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(完結)『隣の席の田中くんが異世界最強勇者だった件』  作者: 雲と空
第四章:暴かれた真実と、本当の敵

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39話:魔族の村を襲う襲撃者、そして決意

一夜明けて、集落の長老が私たちと話をしてくれることになった。


「我々は平和を愛する民族です。人間との争いなど、望んでおりません」


長老は静かに語り始めた。


「しかし、最近は冒険者たちが魔族領の奥深くまで侵入してきて、我々が森で採取活動をしているところを見つけたり、結界のわずかな綻びを見つけ出して、強引に侵入してきたりするのです」


長老は悲しそうに続けた。


「どうやら、彼らの中には結界の綻びを見つけ出すことに長けた者がいるようでして……。魔王様の城の在り処を聞き出そうと、我々に暴力を振るうのです」


その時、突然警鐘が鳴り響いた。


「また冒険者です! 今度は大勢で来ています!」


見張りの魔族が叫んだ。


森の向こうから、先ほどとは別の武装した冒険者のパーティが現れる。


今度は十人以上の大規模な部隊だ。



「魔族の集落を発見! 殲滅せよ!」


リーダーらしき戦士が叫ぶと、冒険者たちは問答無用で攻撃を開始した。


炎の魔法が集落の家屋を襲い、矢が雨のように降り注ぐ。


「逃げて!」


魔族の大人たちが子供たちを守ろうとするが、冒険者たちの攻撃は容赦ない。


「魔族は皆殺しだ! 魔王の手下に情けは無用!」


田中くんは、王から受けた「魔王討伐」という使命と、目の前で無抵抗な人々が虐殺されそうになっている現実との間で、激しく葛藤しているようだった。


「どうするの、田中くん……?」


私が不安な声で尋ねると、田中くんは苦しそうに顔を歪めた。


その時、一人の冒険者がリオくんに剣を向けた。


「待って!」


私は思わず叫び、素早く間に入って剣を弾き飛ばした。


リオを抱えながら田中くんに近づき、囁く。


「一度、魔王様と話してみては? もしかしたら、人間と魔族は分かり合えるかもしれない」


私の言葉に、田中くんはハッとしたように顔を上げた。


「花……」


彼は深く息を吸い込んだ。


「俺は勇者だ。だが……目の前で何の罪もない人々が虐殺されるのを、黙って見過ごすことはできない!」


田中くんの目が、怒りに燃えている。


「俺たちが守る! お前たち、絶対に手出しはさせない!」


田中くんが飛び出して、冒険者の剣を弾き飛ばした。



「何をする! お前も人間だろう! なぜ魔族の肩を持つ!」


「子供に剣を向けるなんて許せない! それに、この人たちは何も悪いことをしていない!」


「馬鹿を言うな! 魔族は存在自体が悪なのだ!」


冒険者は田中くんに斬りかかってきた。


しかし、田中くんの実力は段違いだった。


黒刃の剣が美しい軌跡を描き、冒険者たちを次々と制圧していく。


「お姉ちゃん、由希子ちゃん!」


私の呼びかけに、茜お姉ちゃんの炎剣と由希子ちゃんの回復魔法が戦場を駆け回る。


私たちは魔族の人々を守るために、心を一つにして戦った。


圧倒的な力の差に、冒険者たちは最終的に撤退していった。


「覚えておけ! 魔族に味方する奴らも、魔族と同じ敵だ!」


戦いが終わった後、集落の魔族たちの私たちを見る目は完全に変わっていた。


私たちは一夜、この村で過ごすことになった。


次の日、村を去ろうとしている私たちに、長老が挨拶にやってきた。


「あなた方は……本当に、違う」


長老が震える声で言った。


リオくんが私の手を握った。


「お姉ちゃんたち、ありがとう。でも気をつけて。人間の国では、魔族を助けた人も悪者にされちゃうから」


「長老、この村の守りは大丈夫なのですか?」


由希子ちゃんが心配そうに尋ねた。


長老は、集落の奥にある巨大な石像を指差した。


「ご心配なく。昨夜の襲撃を受け、魔王様がこの村の守りを強化する必要があると判断されたのでしょう。今朝方、このガーゴイルの石像を使わしてくださいました。敵意を持つ者が村に近づけば、自動的に起動します」


「あれが……」


田中くんが驚いたように見つめる。


その石像は、確かにかすかな魔力を帯びていた。


「魔石を補充することで動きます。幸い、この森には魔石を持つ魔物が数多く生息していますので、定期的に採取して動かすことができます」


長老の説明に、私たちは安堵した。


魔王が、こんな形で魔族の村を守っていたとは。


「私たち、間違ってたかもしれない」


由希子ちゃんがつぶやいた。


田中くんは言った。


「俺たちは本当の真実を知る必要がある。魔王に直接会って、話を聞こう」


私はうなずいた。


本当の敵は一体誰なのだろう?


私たちはその答えを探すため、魔王に会うべく、森の奥へと向かった。


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