お姉ちゃんが笑いながら続ける。


「ガルザさんとの約束だからな」


神崎先生が地図を広げた。


「まずは都市計画から始めましょうか。どこに何を建てるか」


田中くんは広い平原を見渡した。確かに今は何もない。


しかし、この場所に人間と魔族が共に暮らす街ができる。


子供たちが種族の垣根を越えて友達になり、大人たちが協力して働き、老人たちが昔話を語り合う。そんな平和な光景が、田中くんの心に浮かんだ。


「大変な道のりになりそうですね」


田中くんが呟いた。


「でも」


私が微笑みながら続ける。


「みんなで力を合わせれば、きっと素晴らしい街ができるわ」


風がまた吹いた。それは新しい時代の始まりを告げる風のようだった。


「よし」


田中くんが拳を握った。


「やってやろう。人間と魔族が本当に理解し合える、そんな街を作ろう」


何もない平原に響く田中くんの声は、希望に満ちていた。そして空の彼方から、まるでそれに応えるように、温かい日差しが差し込んできた。


新しい物語の始まりだった。

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