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(完結)『隣の席の田中くんが異世界最強勇者だった件』  作者: 雲と空
第三章:広がる秘密の輪

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21話:窮地の茜と、届いた助け


翌朝、宿屋のベッドで目覚めると、あたしは胸に希望を感じていた。

異世界転移のスキルを手に入れたことで、これでいつでも元の世界に戻れる。

花が無事なのか、確認することもできる。


しかし、その前に、もうひとつだけやっておきたいことがあった。

昨日のロックバイソンの討伐でレベル10になったことで、あたしはさらなる自信をつけていた。


「今日の依頼はこれだな!」


あたしがギルドの掲示板で見つけたのは、『オーク集落の壊滅』という、近隣の村からの緊急依頼だった。


オークは以前にも倒したことがある。


今のあたしならきっと大丈夫。

剣術も能力も格段に上がった。


「この依頼、あたし一人で受けたいんですけど」


受付嬢が「えっ、一人でですか!?オークの集落は数が多く、非常に危険です!複数パーティでの共同討伐を強く推奨します!」と心配そうに言ったけれど、あたしは聞く耳を持たなかった。


「大丈夫です!あたし、結構強くなったんで!」


無理に押し切り、依頼書を受け取った。

経験値と報酬、そして何より、困っている村を助けることがあたしのモチベーションだった。


オークの集落は、森の奥深く、鬱蒼とした木々に囲まれた場所にひっそりと存在していた。


周囲には簡易的な柵が巡らされ、中からはけたたましいオークの声が聞こえてくる。


あたしは剣を構え、意を決して集落へと足を踏み入れた。


「さあ、かかってこい!」

入口にいたオークを一閃で屠り、奥へと進む。


しかし、甘かった。集落の中には想像以上に多くのオークがいたのだ。

「グォオオオ!」

四方八方からオークが押し寄せてくる。


一体一体は怖くない。


だけど、数が多すぎる。多勢に無勢だ。

肉体強化で攻撃を受け止め、剣術で切り裂いていくが、次から次へと現れるオークの波に、次第に追い詰められていく。


「くそっ、キリがねぇな!」


その時、足元から鋭い痛みが走った。


見れば、オークが放った弓矢が左足に深く突き刺さっている。

「ぐっ……!?」


体勢を崩したあたしに、オークたちが一斉に飛びかかってきた。

あたしは抵抗虚しく、その巨体に押し倒され、組み伏せられてしまう。


「っ離せ!このっ……!」


地面に押さえつけられ、剣を取り上げられる。

数匹のオークがこちらを見下ろし、いやらしい笑みを浮かべていた。


「グギャギャ!」


受付嬢が言っていたことを思い出す。

オークは、人間を捕らえ、慰み者にする習性がある、と。


背筋に冷たいものが走った。

まさか、こんな形で……。

オークの手が、あたしの身体に伸びてくる。

足が震える。

絶望が、全身を支配した。


その時、集落の外から、けたたましい争う物音が聞こえてきた。

「グォオオオオ!」

オークたちの悲鳴と、それに混じる金属のぶつかる音。

そして、人間らしき声。

集落の入口から、屈強な冒険者たちが次々とオークをなぎ倒しながら、怒涛の勢いで雪崩れ込んできたのだ。


彼らは経験豊富なベテラン冒険者のパーティらしかった。

手際よくオークを仕留め、まるで嵐のように集落を掃討していく。


オークたちが次々と倒されていく中、あたしを押さえつけていたオークも、あっという間にベテラン冒険者の一撃で吹き飛ばされた。


「大丈夫か、嬢ちゃん!」


屈強な戦士が手を差し伸べてくれる。


あたしは震える手でその手を取り、立ち上がった。

「あ、ありがとうございます……!」


「無事でよかった。まったく、こんな場所に一人で乗り込むなんて、無茶をするもんじゃないぜ」

リーダーらしき男が呆れたように言った。


あたしは顔を伏せた。


そうだ。あたしは一人で来ると言って、受付嬢の忠告を無視したんだ。


受付嬢は、あたしが心配で、他の冒険者パーティにも追加で依頼を受けてもらっていたらしい。

幸いにも依頼自体が複数パーティを想定したものだったため、問題はなかったという。


「あの、今回の報酬、あたしはいりません。助けていただいて、本当に……感謝しています」


あたしは心から頭を下げた。


自分の過信が招いた結果だ。

一人でできることには限界がある。


この異世界で、初めて、あたしは自分の未熟さと、一人で冒険することの危険さを痛感した。


お礼を言い、足の傷を応急処置してもらった後、あたしは人気の少ない場所へと移動した。


私は花が元の世界に戻っているかもしれない、と思い帰ることにした。


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