45話:降参と和平への道
ヴェサリウスの門前での戦いは、私たちの想像をはるかに超える規模になっていた。
都市からの兵士だけでなく、噂を聞きつけたのか、他の街からも続々と冒険者たちが集まってきて、私たちを幾重にも取り囲んでいた。
「神の敵め!ここで討ち取ってやる!」
彼らの叫び声は、まるで呪文のように私たちに降り注ぐ。
弓矢が雨のように降り注ぎ、魔法の光が空を彩る。
要塞都市ヴェサリウスからは、大砲の轟音が響き渡り、巨大な鉄の弾が飛来する。
「麗華先生!」
私が叫ぶと、先生は巨大なライトシールドを構えた。
それは以前よりもはるかに大きく、まるで城壁そのもののように私たちを覆い尽くす。
大砲の弾も、無数の弓矢も、強力な魔法も、全てがその光の盾に吸い込まれるように消えていく。
「すごい…!」
由希子ちゃんが感嘆の声を漏らす。先生のライトシールドは、どんな攻撃も完全に無力化していた。
その間にも、私たちは次々と襲いかかる冒険者たちを無力化していく。
田中くんの風斬波は、まるで台風のように広範囲の敵を吹き飛ばし、圧倒的な剣技で強力な冒険者を一撃で戦闘不能にした。
お姉ちゃんのインフェルノは、地面を焼き焦がすほどの炎の渦を作り出し、敵を足止めする。
私の縫合突は、敵の隙間を縫うように動き、確実に急所を突いていく。
由希子ちゃんのグローとクイックは、敵の動きを遅らせ、私たちの動きを加速させ、戦場を完全に支配していた。
私たちは誰一人として殺すことなく、ただひたすらに彼らを無力化し、その場に積み上げていった。その光景は、もはや戦いというより、一方的な制圧だった。
どれほどの時間が経っただろうか。冒険者たちの攻撃が途絶え、兵士たちの士気も完全に砕け散ったその時、都市の門がゆっくりと開いた。
そこに現れたのは、白髪交じりの短髪に、戦いの疲れを色濃く浮かべた顔をした、冒険者ギルドのギルドマスターだった。彼は私たちを見るなり、その場で膝をつき、深々と頭を下げた。
「参りました……これ以上は、無益な殺生です。どうか、お許しください」
ギルドマスターの言葉に、城壁の上の王も顔色を変えた。ギルドマスターは王に向かって何かを必死に訴えている。やがて、王は苦渋の表情で頷いた。
「……わかった。魔族との和平交渉を行うことを約束しよう」
王の言葉が響き渡る。私たちは、ついに目的を達成したのだ。
私たちはギルドマスターに、捕らえた冒険者たちの管理を任せ、魔族領へと引き返した。
魔王城に戻ると、アルカディウス様と四天王たちが私たちを温かく迎えてくれた。
「勇者よ、よくぞ戻った。そして、よくやってくれた」
田中くんが王との和平交渉の約束を報告すると、魔王様は深く頷き、その目に安堵の色を浮かべた。四天王たちも、心底嬉しそうな顔をしている。
「これで、魔族も幸せになれるね」
由希子ちゃんがそっと呟いた。
「うん。でも、まだこれからだよ」
田中くんはそう言って、空を見上げた。
セレスティスが私たちを騙し、人間と魔族を争わせていた真実。
その真実を人間に伝え、和平を実現させる。
それは簡単な道ではないだろう。
しかし、私たちにはもう迷いはない。
私たちは、自分たちの力を、大切な人々を守るために使う。
人間も魔族も関係なく、誰もが安心して暮らせる世界を作るために。
これは、私たち勇者パーティーの、本当の始まりなのだ




